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バドミントン コラム 2024年3月28日

「2枚目の五輪切符」をつかむのは誰だ!?=バドミントン五輪レース最終戦

バド×レポ by 平野 貴也
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バドミントンのパリ五輪出場権獲得レースは、いよいよ最終戦を迎える。3月24日に欧州遠征の第3戦スイスオープンが終了。4月9日に中国・寧波で開幕するアジア選手権を残すのみとなった。最もレベルが高いアジアの大陸選手権は、BWF(世界バドミントン連盟)ワールドツアー最高峰のスーパー1000と同等で高いポイントが設定されている。五輪切符獲得圏外の選手が、最後の逆転を狙って挑む舞台となる。

■3大会連続の山口茜ら各種目のエースは、五輪出場権獲得済み

日本は、すでに各種目のエースが五輪出場を確実にしている。女子シングルスの山口茜(再春館製薬所)は、3大会連続の五輪出場。混合ダブルスは、前回の東京五輪で銅メダルを獲得した渡辺勇大東野有紗(BIPROGY)が2大会連続の五輪出場。男子シングルスの奈良岡功大(FWDグループ)、男子ダブルスの保木卓朗小林優吾(トナミ運輸)、女子ダブルスの志田千陽松山奈未(再春館製薬所)の初出場も確実だ。

■最終戦に残されたのは、3種目の「2枚目の切符」

パリ五輪は、各種目とも同国からの出場は、最大2枠。日本勢は、3つの種目に「2枚目の切符」を狙う選手がいる。候補は、男子シングルスの西本拳太(ジェイテクト)。女子シングルスの大堀彩(トナミ運輸)と奥原希望(太陽ホールディングス)。女子ダブルスの松本麻佑永原和可那(北都銀行)と福島由紀廣田彩花(丸杉)となっている。
五輪出場2枠適用の条件は、五輪レースランキングでシングルスは16位以上、ダブルスは8位以上に同国から2人または2組以上が入ることであり、上位2位が五輪出場権を獲得する。上記の選手たちは「日本勢2番手」と「シングルス16位、ダブルス8位以上」の両方の条件を満たせば、各種目における日本勢の2枚目の五輪切符を獲得できる。

■女子シングルスは大堀が優位、奥原の大逆転は4強以上が最低条件

女子シングルスの日本勢2番手争いは、五輪レースランク11位(※以下、ランクは3月26日更新時点)の大堀が6万2137点、16位の奥原が7010点差の5万7027点で追いかける展開。以下に、2人のアジア選手権の成績による五輪レースポイントの変化を記述する。

▽大堀
16強未満→6万2137 16強→6万2617 8強→6万4417 4強以上→6万6217以上

▽奥原
8強以下→6万597以下 4強→6万2397 準優勝→6万4197 優勝→6万5997

アジア選手権で、大堀がベスト4以上に進むか、奥原がベスト8以下なら、大堀の日本勢2番手が確定する。奥原が逆転するには、最低でもベスト4進出が条件。逆転を狙う奥原は、大堀がベスト16なら決勝進出、ベスト8なら優勝が必要になる。また、2番手になった選手が五輪レースランク全体の16位以内でなければ、五輪出場権は得られない。

奥原は、度重なる負傷でレース序盤を棒に振ったが、23年世界選手権でベスト8に入ると、同年終盤には国際大会を2週連続で優勝するなど大堀を猛追。しかし、大堀も国際大会で10連敗していた奥原に24年2月のタイマスターズ、3月のフランスオープンと直接対決で連勝し、突き放した。何としても五輪初出場を果たしたい大堀と、驚異的な巻き返しで最終戦に可能性をつないだ奥原のどちらが2枚目の切符を手にするか。26日に発表されたドローで、奥原は、1回戦で世界女王のアン・セヨン(韓国)と対戦する厳しい組み合わせとなったが、奇跡は起こるのか。

■女子ダブルスは「ナガマツ」ペア優位、福島/廣田は決勝進出が最低条件

女子ダブルスは、2ペアのどちらが日本勢2番手になるかの勝負。7位の松本/永原が7万9183点、8位の福島/廣田が7万6325点で、2858点の差がある。2番手になったペアが五輪レース全体の8位以内に残らなければ、日本から2組出場することはできないが、日本の2組を下位から追い越す可能性があるのは、9位のラハユ/ラマダンティ(インドネシア)のみ。日本勢の2番手は、8位以内をキープできる。以下に、アジア選手権の成績による五輪レースポイントの変化を記述する。

▽松本/永原
8強以下→7万9183点 ベスト4→8万983点 準優勝→8万2783点 優勝→8万4583点

▽福島/廣田
8強以下→7万6325点 ベスト4→7万8305点 準優勝→8万105点 優勝→8万1905点

松本/永原が決勝に進出する、あるいは、福島/廣田がベスト4以下なら、松本/永原の2大会連続五輪出場が決まる。福島/廣田が逆転するには、決勝進出が最低条件。松本/永原がベスト4だった場合は、優勝しなければ追い越せない。
松本/永原は、五輪レースポイントを上積みできない期間が長かったが、年が明けてからはインドオープン優勝、フランスオープン4強と好調だ。福島/廣田も通常のコンディションなら、ともに世界のトップを狙える力がある。しかし、廣田が23年12月に右ひざ前十字じん帯を断裂。プロテクターを装着し、保存療法でプレーを続けているが、プレー範囲が大幅に狭まっていることは否めない。それでも、最後まで戦い続けることに重点を置き、五輪レース最終戦に臨む。

■男子シングルスの西本は、16位以上を死守できるか

男子シングルスの西本は、日本勢2番手の条件は確定済み。問題は、日本が五輪出場2枠を得るための16位以上をキープできるかどうか。3月26日時点で、西本は6万4982点で11位。ライバルが同じブロックで戦うため、逃げ切れる可能性は高い。西本自身も1回戦で五輪レースランク13位のロー・ケンユー(シンガポール)と対戦。自分を追い越す可能性のある選手を破れば、五輪出場に大きく前進するため、1勝の価値が大きい大会となる。
1年をかけて戦ってきた五輪レースのラスト。五輪出場権をかけた戦いが注目されるが、レースを戦い抜いてきた選手たちのプライドをかけた最終戦でもある。最後の最後に、どんなドラマが待っているのだろうか。

文:平野 貴也
平野貴也

平野 貴也

1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。

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