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保木卓朗/小林優吾
バドミントンのS/Jリーグは、2月23日、24日に東京体育館で、優勝を決めるTOP4トーナメント(以下、TOP4)および順位決定戦を行う。男女とも6チームずつ2組で行ったブロック戦の各組上位2位がTOP4に進出。23日に準決勝、24日に決勝を行う。3位以下は、23日に別ブロック同順位のチームと対戦。試合は、第1ダブルス、シングルス、第2ダブルスの順に行い、2勝を争う。
■6連覇狙うトナミ運輸、保木卓朗/小林優吾「自分たちの仕事をして1本を取る」
男子のTOP4は、前回と同じ組み合わせとなった準決勝の「トナミ運輸 vs. NTT東日本」が注目カード。トナミ運輸は、日本リーグが現在のS/Jリーグに改名した2016年以降、5連覇中。ダブルスには、日本のエース「ホキコバ」ペア、保木卓朗/小林優吾を擁する。シングルスも日本A代表の常山幹太を含めて日本代表4人の陣容を誇る。ダブルスのセカンドペアは、23年の日本ランキングサーキットを優勝した金子真大/大田隼也が候補となるが、前回大会のTOP4では、元日本代表の園田啓悟コーチを投入。園田/保木、小林/目崎駿太郎と組み替える奇策で準決勝、決勝をともに2-1で競り勝った。保木/小林で第1ダブルスを奪って2-0を狙うのが王道だが、どんなオーダーを組むか。保木は、自身の役割について「ホキコバがいる安心感をチームに与えること。(先に)1本取られてしまうというプレッシャーを相手に与える存在になりたい。チームのエースとして、日本のエースとしても負けない気持ちで頑張りたい」とプライドをのぞかせた。前回は後輩と組んだ小林も「自分たちの仕事をして1本を取る。そこから後輩がどうするか。自分たちは自分たちの仕事をする、背中を見せることを最優先したい」と1本先取にかける意気込みを示した。
対するNTT東日本は、日本リーグ時代に過去最多18回の優勝を誇る名門だ(前身のNTT東京、電電東京を含む)。元世界王者の桃田賢斗、B代表の田中湧士がいるシングルスより強力な選手層を誇るのが、ダブルスだ。全日本総合選手権では、日本A代表の古賀輝/齋藤太一が優勝。24年の日本B代表に入った柴田一樹/山田尚輝が準優勝。さらに、混合ダブルスA代表の緑川大輝、山下恭平が組んだペアも8強入りした。対抗するのに十分な戦力と言える。打倒トナミ運輸を果たせば、一気に王座奪還が見えてくる。
■男子準決勝「BIPROGY vs. ジェイテクト」は、ダブルスが鍵
男子のもう一方の準決勝は、BIPROGYとジェイテクトが対戦する。シングルスは、A代表の西本拳太を擁するジェイテクトが優位だが、BIPROGYはB代表の渡辺航貴が好調。ジェイテクトは、このカードを落とすと厳しくなる。BIPROGYは、23年11月に行われた国際大会の熊本マスターズジャパンで世界選手権優勝ペアを2組撃破した岡村洋輝/三橋健也がダブルスのエース。全日本総合4強の井上拓斗/小野寺雅之もいるが、混合ダブルスA代表の渡辺勇大、金子祐樹も起用可能で戦力が豊富だ。ジェイテクトは、ブロック最終戦のNTT東日本戦で相澤桃李/佐野大輔、野田悠斗/川島直也という組み替えペアをぶつけ、相澤/佐野が善戦したが、ともに敗戦。相澤/野田のペアに戻して勝負か、今大会での引退を表明した市川和洋/馬屋原大樹をエースで起用するのか。主将の宮嶋航太郎を佐野と組ませるペアでも戦っており、どのようなオーダーを組むか注目される。
■再春館製薬所の絶対的エース山口茜「勢いを持って戦う」、ヨネックスはダブルスで勝負
山口茜
