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◆上原浩治の背番号「19」をつけてレッドソックスへ
―― ロッテでFAを取得して、メジャーでの契約までの時間が長かった印象がありますが、その間の気持ちは?
長期戦になるのは、正直言われていましたが、いざそうなってみると「まだかな」という気持ちは確かにありました。ただ、1日1日、自分のやるべきことにフォーカスして、しっかりやっていたと思います。
―― 実際、何球団くらいが興味を示してくれてましたか?
どうでしょう。2~3球団ではなかったとは思います。
オンラインで行ったインタビュー
―― レッドソックスを選んだのは、自分の中でも特別な球団の1つだったからですか?
まさかメジャーの中でもファンが熱狂的で、これだけ素晴らしい有名な球団から来るとは思ってなかった。上原さんという存在が、僕のことをものすごく後押ししてくれたというのもあるし、ジョンボックス代理人と何回もミーティングしながら、ボストンが僕のことをものすごく必要としてくれたという点では、ここで勝負して腕を振りたいなという気持ちが、決める時には一番強かったです。
―― いつぐらいからメジャーでやりたいという思いがあったのですか?
行きたいという漠然とした夢は、プロに入ってからずっと持っていましたが、なかなか、途中上手くいかなかった時期もあります。ロッテに行って、FA権を取る前ぐらいから、もしかしたらチャンスがあるんじゃないか、という意識はしていました。
―― 背番号19番は自分の意思ですか?
リクエストしていました。(昨季までつけていたジャッキー・ブラッドリー Jr.が)FAで出ていくというのは、日本よりアメリカの方が多いし、移籍は当たり前のこと。ジャッキー・ブラッドリー Jr.に対してはお会いしたことはないけれど、リスペクトはありますし、彼が残ったら19番は彼だったというだけだと思います。
―― 日本人からすると、レッドソックスの19番は上原浩治さんの番号を受け継ぐ形ですが、上原さんの影響は大きいですか?
2015年くらいから、抑えやリリーフをやったりしていましたが、2013年の上原さんの登場曲を真似していたこともあって、そういった意味では同じチームで、同じ背番号になったことには何かの縁を感じています。
―― 上原さんからもらったアドバイスやメッセージはありますか?
上原さんもそうですし、最近だと岩隈(久志)さんとか、メジャーを経験している人から、「こういうコロナ禍で市場が遅くても、複数年の契約をもらえるのは、チームが僕のことをものすごく求めてくれているからだよ」というアドバイスをもらえたので、ありがたいなと思います。
―― 前田健太投手や秋山翔吾選手など、同世代の選手とは情報交換をしていますか?
まだ、契約が決まる昨年の12月には、マエケンと会ったり、秋山と会ったりして、いろんな話をしました。ツインズのキャンプ地が同じポートマイヤーズなので、外出禁止とかがなければ、健太のところに行っていろんな話を聞きたいですが、コロナにかかってしまうとチームに迷惑がかかってしまうので、なかなか話を聞きに行けない状況です。
◆コロナ禍、初経験のスプリングトレーニング
―― コロナ禍のスプリングトレーニングでは、いろんな制約があると思います。
2日に1回、PCR検査があるというのも、メジャーの対応力の凄さだと思っています。日本ではそんなに頻繁にやることがなかったので、こんなに頻繁にやっていれば、コロナになる心配はないと思っています。
―― メジャーは短い練習時間の中でメニューをこなしていくスタイルですが、もっとワークアウトしたい気はありませんか?
