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五輪レースの終盤、この大会は見逃せない。バドミントンの国際大会、全英オープンが11日に開幕する。世界トップクラスの選手が参加するBWFワールドツアーの中でも最も格付けの高いスーパー1000。女子シングルスで4年ぶり2度目の優勝を狙う奥原希望(太陽ホールディングス)が、昨年12月にBWFワールドツアーファイナルズの4位でシーズンを終えた際、「とりあえず一度休んで、次の大きな大会は3月の全英オープンがあるので、多分、みんながみんな、タイトルを取りに来る大会だと思うので、そこでしっかりと勝負できるように、体と気持ちをリセットして向かえたら良い」と今季最初のターゲットに挙げていた大会だ。
世界選手権よりも古い歴史を持つ全英オープンは、最も強い権威を誇る。精鋭揃いのトーナメントで、レベルが高い。東京五輪の前哨戦として見ることもできる大会だ。日本勢では、男子シングルス世界1位の桃田賢斗(NTT東日本)が1月にマレーシアで起きた交通事故の影響と思われる右眼眼窩底骨折を負ったために欠場となったが、ほかの日本A代表が揃って参戦する。
4月末まで続く五輪レースも終盤に差し掛かっており、高いランキングポイントが設定されているこの大会は、逆転を狙う選手にとっては特に重要だ。日本勢では、世界ランク上位に3組がひしめく女子ダブルスにおいて、3番手に位置する2016年リオデジャネイロ五輪の女王ペアの高橋礼華/松友美佐紀(日本ユニシス)がポイント差を詰める戦いに挑む。また、男子シングルスで桃田に次ぐ2番手としての五輪出場を狙う世界ランク11位の常山幹太と16位の西本拳太(ともにトナミ運輸)の成績も注目だ。
新型コロナウイルスのまん延により、多くの日本A代表が出場を予定していたドイツオープンが中止になったほか、ポーランドオープンも延期になるなど、五輪レースのスケジュールが乱れている。出場権争いの最中にいる選手にとっては、確実に開催された大会でポイントを取りたいところだ。日本旅券保有者の入国制限や隔離処置が増えているため、この大会後、選手は帰国予定だったが、今後のインド、マレーシア、シンガポールで行われる大会にスムーズに入るために帰国をせず、21日まで英国に残って合宿を続けることを日本バドミントン協会は、決定した。精神的なストレスを抱えることになることを考えると、五輪レース最後のスーパー1000では、何としても好成績を残したいところだ。
純粋に、この大会の見どころで言えば、日本勢では、女子の種目で好成績が期待できる。女子ダブルスは、世界ランク2位で世界選手権2連覇の松本麻佑/永原和可那(北都銀行)が18年にベスト4、昨年に準優勝。同3位の福島由紀/廣田彩花(アメリカンベイプ岐阜)が18年に準優勝、昨年はベスト4。ともに惜しいところで負けているだけに、今回は強豪の海外勢に勝ってタイトルを取りたい。女子シングルスは、奥原のほかに18年に準優勝している山口茜(再春館製薬所)も有力候補となる。
一方、男子は、男子ダブルスと混合ダブルスに出場する渡辺勇大が、この大会で好成績を挙げている。東野有紗(日本ユニシス)と組む混合ダブルスでは、2018年に初優勝、昨年も準優勝と2年連続で決勝を戦っており、遠藤大由(日本ユニシス)と組む男子ダブルスでも、2018年に4強入りを果たしている(遠藤も早川賢一とのペアで16年に準優勝の経験がある)。
ただし、今季は出場を予定していた1月の東南アジア遠征や2月のアジア団体選手権を回避しており、2種目とも今季初戦となるため、コンディションが気になるところだ。男子ダブルスの園田啓悟/嘉村健士(トナミ運輸)も今季初戦のマレーシアマスターズで2回戦負けしており、復調具合が注目ポイントになる。
また、今大会は、日本勢だけでなく、海外勢の動向も気になる。欠場する桃田も、6日の記者会見で「(ほかの選手の試合は)気になります。どんなプレーをして、どんな試合をするのか。ライバルでもありますが、選手たちを尊敬していますし、この人とこの人が対戦したら、どんな試合になるのかなという気持ちもあるので、見られる限り、全試合見たいと思います」と話していたが、特に男子シングルスで桃田のライバルとなる石宇奇(シー・ユーチ=中国)は、昨年7月のインドネシアオープンで左足首を負傷。10月に復帰したが、以降は優勝していない。好成績を収めたのは、昨年11月のマカオオープン(準優勝)と、今年1月のタイマスターズ(ベスト4)で、どちらもBWFワールドツアースーパー300だ。大舞台でどこまで調子を上げてくるか注目だ。
女子シングルスでは、世界ランクを1年で50位から9位まで上げてきた18歳の新星アン・セヨン(韓国)が、初戦で前回女王のチェン・ユーフェイ(中国)と激突。初日から好カードとなった。バーミンガムと日本の時差は、9時間。各種目の決勝戦が行われる15日(日)は正午(日本時間21時)から試合が開始される。
文:平野貴也
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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