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今季、悔しい最下位に終わった楽天イーグルス。誰もが必死にもがいたシーズンだけに、勝った時の喜びも格別だったように思う。
そんな忘れようもないシーズンで、最も印象に残った試合や場面とは? J SPORTSでは、「ファンが選ぶ! 2018 ベストゲーム」を再放送。ファン投票によって、選ばれたゲームをお届けする。
前回コラムでは、第2位についてお伝えした。今回は、同じく多くの選手、関係者が「印象に残った」とあげた第3位について。9月29日の日本ハム戦で、田中和基が延長10回にサヨナラヒットで試合を決めた一戦だ。
やはり、今季は田中を抜きにして語れない。楽天はホームで22勝50敗だったが、勝ち試合のうち実に3試合で田中がチームを勝利に導く”決定的な”活躍をみせたほか、新人王候補として名前があがるなど、存在感を放っている。
◆ブレイクの秘訣はノーステップ打法
昨季、田中は1軍で51試合に出場するも、主に代走か守備固めでしか出場機会が得られず、打数わずか54。6安打で打率.111だったが、今季はチーム事情からもチャンスを勝ち取って、1番レギュラーに定着。
105試合に出場し、423打数112安打の打率.265を記録したうえ、生え抜きでは球団史上最多となる18本塁打もマークするなど、打撃面で大ブレイクしている。
ただし、開幕から順風満帆だったわけではない。今季の田中は、開幕一軍の切符を手に入れるも、当初はまったく振るわず。わずか4試合で二軍落ちした。
それから再調整に励み、5月下旬に一軍に再昇格すると、大谷翔平を参考にしたというノーステップ打法で、打率をみるみるあげていったのだ。
6月には打率3割を超えたが、その時も本人に尋ねると、「まったく自信はありません」と苦笑いしていたのを思い出す。必死でアプローチを工夫しているだけなのだと。
田中は今季をこう振り返っている。「ノーステップにしても、逆に対応できないこともあった。それにどんなピッチャーでも、タイミングが合わないと打てない。タイミングを合わせるのはがんばりました」。
「去年は自分のスウィングにこだわったものの、それで打てなかった。今年は自分の形にこだわらなかったんです。キレイに振れることなんて少ないし、自分の思う形じゃなくてもヒットが出ることが多かった。それが結果になったのは良かったのかなと」。
たくさんの試合でイニング数ともに出られたことが一番の収穫と田中は言うが、同時にそのなかで結果を出し続ける難しさ、プレッシャーを経験して初めて痛感したという。
「一番、きつかったのはメンタルの維持でした。打順が1番ということは、チームで一番の攻撃なんです。そこで打てないと、『今日も打てないのかな』と弱気になることもあった。そこが一番、苦しかったです」。
◆田中の活躍を願った仲間の声
そんな田中の葛藤を知ってか知らずか、則本昂大もベストゲームとして、この田中のプロ初サヨナラヒットの場面をあげている。
4月6日にホームで史上5位の早さで1000奪三振を達成した則本は、自身のことは二の次とばかりに、このゲームをあげるとこう言った。「田中にはがんばってもらいたいから」。
「同級生として奮起した」と田中を称えるのは、森雄大。2012年にドラフト1位指名で入団した高卒6年目で、飛躍が待たれているサウスポー。
今季は、一軍でプロ最多の9試合に救援登板し、防御率2.37とこれまでの4点台5点台から大幅に改善。
「少しずつ良くなってはおります」と控えめに今季の自身を振り返りつつも、「和基、すごいなと思いながら、自分も頑張らなきゃいけないという気持ちになりました」と自身に喝を入れた。
今季のスピードスターとして奮闘した島井寛仁も、この試合が「一番印象に残っていますね」と選択。
「やっぱり、今シーズン自体、田中のイメージが強すぎました。だから、余計に印象に残っているのかもしれませんが、今季の彼の活躍ぶりは、本当にすごいと思います」。
ちなみに、田中本人は8月5日のロッテ戦でホームランを含む3安打を放った試合をあげている。最後のホームランが良かったのだと。
「第3打席、インコースまっすぐを見逃して三振したんです。それで第4打席も同じような球で仕留めようとしてきたのを、ホームランにしました。狙われたところを、ばーんと理想的に打てたので」。
体勢を崩されながらもヒットを重ねたという田中は、理想のバッティングを実現した一打を最高の場面に選んだ。そんな場面はまたいつ実現するかわからない。田中は、来季に向けての目標について聞かれるも、こう話していた。
「これからもメンタル、フィジカル、また一から積み重ねていきたいです」。来季はどんな活躍を見せてくれるだろうか。
◆ファンが選ぶ!東北楽天ゴールデンイーグルス 2018 ベストゲーム放送予定
・11月09日(金)午後06:00 楽天 vs. 埼玉西武(8月12日)J SPORTS 2
・11月10日(土)午後10:00 楽天 vs. 北海道日本ハム(9月29日)J SPORTS 2
松山 ようこ
翻訳者/ライター/インタビュアー。主にスポーツやエンタメ分野にて実績多数。野球はプロ野球からMLB、他にもマイナースポーツからオリンピック大会まで、国内外の競技場や大会での現地取材を数多く経験するスポーツ好き。アスリートはじめ、一般人から著名人まで幅広くインタビューし、日本語と英語ともに記事やコラムにする。訳書『ピッチングニンジャの投手論』『ベイダータイム』。 ※『ピッチングニンジャの投手論 PitchingNinja's analysis of Japanese MLB Aces』 ※『VADER TIME ベイダータイム: 皇帝戦士の真実 』
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