めちゃめちゃ自分には合っていると思います。全体練習は長くても1時間あるかないか。ブルペンで投げればそれなりに時間はかかりますが、9時にアップが始まる場合は、朝早く行って、ウェイトトレーニングを先にやって、全体練習を済ませたらマッサージして帰るとか、効率がいい。
練習を長々とやらず、オンとオフのメリハリが自分の中で区別出来ているので、日本よりはこっちの方が楽だし効率がいいし、自分のためにもなると思っています。
―― コロナ禍のため、親睦会やチャリティーなど、練習後の楽しみは一切できない状況ですね。
買い物に行って食材を買ったりはしますが、外でご飯を食べることは一切ないですし、全部テイクアウトで持ち帰って家で過ごしています。退屈なので、海外ドラマ見たり(笑)。さっきまで『MLB.com』でダルビッシュさんが投げていたので、その映像を見たりしていました。
いよいよ開幕に挑む
―― 実際、アメリカの気候の中で、ボールやマウンドのアジャストはスムーズに移行できそうですか?
マウンドの堅さに対しては、もともと硬いマウンドが好きなので、問題はないです。踏み込んで投げにかかる部分では、ハムストリングが張ったりとか、日本ではない経験をしています。
ボールに関しては、日本のボールを10年近く投げていたので、ちょっと大きくて重い感じがします。それで時折抜けたりする。フロリダの気候的には、すべるという感じはあまりなくて、どちらかというと若干引っかけるかなという感じです。
―― 今、フロリダでアジャストしても、ボストンでは気候が変わるのでボールの感覚が変わってくるなど、同世代からそんな話は聞いていますか?
ボストンは寒いよと言われています。
―― 現時点のレッドソックスはクローザーが決まっていませんが、クローザーは視野には入っていますか?
全く入っていないです。今のところはないですね。投げ始めて、求められたところが、そういう1点ゲームとか、2点ゲームとかだったら緊張もするだろうけど、それ以上に興奮して、こういう展開で使ってくれたということで、期待にこたえなくちゃいけないという気持ちが芽生えると思います。これから実戦をこなしていって、いい形で開幕を迎えることが出来たらと思っています。
―― トレーニングやデータ解析班の上がってくるデータなどは日米で違いがありますか?
トレーニングは、もともと日本でも僕みたいに重量を200~250kgもやる人が周りにいなかったので、それはこっちに来ても、いないという感じはします。ただ、体幹だったり、軸を作るトレーニングだったり、こちらにきて初めてこういうトレーニングあるんだなという新しい発見もあります。
あとトラックマンも、すぐその場で映像が見れて、どこでボールを放しているのかをその瞬間に見れる。確認して、またブルペンセッションができるので、そこは日本よりも知識とか機材は優れていると感じています。
―― ボールが強く、スプリットもある。細かいところよりも力での勝負をするイメージですが、力対力の純粋な勝負は楽しみですか?
楽しみな部分もありますが、力だけでなく、かわせるようになりたいと思います。そういう風な配球を作れば、「こういう風に来るんだ。データと違うな」と考えさせるだけでもこっちの勝ちなので、同じ真っすぐ投げるだけでも違うと思います。
◆日本人選手が馴染みやすいレッドソックスの環境
―― レッドソックスには、日本時代から知っている選手もいると思いますが、すでに打ち解けた選手はいますか?
初日に右も左も分からず通訳と2人でいた際、僕から見ればスーパースターのクリス・セールが目の前にいて挨拶してくれたり、ネイサン・イオバルディとかが、まだ合流する前から凄く親切にメールくれたりとか。
―― なぜ、合流前から澤村さんのメールを知っているのですか?
チームのアプリとかがあるので、そのアプリを通してメッセージをくれて「もう家族だから心配いらないよ」と、今も毎日親切にいろんなことを教えてくれます。
―― レッドソックスは、今でも日本人スタッフが非常に多い環境である点は心強いですか?
ありがたいですね。マッサージからトレーニングコーチから、アスレチックトレーナーから、ワールドチャンピオンを経験していて、松坂さんの代から知っているスタッフがいてくれるのはもの凄くありがたいですし、心強いです。
―― 元広島のライアン・ブレイシアとコミュニケーションは取っていますか?
はい、ブレイシアもいますし、マット・カラシティ(元ヤクルト)もいます。「神宮、神宮。神宮で青山住んでいたよ」とか、そういう話をしてきます(笑)。ドミニカ出身の選手は、日本語ペラペラじゃないですけれど「おはようございます」とかみんな言ってくれたりとか。
―― レッドソックス時代の上原さんの話など、昔の日本人選手の話はしますか?
