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桃田賢斗選手
日本バドミントン界の名門が王座奪還に燃えている。国内最高峰のS/Jリーグが11月4日に秋田市と刈谷市で開幕する。昨季は、男子はトナミ運輸の5連覇、女子は再春館製薬所が3度目の優勝を飾った。男子で悔しい思いをしているのが、名門のNTT東日本だ。S/Jリーグの前身である日本リーグ時代は、10連覇を含む最多17回の優勝を誇っていた(電電東京、NTT東京時代を含む)が、2014年を最後に栄冠から遠ざかっている。
■日本代表や国内王者、豊富な戦力が強み
S/Jリーグは、2複1単の2試合先取で争う団体戦だ。6チーム1組でSとJのブロックに別れ、総当たり1回戦を実施。各ブロック上位2位がトップ4トーナメントに進出して、優勝を争う。NTT東日本の強みは、選手の多さと選手層の厚さだ。川前監督は「五輪レースを戦っている選手もいる。選手の起用法は、コンディションを見ながら、そのときのベストのオーダーを組めればと思う。毎試合、オーダーが変わる可能性もある」と話した。
シングルスは、桃田だけでなく、2021年の全日本王者である田中湧士(24歳)、今年の日本ランキングサーキットと全日本社会人選手権を制した古賀穂(27歳)、若手で勢いのある武井凛生(20歳)と駒が揃う。ダブルスも日本A代表の古賀輝(29歳)/齋藤太一(30歳)、武井優太(22歳)/遠藤彩斗(23歳)を筆頭に、それぞれ混合ダブルスでA代表に入っている山下恭平(25歳)/緑川大輝(23歳)、今年の全日本社会人選手権を優勝した柴田一樹(25歳)/山田尚輝(23歳)と実力者揃い。さらに混合ダブルスを中心に活躍している西川裕次郎(28歳)、仁平澄也(25歳)もおり、戦力はリーグ随一だ。
■シングルスは桃田か古賀(穂)か、出番争いも激戦
古賀(穂)選手
それだけに、誰が起用されるかも注目される。古賀(穂)が「桃田選手、田中選手もいるので、どれだけ出られるかは分からないけど、出たらしっかりと1勝を取りたい。国内大会優勝の経験をリーグに生かせればと思う。お世話になっている会社の人たちに活躍する姿を見せたい」と意気込めば、桃田も「出られるのであれば、全部、僕が出て、勝ってチームに貢献したい。地方でプレーを見たいと思ってくれている人、わざわざ会場まで足を運んでくれる人の前で下手なプレーはできない。しっかり仕上げていきたい」と1枠しかないシングルスでの貢献に意欲を見せた。
■女子は、トップ4進出が目標
水井ひらり選手
男子が王座奪還を目指す一方で、前回7位の女子は、まずトップ4進出を目標に定める。2014年のアベック優勝が唯一のタイトル。2度目の優勝を目指せる体制を整える段階にある。主将を務める水井ひらり(23歳)は、シングルスのエース。目標達成に向けて「厳しい戦いになるとは思っていますが、その中でそれぞれが自分の持っている力を出し切ることが絶対。会社の名前を背負う団体戦で、個人戦とは違う。団結力も大事」と実力発揮を最優先に掲げた。前回は、ブロック4位。今回も同じJブロックにヨネックスや北都銀行、ACT SAIKYOといった強豪がひしめく。特にヨネックスや北都銀行は、日本A代表のダブルスを抱えており、最初のダブルスを取って勢いに乗りやすいチーム。NTT東日本にすれば厄介な相手だ。水井は「本当に、シングルスは絶対に落とせないと思っている」とチームの主軸としての役割を担う覚悟を示した。シングルスは、大家夏稀(25歳)、栗原琉夏(21歳)、中静朱里(21歳)を加えた4人のラインナップで勝負する。
■若手中心のダブルス、ベテランの篠谷が支える
篠谷菜留選手
ダブルスは、川前監督が「数年先を見据えて、育成と結果を同時進行で求めていきたい」と期待をかける新社会人の石川心菜(19歳)/古根川美桜(18歳)という若手ペアが主軸候補。日本B代表経験者の尾崎沙織(27歳)、鈴木陽向(21歳)、大学女王で社会人1年目の上杉杏(23歳)と実績を上げている選手がおり、来季加入内定の新戦力として日本B代表選手である山北奈緒(18歳、ふたば未来学園高校)も加わるが、全体的な経験不足は否めない。チームの底上げ役として期待されるのは、混合ダブルスで日本A代表に入っている篠谷菜留(29歳)だ。どの試合でもスタンドから味方を励ます大黒柱。「3-0で勝つのが良いけど2-1でも勝ちは勝ち。シングルスと、ダブルスのどちらか一つを必ず取るところを全員が同じ意識で戦うことが大事と思う」と総力戦で臨む姿勢を強調した。
第2ダブルスをどんな組み合わせで戦うか、また第1ダブルスと第2ダブルスを入れ替えるオーダーを組むことはあるのかも注目点となる。だが、ブロックの中でも挑戦者の立場であること考えると、何よりも大事なのは、第1ダブルスの戦いで勢いに乗れるかどうか。篠谷は「試合に出ればポイントを取るのが大事だけど、一緒に組んで出る後輩に、どういう戦い方、準備をするのがチーム戦なのかを伝えたい。第1ダブルスは、次につながる内容にするのが大事。負けたとしても良い流れでつなげるのが大事」とポイントに挙げた。
■国内の競技活性化にリーグは不可欠、学生には良いお手本に
普段、バドミントン界では五輪を中心とした国際大会が注目を集めているが、国内リーグの活性化なくして、国内における競技の活性化はあり得ない。地方を転戦するS/Jリーグは、日本各地の競技熱を集約する場とすべきところ。篠谷は「学生の頃にインターネットやテレビで試合を見れたら、もっと刺激をもらったかもしれない」と話したが、学生にとっても生の教材と言うべき良いお手本が見られる機会となる。日本代表に入っていない実力者たちは、代表選手に負けない力を見せようと腕を撫している。男子の名門復活はあるのか、NTT女子の躍進はあるのか。各チームの成績はもとより、日本一をかけた団体戦の中で各選手が見せる戦いざまに注目だ。
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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