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野球 コラム 2019年5月11日

【中日好き】大野奨太、「僕は腐らない」

野球好きコラム by 森 貴俊
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野球好きコラム 中日好き

2009年ドラフト1位で日本ハムに入団。ルーキーイヤーから77試合に出場。そこからほぼ正捕手としてファイターズ投手陣を引っ張ってきた。

2017年オフ、FA権を行使して中日ドラゴンズに入団。もちろん、正捕手としての日々を誰もが予想した。そうなるはずだった…。

2019シーズン、与田監督のもと新たなスタートを切ったドラゴンズ、ここまでスタメンマスクが最も多いのは、加藤拓馬の24試合。

続いて松井雅人と大野奨太が5試合で並んでいる。大野奨太は出場16試合。スタメンの5試合を除くと、11試合が途中からマスクを被っている(5月10日試合終了時点)。

私は試合に途中から出場するのに、最も難しいポジションはキャッチャーだと思っている。試合の流れはもちろん、キャッチャーの配球は第1打席から時系列で布石を打って行くからだ。大野奨太はそこをどう考えているのか。

「途中からマスクを被るのは難しいですよ。配球の流れがありますからね。ベンチ内で、ずっと頭の中でリードしています」。

「人の配球をただ見ているだけでは頭に残らないから。自分も試合に出ているつもりでリードしています。そうしないと途中から出ても試合に入っていけないですよ」と話す。

そもそも、プロ入り前も含め、これほど試合の途中から出場した経験があるのだろうか。素朴な疑問をぶつけてみた。

大野奨太は「プロ入り後はないです。スタメンで出ながら時折途中出場はあってもここまでベンチスタートが続いているのは、ドラゴンズに来て初めてですね」。

「ほぼ試合にはスタメンで出る事が多かったんで。途中から試合に出る難しさはこの2年で痛感していますよ」と明かした。

さらに気になるのが大野奨太の心の部分だ。FAでドラゴンズに加入も、去年最もマスクを被ったのは松井雅人、今年は加藤拓馬と大野奨太は2番手以降に甘んじている。

「悔しいですよ。でも、全く下を向いていませんね。僕は野球に関しては絶対に腐りません」。

「すべてにおいて前を向けるわけではないです。でも野球に関しては絶対に腐らないと決めているんです。腐っても、不貞腐れても、下を向いても、何一ついい事はない。だから腐る意味がないです」と話した。

それを証明するかのような行動がある。大野奨太はベンチスタートが多い今、こまめにベンチ内でメモを書いている。

「他のキャッチャーの配球、投手の癖や考え方。気づいた事を書き留める。もちろん僕の考えと違う所が沢山あるので、試合後そういった疑問を投手とをすり合わせたりして。ベンチスタートでもできる事はあるんですよ」と教えてくれた。

大野奨太の今年の出場は試合を締める状況が多い。5月6日、ナゴヤドーム、ヤクルト戦。2-1、ドラゴンズ1点リードでマウンドには鈴木博志。リードを守り切れず同点に追いつかれ試合は延長戦に入った。

鈴木博志以上に、天を仰ぎ悔しさをあらわにしたのは大野奨太だった。

「博志と同様、僕もあの状況でマスクを被れば、勝ってベンチに戻るのが使命。どうすればよかったのか。正解はないです。だけど結果追いつかれたんで、僕が間違ったって事ですね」。

さらに続けた。「キャッチャーは孤独ですよ。正解のない配球と毎日向き合って。成功しても失敗してもそれを共有できる人がいないんです。唯一同じキャッチャーとは共有できますが、それこそが一番のライバルなんで。すべてを打ち明けるのも難しいです」。

大野奨太の置かれた現状、チームはどう考えているのか。単刀直入に伊東勤ヘッドコーチに聞いてみた。

伊東コーチは「奨太には申し訳ないが、彼がチームを勝たせるキャッチャーかどうかで答えるならば、まだその力はない。あるか無いかで答えるならばだけどね。うちのキャッチャーでは一番経験があるのは間違いない」。

「でも、物足りない事が沢山あるのも事実。僕の考えだけど、1試合キャッチャー1人で行けるならそれがベストだと思う。代打の兼ね合いとかがあるから現実そうはならないけどね」。

「だからって奨太が老け込む歳ではない。足らない部分は伸びしろです」と語った。足らない部分に触れなかったが、それは捕手出身、伊東ヘッドコーチの厳しいメッセージにも聞こえる。

ダルビッシュ有、大谷翔平。大野奨太は多くの一流に触れてきた。必ずその経験が生きる時は来る。配球、打撃、肩の強さ、試合の流れを読む力、打者の空気を感じる力、捕手の仕事は挙げればきりがない。大野奨太は総合力を持っている。

「僕は決して腐らない」。その力が必要とされる日まで。今は静かに爪を研ぐ。

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森 貴俊

1976年愛知県出身。東海ラジオ放送スポーツアナウンサー。ドラゴンズ戦中心のガッツナイターをはじめJリーグ、マラソン等スポーツ実況を担当。原点回帰を胸に、再び強き竜の到来を熱望する43歳。日々体力の衰えを感じるがドラゴンズへの喜怒哀楽は衰え知らず。今年もマイクの前で本気で泣いて怒って笑います!

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