上原さんの話を選手間でしたことはないです。
―― 俺のスプリットは浩治から教わったと言えば、皆「おおーっ」というのでは?
2回目のブルペンの時は、キャッチャーにスプリットを褒められました。
◆チームの戦力になってポストシーズンへ出たい
―― アメリカでスプリットの手ごたえはありますか?
日本もアメリカも変わらないです。スプリットはベースから外れるとどうしても振らないので。僕みたいに真っすぐとスプリットの球速が、あまり変わらないという条件のもとでは、ベースは外してはいけないと思います。
真っすぐに関しても、低め低め、アウトローアウトローというよりは、もっともっと高めというか、「もっともっと高め高めを狙って、ストライクゾーンのギリギリの位置でいいから、もっと大胆でいいからね」という感じのことは、ピッチングコーチを通しても言われました。
―― ピンポイントでここと言われるよりも、ざっくりと「このへんでいいんだよ」とコーチに言われると心強いですね。
ありがたいですね。どうしても「フォアボールはダメ」とずっと言われ続けたので、出してはいけないと分かっていても、思考というか投げながらネガティブになってくる部分もありました。
こうしなくてはいけないと思うよりは、自分がこういうコントロールをした結果、ボールがそこだったというだけの話で、何事に対しても結果を気にするのはあまりよくなかったなと思っています。
―― 東地区ヤンキースのアーロン・ジャッジや、ジャンカルロ・スタントンなど、そういうバッターと早く対戦したいですか?
したいですね。
―― 真っ向勝負するイメージがありますか?
そこは点差によりますね。
―― 勝っている時の3点差だったら?
全然ホームランOKでいきます。多少ボールでも振ってくれるだろうと思っていくんじゃないかなと思います。
―余計な情報を入れずにマウンドに立って、自分の感覚でいく感じですか?
そっちの方が最初はいいと思っています。もちろん、アーロン・ジャッジとか、スタントンとか、DJ ルメイユとか、世界を代表する素晴らしいバッターは知っていますが、あまりデータを知りすぎると、ここに投げなきゃいけないと身構えると思うので、シンプルに高低を使って振らしにかかりたいと思っています。
―― こういうルーキーイヤーを送りたいということはありますか?
やっぱり、プレーオフは行きたいですね。あっ、ポストシーズンですね。巨人の後藤孝志コーチ(ヤンキース傘下のマイナーにコーチ留学経験)から「レギュラーシーズンは家族で見に来る。ポストシーズンになると野球を知っている人しか来ない」。
「ちょっとフォアボールを出したらブーイングされるけれど、熱狂的でみんな野球を知っている人たちが見ているから、雰囲気が全然変わるよ」とずっと言われていたので、そこはちょっと知りたいと思っています。
―― レッドソックスは苦しいシーズンになるのではと言われていますが、どのぐらいマウンドに立ちたいですか?
初めてのことなので大きいことは言えないですが、5~60試合は投げていきたい。2013年のワールドチャンピオンになった時も、キャンプの時は「このチームで勝てるの?」という感じの雰囲気だったみたいです。
ただ、「戦力的にも劣っていたかもしれないけど、凄く雰囲気が良かったから、あれよあれよという間にワールドチャンピオンになったんだよ」と日本人のスタッフの方がよくいっています。今年に関しても、「ものすごく雰囲気がいい」とずっと言っているので、どれだけチームの戦力になるか分からないですが、思い切りやりたいと思っています。
―― 最後に、日本のメジャーファンへのメッセージをお願いします。
今年からボストンレッドソックスに入りました。世界最高峰のリーグなので、壁にぶち当たることが多々あるかもしれませんが、その壁にぶち当たったら、立ち止まって考えて、しっかり打破してチームに貢献できるように頑張りたいと思いますので、応援よろしくお願いします。
J SPORTS 編集部
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