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野球 コラム 2018年4月4日

【楽天好き】「77」を背負ったホーム開幕戦

野球好きコラム by 松山 ようこ
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星野さん追悼セレモニー

「仙ちゃん」と言う仲なのだそうだ。

あの小田和正さんが、仙台の開幕戦で始球式を務めたが、その後のコメントで知った。「投げる前に仙ちゃんのセレモニーがあったから、ジーンと来てしまって、これから投げるということを忘れていました」と小田さん。

1970年のデビューだから、ほぼ半世紀。70歳にして、変わらぬ美しい歌声と楽曲を提供し続け、コンサートでは大会場を縦横無尽に走り回ったりもする小田さん。

「77」と大きく番号が記されたマウンドから、その小柄な身体からは想像できないほど、軽々と強い球をキャプテン嶋基宏へ投げた。予想外だったのだろう。場内からはどよめきが起こった。

77の背番号を着用した監督コーチ選手

東北楽天ゴールデンイーグルスが、仙台でホーム開幕戦を迎えた。今年初めに「仙ちゃん」こと、星野仙一元監督が亡くなり、今季の開幕戦は、チーム全員が「77」の背番号のユニフォームを着用して戦った。

プロ野球の開幕は、いわば「新年」で「あけましておめでとう」の日。そこで追悼するのだから、勇気と覚悟は計り知れない。

始球式の前に、星野さんの追悼セレモニーが行われ、場内の巨大スクリーンに星野さんとまつわる名場面が次々と流れた。スタンドで目頭を抑えるファンもあちこちで見られた。かくいう私も目の前の景色が歪んでしまった。

また、セレモニーで梨田昌孝監督は、マウンドに花束を手向けると、いつものように「お願いします」と星野さんに”挨拶”をしたという。そんな特別なムードのなか、ホーム開幕戦が始まった。

◆岸は「満点」の快投。”一丸”となっていたチームとファン

試合前に投球練習する岸

3連戦のシリーズ対戦相手は、北海道日本ハムファイターズ。こうして場内の空気に重みが増したなか、先発を担ったのは岸孝之だった。岸は星野さんがいなければ、故郷に錦を飾れなかったかもしれない。

星野さんのおかげで、今の楽天の岸はあると言っても過言ではない。岸は試合前から、ただならぬ決意と緊張感を漂わせ、「77」と記されたマウンドへ上がった。

結果、岸はすばらしいピッチングを披露した。8回を投げて、わずか3安打、ギアアップも光った6奪三振。0-0の投手戦で回を追うごとに重みが増すなか、岸は7回と8回に得点圏にランナーを背負うも、抜群の制球力と強いストレートでピンチを切り抜けた。

球場の雰囲気はとんでもない盛り上がり様だった。ファンの反応は、ひとつの「生き物」のように、一球一球に左右されていた。ピンチを切り抜けた時、岸がグラブを叩いて気合いの一声を上げると、球場は揺れんばかりの大歓声に包まれた。

梨田監督はそんな岸について「満点」と評価。ただし、その後は9回に守護神・松井裕樹が登板し、いきなりの連打とミスで満塁のピンチを招くと、4番レアードにタイムリー二塁打を浴びて2失点。

なんとか切り替えて、その後は三者三振で3アウトを奪うも、9回裏にチームが得点をあげることはなく、0-2で楽天は敗戦した。

◆「気持ち」は結果論。「しっかりせえ」ということ

星野さんお別れ会の会場にはファンか?ひっきりなしに訪れた

得点のチャンスはあったが、あと1本が出なかった。言うまでもなく、「気持ち」は誰もが強く持っていた。

初回、大事な先制点のチャンスでランナーを返せなかった4番のウィーラーは、見逃し三振の後、不甲斐なさげに怒りをあらわにした。失点後、ベンチで茫然とした表情を見せた松井の心中も察して余りある。

「気持ちで打った、抑えた」とは結果論だ。最後の最後に勝敗を決する時、”気持ち(メンタル)”は大きく作用することが多い(そう語る選手は少なくない)が、単にそうではないことも往々にしてあるのが、勝負の厳しさ、野球の厳しさだろう。

梨田監督は試合後、「『しっかりせえ』っていうことでしょうね」と星野さんの”メッセージ”を受け取ったようだ。野球も人生も、そう思いどおりには行かないもの。感動のストーリーも、そう簡単には生まれない。もちろん、だからこそ感動するのだけれども。

追悼セレモニーで流れた映像に、こんなシーンがあった。生涯を野球に捧げた星野さんが、昨年に野球殿堂入りを果たした時のスピーチで、しみじみとこう語ったのだ。

「おれ、野球をやってきて本当によかった。とことんまで野球をやってきてよかった。ずーっと野球と恋愛してきてよかった。野球ともっともっと恋をしたいな」。

野球を恋愛の相手と考えると、ホーム開幕戦はさながらツンデレ的に振り回されたような気もするけれども、だからきっと野球は面白いのだろう。「しっかりせえ」の闘魂を注入したチームの巻き返しに期待したい。

松山ようこ

松山 ようこ

フリーランス翻訳者・ライター。スポーツやエンターテイメント関連コンテンツの字幕翻訳をはじめ、Webコンテンツ、関連ニュース、企業資料などの翻訳や制作を請け負う。J SPORTSでは、主にMLBや侍ジャパンのほか、2015シーズンより楽天イーグルスを取材し、コラムやインタビュー記事を担当。野球の他にも、幅広くスポーツ選手はじめ著名人を取材。Twitter @yokobooboo

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