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野球 コラム 2018年5月12日

【オリックス好き】3・4月に味わった生みの苦しみを、収穫へと変えられるか

野球好きコラム by 藤原 彬
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国内プロ野球の猛牛軍団と、海の向こうの小熊軍団には共通点がある。それはオリックス・バファローズもシカゴ・カブスも「トップバッターを固定できず、打線を最大化できないまま波に乗り切れないでいる」ことだ。

昨年のバファローズは3・4月に月間チーム防御率2.90(リーグ2位)、1試合平均4.43得点(同3位)と攻守にバランスのよさが光り15勝8敗と大きく勝ち越した。

だが、今年は10勝15敗で投手陣が防御率3.67(同1位)と粘っても、3.42得点(5位)と打線の援護が十分ではなかった。

昨季からの課題だった先頭打者を固定し切れないことは、依然としてチームの悩みの種だ。当初はオープン戦で打ちまくった宗佑磨が任されたが、低打率に喘いだ。

積極的な打撃が持ち味だが、ボール球も振っていくタイプで、一軍デビューを果たした昨季も二軍では104試合に出場して四球率5.4%と低い数値だった。

勢いのある若手の台頭は望ましいが、長いシーズンではヒットだけを積み重ねても、高い出塁率を維持するのは難しい。

また、キャンプ中に右脇腹を痛めたT-岡田は開幕を2軍で迎え、3・4月の柵越えは月末の1本だけで終わっている。

「新鋭・宗の若さ」と「T-岡田の状態」に「ルーキー・田嶋大樹への期待感」などの要素も加えて総合的に、まず福良淳一監督はオーソドックスな戦い方で勝てる可能性を模索したことがうかがえる。

だが、開幕直後から目論見は外れ、現在までのバファローズは1・2番ともリーグで最も出塁率が低い。

チームの売りである中軸打者の打棒を生かすには、より多くの走者を塁上に送り込んでおく必要がある。

しかし、3・4月はパワーヒッターのマレーロが、リーグ最多の7本塁打を放ちながらも5本がソロアーチで、相棒のロメロも3本、9打点と物足りない成績に終わった。

首位を行くライオンズは、先頭打者が4割を超える確率で出塁するのだから、初回の攻防からして大きな差をつけられている。オフェンス面でのちぐはぐさは、投手の個人成績にも表れた。

先発ローテーションでは西勇輝、アルバース、山岡泰輔がいずれも防御率2点台ながら勝ち越せず。殊に、金子千尋は防御率5.75と打ち込まれて勝ち星なしに終わった(カブスもエース格、ダルビッシュ有もいまだ白星つかず)。

新クローザーの増井浩俊に移籍後初セーブがついたのは、4月18日だ。指揮官のテコ入れは早かった。

問題解消へ、4月半ばからは長打力を最大の売りとしながら四球も選べる吉田正尚の打順を2番に上げ、5月からは1番としての起用も続く。

この状況は、リーグ有数の打力を有しながら、リードオフを固定できずにいるカブス打線と似ている。

知将ジョー・マッドンは昨季、強打者カイル・シュワーバーを1番に据える“実験”を試みたが頓挫し、ポイントゲッターのアンソニー・リゾーを打線の頭に置くなど、苦心は今も続く。

2016年はデクスター・ファウラーが、ほぼ固定されて出塁率.393を記録していたが、同年限りで退団して以降、チームはその穴を埋められず、世界一からも遠のいている。

今季のバファローズは結果として、吉田がテーブルセッターに定着した4月28日からの11試合で、チームの1試合平均得点が3.91まで増えた。

「大当たり」と采配が結論付けられるのは、吉田のみならず、後続の中軸打者が結果を残し続けることも重要で、今後もいくばくかの忍耐が必要とされそうだ。

ただ、課題が明確になっているのは、チームが着実にステップを踏んでいることの証として、前向きに捉えてもいいかもしれない。

新戦力が多かった昨年の同時期は快調な滑り出しを見せたが、根拠として挙げられた「勢い」を失った時、急速に瓦解が始まった。

昨季を通してチームの強みも弱みも明るみとなったことで、チームの輪郭はだいぶはっきりとしている。

5月の声を聞くと勝ちが先行し、勝率5割も目の前に迫ってきた。22年ぶりのリーグ優勝へ向けた戦いは始まったばかりだ。

代替画像

藤原 彬

アルバイト時代を含めて10年余り野球専門誌の制作に携わり、2016年にFAとなったさすらいのスポーツウォッチャー。「二兎を追う」を信条に、編集、執筆、写真、発信、校閲をこなす5ツール・プレーヤーを目指して勉強中。食にうるさい関西人だが、行く先々で「あんまり面白くないね」と言われる。同い年のレブロン・ジェームズは誇り。

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