奈良岡が活躍しシングルス充実のNTT東日本か、ダブルス好調の日立情報通信Eか | 全日本実業団バドミントン選手権 男子決勝プレビュー

準決勝では渡辺航貴との日本代表対決を制した奈良岡

第75回全日本実業団バドミントン選手権は、6月29日に愛媛県・松山市の愛媛県武道館で男女の決勝戦を行う。日本のトップ選手を抱える実業団チームの団体戦。2複3単で3勝を競う方式で、チームの総力が試される。男子は、2大会ぶり7度目の優勝を狙うNTT東日本が、初優勝を目指す日立情報通信エンジニアリングと対戦する。

両チームの特長は、対照的だ。チャレンジャーの立場になる日立情報通信Eは、ダブルスの陣容が充実している。日本代表の霜上雄一／野村拓海、松居圭一郎／玉手勝輝、川邊悠陽／松川健大、井上誠也／木田悠斗を含めた4ペアを起用し、ダブルスの試合を全勝している。ダブルスで2勝を挙げて、相手にはプレッシャー、味方には勢いを与える戦い方が強みとなっている。1日3試合の日もある中、複数のペアを使い分けて、消耗を軽減する戦い方も生きた。

準決勝のトナミ運輸戦は、準々決勝をタフなゲームで競り勝つ形になったトナミ運輸に対して、フレッシュさで優位に立った。第1ダブルスで霜上／野村が、2021年世界選手権覇者で24年パリ五輪にも出場した保木卓朗／小林優吾を2-0で撃破。第2ダブルスを松居／玉手が制し、第1シングルスの野田統馬が、大林拓真を破って3-0。強い勝ち上がりを見せた。杉山勝美監督に代わって今大会の陣頭指揮を執っている大嶋一彰コーチは「初の決勝進出は嬉しいけど、ここを目指しているわけではない。今は、明日の決勝に向けたイメージしかない」と悲願のタイトル奪取にかける意気込みを語った。

大会は、トーナメント戦。対戦する可能性のある相手の分析を全員で行い、情報を共有してきた成果が出ている実感があるという。決勝戦に向けては「相手を意識し過ぎても良くない。持てる力を出すことを考えたい」と話したが、相手のNTT東日本はシングルス陣が強力。「ダブルスを取れれば。シングルスに良い形でつなげられればと思う」と好調のダブルスで相手にプレッシャーをかける戦い方を思い描いていた。

準決勝で日本代表の保木／小林を破った霜上／野村

一方のNTT東日本は、シングルスに奈良岡功大、田中湧士、武井凛生と日本代表3選手を擁し、元世界王者の桃田賢斗もコーチ兼任選手として控える。中でも、大きな変化は、昨夏にチームに加入した奈良岡が機能していることだ。24年11月のS/Jリーグでは敗戦。国際大会でも団体戦を苦手としてきたが、今大会では準々決勝、準決勝で勝利を挙げ、チームを勝利に導く役割を果たしている。準々決勝で加入後初の団体戦勝利を挙げると「最初は、すごく緊張した。思ったような球が飛ばずに、あれ、またヤバイのか……と思ったけど、途中で慣れて大丈夫だと思った」と安堵の表情。準決勝では渡辺航貴との日本代表対決を2-1で制し、前回優勝のBIPROGY撃破に大きく貢献した。

強力なシングルスのラインナップを見れば、ダブルス2試合を落としても逆転勝利の可能性は十分にある。しかし、NTT東日本バトミントン部を統括する川前直樹監督（チームの監督、大会での登録では女子監督）は「団体戦は、流れで変わってしまう。向こうは、トナミ運輸を破っていて、本当に強いと思う。ダブルス1本でもと思うけど、2本取りに行くつもりでいかないと」と序盤から勝負の構え。日本代表の緑川大輝が準々決勝で負傷したが、パートナーの山下恭平を、別ペアの柴田一樹と組ませた即席ペアが、準決勝で日本代表の熊谷翔／西大輝に勝利しており、ダブルスも譲る気はない。川前監督は「昨年のS/Jリーグでは0-3で負けているので、悔しさを晴らしたい」とも話した。

ダブルス好調の日立情報通信Eか、シングルス充実のNTT東日本か。男子決勝戦は、6月28日の午前10時に幕を開ける。

文：平野貴也