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第68回全日本大学選手権で明治大学が38年ぶり6回目の優勝を飾った。最高殊勲選手賞と最優秀投手賞を森下暢仁主将(政経4=大分商)、首位打者賞を北本一樹内野手(文4=二松学舎大付)が、それぞれ受賞するなど圧倒的な戦いぶりを見せた今大会。その激闘を振り返る。
◆初戦の重圧をはねのけ7回コールド勝ち
シード枠であった明大は、2回戦の福井工業大学(北陸大学野球連盟)戦から登場した。初戦のマウンドを託されたのは、昨秋以来の先発となった伊勢大夢投手(営4=九州学院)。
「緊張もあった」ことが裏目に出たか、4回表に連打を浴び先制点を許してしまう。「自分のせいで負けるのか」(伊勢)。だが、弱気になりかけた4年生右腕を野手陣が救う。
まずは4回裏。今春リーグ戦で無安打ながらスタメンに抜擢された陶山勇軌外野手(商2=常総学院)の右前適時打などで同点に追いつく。さらに、5回の適時打、6回の3点本塁打と主砲・北本が大暴れを見せ一気に突き放した。
勝ち越したことで「やっと周りが見えた」と落ち着いた伊勢は結果的に6回2失点。「今の彼の力は出せた」(善波達也監督)と重圧のかかる舞台で、十分な働きを見せた。
後を受けた2番手・磯村峻平投手(文2=中京大中京)も危なげない投球で、試合終了。9-2と7回コールドで初戦を突破した。
写真:首位打者賞にも輝いた北本
◆投打の主役が本領を発揮、難敵・東洋大を下す
続く準々決勝は『戦国東都』王者・東洋大学と対戦。明大・森下、東洋大・村上頌樹という両リーグを代表する右腕の対決に、注目が集まった。
明大は初回、二死2塁の好機で北本が「落ち切らなかったフォークを打てた」と適時2塁打を放ち、幸先良く先制に成功する。
これで勢いに乗ったのか、3回に捕逸で1点、5回にはまたもや北本が適時2塁打を放ち3点リード。「(今大会の)ヤマ場」(北本)の試合を理想的なかたちで進めていく。
一方、森下は大学ナンバーワン右腕の名に恥じぬ圧巻の投球を披露した。150キロを超える直球に多彩な変化球を織り交ぜ、相手打線を翻弄する。
6回裏、連打から二死1・2塁のピンチを迎えるが「抑えれば流れを持ってこられる」とギアチェンジ。佐藤都志也(東洋大)とのプロ注目選手対決だったが、152キロの直球で三邪飛に打ち取った。
このまま森下は9回まで投げ切り、完封勝利。「(完封は)リーグ戦でなかなかできなかったので良かった」。森下、北本という投打の主役が本領を発揮し準決勝へと駒を進めた。
◆伊勢が完璧なロングリリーフで決勝進出
前日の雨が嘘のような快晴の中、行われた準決勝・東京農業大学北海道オホーツク戦(北海道学生野球連盟)。今大会初登板初先発となった竹田祐投手(政経2=履正社)は、初回から先制弾を浴びるなどリズムをつかめない。
攻撃陣も2回裏に敵失で同点としたが、後続が打ち取られる嫌な展開に。「流れを変えたかった」(善波監督)と指揮官が3回表から送り出したのが、2回戦で先発した伊勢だった。 今春は、フォームを安定させるため、球速を抑えていた。だがこの日は、悪い流れを変えるため「意識してスピードのある球を投げた」と自己最速の151キロを記録。この直球を中心に被安打はわずかに1本、8奪三振と最高の投球を見せる。 伊勢の快投に応えたい打線は8回裏。相手の暴投で勝ち越しに成功する。さらに二死2塁で迎えるは、喜多真吾内野手(法4=広陵)。 「勝負をかけるならここしかなかった」と振り抜いた打球はバックスクリーンへ。これが大きな追加点となり5-1で勝利。『粘りの明治』が発揮された一戦となった。
写真:最優秀選手に選ばれた森下
◆森下が完投勝利、ミラクル佛教大を封じ込める
