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◆狙いを定める浅村
1つ1つ、ていねいに実戦を想定した練習に重きを置いている久米島キャンプ。選手たちは、全体練習だけでなく個別練習でも、そうした意識を高く持って練習しているようだ。
打撃練習を見ていても、例えば岡島豪郎が「ノーアウト1塁」とつぶやいて、レフト方向へのバッティング練習をしていたり、浅村栄斗が構えるや否や、後ろから渡辺直人が「右方向!」と注文をつけていたり、全員がバントの練習に勤しんでいたり。
写真:盗塁術を教わったオコエ
ブルペンを覗けば、先発に転向した松井裕樹が「僕はもともとテンポが悪いので」と自身の課題に取り組み、テンポを上げて投球練習していたり、新加入のJ.T.シャギワが実戦さながらに変化球を織り交ぜて投げていたり。
それぞれが活気をみなぎらせながら、実戦仕様にシミュレーションして取り組んでいるのが伝わってくる。
さらに、三木肇監督が、特色として打ち出そうとしていることの1つが「機動力」。同監督の会得した技術は、球界では周知の事実らしく、3度盗塁王に輝いた西川遥輝(日本ハム)や、3度トリプルスリーを達成した山田哲人(ヤクルト)も薫陶を受けたという。
すでに秋季キャンプでその極意を授かったオコエ瑠偉は、「これは機密情報なんです。最初、教えてもらえるってなった時は、もう『やったあ!』って大喜びだったんです。
けれど、難易度も高くて、ぼくら選手でも説明されて頭では理解できても、実戦するのは本当に難しい代物なんです」と詳細は明かせないながらも、なんとか説明してくれた。
写真:第1クールを終えて表情も柔らかな三木監督
三木監督は第1クールの最終日も、第2クールから小深田大翔に盗塁を教えると明かしていた。ということは、その極意を伝授していくのだろう。
また、三木肇監督が繰り返しているのが「選手と相談しながら新しいことにチャレンジすること」。J SPORTSのインタビューでは、こんなことを話していた。
「野球は奥深くて楽しい、でも難しい。これまでいろんな先輩が伝統とセオリーをつくってきた。その中で、そこじゃないところにも、ヒントがあるのかなと思っている。
無謀なチャレンジになるかもしれないけれど、今までの常識っぽいことだけにとらわれずに、いろんなことにチャレンジしながらやりたい」。
キャンプ中は外野手の島内宏明がファーストの守備についたり、内野手の山崎剛が外野の守備を練習したりする場面も見られた。
これについても指揮官は、「可能性や考えてみてのこと。それに、1回チャレンジしてみることで、難しさがわかったり、打者としても気づくことがある。あまりやりすぎてもブレになるので、選手ともよく話しながら」と意図を語る。
まだセオリーを覆すというほどの変革は表層化していないし、若い野手には伝統的とも言える夜間練習も課しているという。
ともあれ「新しいことへのチャレンジ」も礎があってこそ。意図を浸透させるためのコミュニケーションにも手応えを隠さない指揮官。チームは、これからどんな「常識にとらわれない」野球を見せてくれるのか、ますます期待は膨らむ。
文/写真:松山ようこ
松山 ようこ
翻訳者/ライター/インタビュアー。主にスポーツやエンタメ分野にて実績多数。野球はプロ野球からMLB、他にもマイナースポーツからオリンピック大会まで、国内外の競技場や大会での現地取材を数多く経験するスポーツ好き。アスリートはじめ、一般人から著名人まで幅広くインタビューし、日本語と英語ともに記事やコラムにする。訳書『ピッチングニンジャの投手論』『ベイダータイム』。 ※『ピッチングニンジャの投手論 PitchingNinja's analysis of Japanese MLB Aces』 ※『VADER TIME ベイダータイム: 皇帝戦士の真実 』
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