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埼玉西武ライオンズから海外FA権を行使して、MLBのシンシナティ・レッズに移籍した秋山翔吾選手。シーズン最多安打の記録を持つ日本有数の安打製造機が海を渡る。
渡米前の2月某日、J SPORTSでは渡米直前の秋山選手にロングインタビューを実施。第1回はMLBへの移籍について語ってもらった。インタビュアーは野球中継の実況でお馴染み、谷口廣明さんです。
取材:J SPORTS/写真:山本恵太
◆MLBを意識したのは2017年WBCのアメリカ戦
―― アメリカに出発する直前となりましたが、心境はいかがですか?
秋山:うーん、不安の方が多いですね。分からないところに行くという怖さが一番。怖さというか…、八戸から所沢に来る時だって、どれほど西武新宿駅の雰囲気に飲まれたことか(笑)。神奈川に住んでいたとはいえ、新宿のビルには面食らったし、こういうところが生活のベースになるということがあったし。
慣れる、慣れる、と言いますけれど、慣れが遅ければ遅いほど、野球も生活もやっぱり心を休められるところがないので、そういう意味では、それにどれだけ自分が順応できるかという楽しみはありますけれど、分からないことへの不安はありますね。
―― MLBでプレーする決断はいつぐらいから湧いてきましたか?
メジャーでやりたいと思ったのは、2018年のオフくらいからだったと思います。ただ、振り返ると2017年のWBCの時、アメリカ戦のことは試合内容というよりは、個人としてあの3打席があったから、そういう気持ちを持てたのかもしれないと思います。
―― あの3打席はいいイメージですか?それともまだこれから出来るんじゃないかというワクワク感でしたか?
中味としては勝たなくてはいけない試合だったので、3打席ノーヒットだったので、よくはなかったですよね。
ただ、自分がチャレンジしたいとか、初見のピッチャーに対してアウトにはなったのですが、アジャスト出来た打席が2打席くらいあって、もう1打席は完璧に海外勢特有のボールにカウント優位から打たされたというのがあったので、こういうのを詰める作業とか、研究して立つ打席って楽しいというのはありました。
日本でもシーズン中にいいピッチャー、初めて対戦するピッチャーに対して、そういう興味もありましたが、衝撃度合いとしてはWBCが大きかったと思います。
◆MLBで自分がどの立ち位置にいるのかを知りたかった
―― 日本でのキャリアがある中で、この決断は大きかったと思いますが?
それはもう、単純に自分の生活環境、住む国を変えてまで、野球を追うべきかどうかというのはもちろん悩みました。
―― 日本でもまだやりたいことはあったのですか?日本でもある程度やれた、よし、次に挑戦しよう、どちらですか?
僕の中でも2000本打って現役を終えたいというのはあるんですよね。素晴らしい先人に追いつくために、名球会という肩書が欲しいという自分もいるし。それが日本での2000本しか認めないという形だったら、もしかしたら残っていたかもしれない。
ただ、オールスター、侍ジャパンに選んでもらえて、さらにその中からメジャーに行ける人間は、どんどんピラミッドとしては小さくなっていくじゃないですか。
この前のプレミア12の時、ケガで僕は出られませんでしたが、辞退した選手も含めて、選ばれたのは大体30~40人ぐらい。その中で全員がメジャー挑戦できますかといわれたら、そういうわけじゃないと思うし。
今の日本での立ち位置は、ある程度分かるところまできて、じゃあ、メジャーに行って、自分の日本でやってきた数字だったり、経験だったりは、メジャーリーグでどの位置にいるのかというのを知って現役を終わらないと、行けるのに行かなかったというのは後悔すると思った。
取り手がなかったら、最初から秋山のレベルは、メジャーがお金を払ってまで欲しい選手ではないという判断ですよね。それはそれで、自分の立ち位置が分かるわけですよ。
国内でこのまま突き詰めて一番になりましょうとか、そういうのもあるのですが、行けるチャンスがあったので、やってみたい、立ち位置を知りたいというのがありました。
◆レッズを選んだ理由は一番イメージできたから
―― メジャー30球団ある中でレッズを選んだ理由は?
ウィンターミーティングにも行きましたし、何球団かお話しをいただいた。球団からプレゼンされることもあったし、逆に僕のことを知ってもらうという意味ではアピールしたこともありました。日本のFAの場合は球団からのプレゼンが多くて、8:2、9:1くらいじゃないですか。レッズはどちらかというと、僕に対しては日本のスタイルに近かったかもしれないです。
初めての日本人ということで、すごく丁寧にそういうスタンスを取ってくれたかもしれないし、日本人以外だったら違ったかもしれない。他の球団はレッズに近い話の仕方をしてくれた球団もあれば、秋山のこと知りたいんだというスタンスで、質問攻めという球団もありました。
その中で甲乙、メリット・デメリット、そして家族も連れていくことを考える中で、あと自分が野球をやっていく上で、お金が良くても出番がありませんとなると、僕は何しにいくんだろうと思うから…。
まずはそういうことをふるいにかけながら考えた結果、レッズが一番アメリカに挑戦する上で、イメージが出来たというか、ここで自分がやるというのを強く思った球団だったという感じです。
―― それまでのレッズのイメージは?
日本人選手が30球団中、29球団行ったわけで、誰かしらがユニホーム着ているイメージは湧くじゃないですか。それが湧かなかったのはレッズです。だから、スッと入ってきたところもあれば、もちろん不安もありましたね。
―― 名門球団に入る重みは感じますか?
振り返った時に、そういう中にいたんだなと思うかもしれない。これは歴史がある球団でも、新興球団であったとしても、メジャーに所属しているチームであれば、どれくらい自分が結果を出せるんだろうとか、どれくらい必要とされるだろうというドキドキは変わらなかったんじゃないかと思います。
これは終わってみて、レッズから離れる時とか、自分のキャリアが終わる時に、これだけ歴史のあるチームにいたんだと思うのかなと。いるんだなというのは行ってから実感するかもしれないですけれど、まだそこまで知り切ってないですね。
取材:J SPORTS/写真:山本恵太
秋山翔吾(あきやま しょうご)プロフィール
右投左打の外野手。1988年4月16日生まれ。神奈川県横須賀市出身、横浜創学館高校から八戸大学へ進み、2010年のドラフト3位で埼玉西武ライオンズに入団。2011年には新人で開幕スタメンを飾る。2013年には全試合先発出場を果たし、打率.270、13本塁打、58打点をマーク。
2015年には216安打でシーズン最多安打の日本記録を更新し、第1回「WBSCプレミア12」の日本代表に選ばれた。2020年にはシンシナティ・レッズと3年総額2100万ドルで契約。日本での通算成績は打率.301、116本塁打、513打点。首位打者1回、最多安打4回、ベストナイン4回、ゴールデングラブ賞を6回受賞している。
J SPORTS 編集部
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