迎えた決勝・佛教大学(京滋大学野球連盟)戦。1981年以来の歓喜の瞬間を目に焼き付けるべく、平日のスタンドに多くのファンが足を運んだ。
明大は初回、先頭の添田真海内野手(法4=作新学院)が死球で出塁。続く2番の丸山和郁外野手(商2=前橋育英)が犠打を決め、チャンスを演出する。
その後、二死1・2塁となり、打席には前日の準決勝・東洋大戦で特大の本塁打を放った喜多。だが、平行カウント2-2からの高めの直球に差し込まれ、三邪飛でスリーアウト。2回にも走者を3塁まで進めるが、相手の好守に阻まれ先制とはならなかった。
試合は3回に思わぬ形で動いた。先頭の9番・清水頌太内野手(政経4=春日部共栄)が死球で出塁すると、添田がライト線へ抜ける2塁打を放ち、無死1・2塁と再びチャンスを迎えた。
打席には3番の内山竣外野手(商4=静岡)。カウント1-1から放った打球は1塁手の正面に。しかし、本塁封殺を狙った1塁手の送球が暴投になり走者2人が生還。ラッキーな形で先制に成功する。さらに相手投手のボークで1点を追加した。
このまま明大ペースになるかと思われたが、4回表から登板した福森建(佛教大)に苦しめられ、中盤はこう着した展開に。佛教大は今大会の4試合中3試合で、3点差を逆転し決勝まで昇り詰めてきたチーム。
3-0から動かない試合に「ちょっとやばいかもしれない」(北本)。勝っているのに追い詰められているような嫌な雰囲気となっていた。
それでも背番号『10』を背負ったこの男は落ち着いていた。満を持して決勝のマウンドに立った森下は、この日も絶好調。4回以降は毎回走者を許すものの、後続を切り8回まで無失点と相手を封じ込める。
すると9回表、四球と安打でつくった二死満塁の好機で、喜多が3点適時2塁打を放ち勝負あり。森下も9回裏に1点こそ失ったものの、最後は直球で三振を奪い優勝投手に。駆け寄ってきたナインに抱きかかえられ、満面の笑みで日本一をかみしめた。
◆38年ぶりの優勝。目指すは4冠達成
森下は「何がなんでも自分が抑えなくてはいけない」と、強い決意でのマウンド裁きだった。エースの頑張りに、女房役の西野慎也捕手(政経4=浦和学院)も盗塁阻止やけん制で応えてみせた。
森下は「野手陣が流れをつくってくれた中で、最後までマウンドで投げ切りたいと思っていた」と、最後までマウンドを守り切った。9回を投げ105球、10奪三振と絶対的エースの貫録を見せつける投球。
最後の打者を打ち取ると、人差し指を高く掲げて『ナンバーワン』のポーズ。チームメイトに抱え上げられながら、満面の笑みで喜びを爆発させた。そんな森下に指揮官も「頼もしく映っています」と躍動を称えた。
明大の全日本大学野球選手権制覇は実に38年前までさかのぼる。現・阪神タイガース二軍監督の平田勝男氏(昭57法卒)が主将を務めたチームで、善波達也監督が1年次のことであった。
「我々も先輩たちの後に続きたい」。現役時代には達成とはならなかったが、監督としてチームを優勝へと導いた。「素晴らしい強いチームだった。そこに並べたのは本当にうれしい」と喜びを隠さなかった。
今年のスローガン『猪突猛進』にふさわしい戦いぶりでついに全国の頂点まで突き進んだイノシシ軍団。次なる目標は東京六大学リーグの春秋連覇、そして秋の神宮大会優勝だ。
大学野球史上5回しか達成されていない『4冠』へ。伝説のチームとなるべく新たな挑戦へと紫紺ナインは立ち向かう。
文:小野原琢真、丸山拓郎(明大スポーツ)
明大スポーツ新聞部
1953年(昭和28年)創部。現在明治大学において唯一の学生新聞部。明治大学体育会43部の競技成績や、学内外の話題を幅広く紙面・WEBサイト上にて掲載、発信。 現在の部員数は56名。
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