女子のTOP4は、準決勝で前回決勝カードの再戦となる組み合わせが実現。連覇を狙う再春館製薬所が、前回準優勝のヨネックスと対戦する。日本A代表が不在だったブロック戦は、苦戦を強いられ、最終節に逆転して1位通過。ただ、TOP4ではシングルス、ダブルスともに日本のエースである山口茜、志田千陽/松山奈未が揃うため、優勝に最も近い存在となる。山口は、年明けに右足の負傷から復帰したばかり。「自分のリズムでスムーズに動くには、もう少し。(S/Jリーグのブロック最終戦では)連続攻撃が少なかった」と、まだ本調子ではないが、それでも世界ランク1ケタの選手がほかに不在のリーグでは、絶対的な存在だ。TOP4に向けては「団体戦で優勝するとチームで勢いがついて、個人戦で結果が付いて来るという経験が何度もあるので、重視している。勢いを持って戦いたい」と意気込みを語った。若手の挑戦を受ける立場だが「あまり他人のことは言えないけど、最近は技術的に上手い選手は沢山いる一方で、自分たちの年代のように声を出して、何が何でも返すという気迫のある選手は、ちょっと少ないように感じる」と、まだまだ世代交代を許すつもりはなく、大きな壁となって立ちはだかる。ただし、第2ダブルスはやや不安定で、志田/松山が直前のアジア団体選手権で不調だったことも気がかり。第1ダブルスで勢いをつけられるかどうかは鍵となる。対するヨネックスは、シングルスに仁平菜月、高橋明日香と実力者を擁するが、山口の牙城を崩すのは容易でなく、ダブルスで2勝を狙いたい。エースの櫻本絢子/宮浦玲奈は、世界ランク8位。相手エースの志田/松山に対抗可能だ。第2ダブルスをどのペアで戦うか。ブロック戦では、保原彩夏が、加入内定選手の須藤海妃と組んで2勝1敗、杉山明日香と組んで2勝とフル回転。どちらで勝負に出るか。
■「BIPROGY vs. 北都銀行」の注目は、若手B代表対決もあるシングルス
もう一方の準決勝は、前回大会3位決定戦のカードで、BIPROGYと北都銀行が対戦する。この試合のポイントは、シングルスだ。BIPROGYは、23年12月に全日本総合選手権を初優勝した杉山薫がエース。北都銀行は、川上紗恵奈が世界ランクでは上位にいるが、今季での引退を表明。ブロック戦でも若手の舛木さくらを起用し続けた。杉山と舛木の対戦になれば、28年ロサンゼルス五輪を狙う24年日本B代表同士の同級生対決となる。
ダブルスは、選手層で勝るのはBIPROGY。中西貴映/岩永鈴は、日本B代表。大竹望月/高橋美優も見劣りしない実力を持つ。さらに混合ダブルスで日本A代表の東野有紗、松友美佐紀を起用してペアを組み替えて戦う選択肢も持っており、特に中西/東野の組み合わせは、これまでも好成績を収めている。一方、北都銀行には日本A代表で世界ランク8位の松本麻佑/永原和可那がいる。ブロック戦では組み替え、2人を別のパートナーと組ませて戦う試合が多かったが、TOP4ではエースペアとして確実に1本を奪う役割を担うだろう。
男子は、トナミ運輸とNTT東日本の勝者が優勝候補として決勝に進む。もう一方の準決勝の勝者が決勝でどう挑むか。女子は、2種目で日本のエースを抱える再春館製薬所を止めるチームが現れるかどうか。S/Jリーグは、23年シーズンの最終戦。順位決定戦を含めて各チームともこの大会を最後に現役を引退したり、チームを離れたりする選手がいる。シーズン最終戦を勝利で飾りたい気持ちは、どのチームも強い。果たして、どんなドラマが待っているのか。
文:平野 貴也
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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