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野球 コラム 2021年5月17日

【中日好き】勝野昌慶、ヒントは常に身近にある

野球好きコラム by 森 貴俊
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勝野昌慶(写真:球団提供)

今シーズンの開幕前、勝野昌慶は大きな問題を抱えていた。

「球威が戻らない」。

勝野の持ち味は150を超えるストレート。それが軸となり、落差の大きなフォークが生きてくる。開幕ローテは掴んだものの、勝野はもがいていた。

「腕がスムースに振れない。原因がわからなかったんです」。

浅尾2軍投手コーチから「下半身の潰れ」を指摘された。足を上げる際、少し後傾になっていたため、力が上体に伝わっていなかった。球威は若干の改善は見られたが、勝野の中にはまだ違和感が残っていた。

感覚が戻るきっかけは不意に訪れた。

4月、大島洋平が打撃不振に苦しむ平田良介にアドバイスをしていた。勝野は何気なくその会話に耳をそばだてた。

「大島さんが平田さんに骨盤の意識の話をしていたんです。最初は盗み聞きでしたけど。聞いていると、あれ?大島さんが言っている事は、僕の考えと逆だな思いました」。

大島は骨盤の前傾を話していた。結果、平田はバットが身体の後ろに隠れ、出てこない。勝野も同じだった。体重移動後、上半身に右腕が隠れ出てこない。腕がなぜ前に出ないのか、勝野自身その違和感は感じていた。

「あ、これかも!と思いました。そこから大島さんに詳しく話を聞いて、セットに入った姿勢を見直しました。さっそく練習で実戦したらスムースに腕が出てくる。腕がパーンと振れるような感じになったんです。腕ばかりを意識していたんですが、骨盤への意識でかなり変わりました」と話す。

振れない腕を懸命に振ろうとしても振れる状態でなければダメだ。骨盤の位置を意識することで勝野のフォームは腕を振る状態に変化した。現在、勝野のストレートは球威を取り戻しつつある。

フォークの使い方も広がった

ストレートに苦しんだ分、副産物も得た。フォークの使い方が大幅に広がった。決め球とカウント球、2種類のフォークを使い分ける。さらにそれを左右のコーナーへ投げ分ける。

勝野は「去年まではこんな使い方はしていませんでした。ベース盤の上で振らせるフォークでした。阿波野投手コーチからの提案もあり、キャッチャーと話をして、新しい使い方をしています。投球の幅は広がりましたね」と話す。ストレートで押し切れない分、新しい幅を取得し進化した。

5月17日現在で3勝をマーク(写真:球団提供)

昨シーズンの勝野は14試合に登板、4勝をマーク。今シーズン(5月17日現在)は7試合に登板。3勝3敗、防御率3.68、QSは2回。勝ち星だけを見れば、今年の3勝は確実に進化をしている。

投球の安定感、好不調の波、相手の相性、スタミナ、まだ多くの課題を残しているが、同時にオープン戦からの起用を見ているとチームとして、勝野をなんとかローテーション投手に育て上げようという意思を感じる。

1人、殻に閉じこもり悩んでいても道は開けない。もし大島と平田の会話に興味を示さなければ、もしその会話を盗み聞きしなければ、もし野手と投手は違うと決めつけていたら…。今、勝野は2軍だったかもしれない。

ヒントは常に身近にある。それをキャッチしていく事もプロで生きている立派な能力だと思う。

文:森貴俊(東海ラジオ)

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森 貴俊

1976年愛知県出身。東海ラジオ放送スポーツアナウンサー。ドラゴンズ戦中心のガッツナイターをはじめJリーグ、マラソン等スポーツ実況を担当。原点回帰を胸に、再び強き竜の到来を熱望する43歳。日々体力の衰えを感じるがドラゴンズへの喜怒哀楽は衰え知らず。今年もマイクの前で本気で泣いて怒って笑います!

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