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バレーボール コラム 2026年3月20日

現役引退の柳沢紫子(アランマーレ山形)、様々な想いを胸に山形でのラストホームゲームへ

SVリーグコラム by 坂口 功将
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柳沢紫子(アランマーレ山形)

『大同生命SVリーグ 2025-26 女子』はレギュラーシーズンもいよいよ大詰め。今季、設立10周年の節目を迎えたアランマーレ山形は、3月21日(土)22日(日)に『INPEX酒田アリーナ』(山形)で行われる第20節が今季最後のホームゲームとなる。同時に、そこには様々な「ラスト」が含まれている。

まずは、これが山形のチームとしては最後のホームゲームであること。昨年10月、チームはSVライセンスの維持と対応を目的に、活動拠点を2026-27シーズンから秋田県秋田市・潟上市へ移すことを発表した。

現在の拠点である山形県酒田市はマザータウンと定め、将来的に公式戦の開催なども予定されているとはいえ、これが一区切りとなる。

そして、もう1つが選手の引退。田村 愛美、柳沢 紫子という、チームが国内リーグの下位カテゴリーからステップアップしていくさまを当事者として味わってきたベテランの2人が、現役生活に区切りをつける。なお、3月22日の試合後には引退セレモニーが催される予定だ。

大同生命SVリーグ 2025-26 女子

振り返れば今季のA山形はとりわけ若手選手が主力を担った。と同時にベテランならではの存在感が光ったもの。

特に印象的だったのは昨年末の「令和7年度皇后杯 全日本バレーボール選手権大会」で、12月12日の2回戦、チームにとって大会初戦でもあった試合はVリーグのフォレストリーヴズ熊本を相手に競り合いを演じ、フルセットに持ち込まれる。

その最終第5セットは開始時から6連続失点を喫する苦しい展開に。タイムアウト明けに得点が入り、1-6となった場面でエンドラインに立ったのが柳沢だった。

皇后杯でサーブを打つ柳沢紫子

「点数を見れば、息が詰まるような感覚でした。けれども、そこで私が焦ったら逆効果だと思ったので。サーブを決めたい思いもありましたが、とにかくいつもどおりサーブを打つことを心がけていました」

しっかりとコースを狙ったサーブはときに相手を崩し、ときに相手の攻撃を絞り、そうして味方の得点を演出。あれよあれよと5度のブレイクに成功し、6-6と振り出しに戻したのであった。

柳沢自身はミドルブロッカーとしてプレーしてきたが、ここ数年はリリーフサーバーとして起用されることも多く、この試合でも途中出場を果たしていた。そうした経験が、劣勢の場面で生きたと本人は言う。

「リリーフサーバーを務めていると、もちろんサーブミス自体はあってもいいのですが、それでもミスによって相手に先行されると、SVリーグのレベルではさらに苦しくなると実感します。だからこそ、いいサーブをコンスタントに打てるかが大事になってきますし、その大切さは他チームからも学んでいる部分になります」

果たして試合は終盤まで一進一退の攻防が続くと、13-13から柳沢にサーブ順が回ってくる。相手のアタックミスによってマッチポイントに到達し、柳沢は再びエンドラインに立つと、迷いを覚えた。

「自分で決めにいくような攻めのサーブを打つか、それともコースを狙うか。トスを上げる直前まで、ほんとうに迷いました。ですが、そのときのチームの状態を見て、ギリギリの戦いでみんながあっぷあっぷしている様子だと冷静に見極めたうえで、打つサーブを最後に選択しました」

決して打球が強いわけではなく、スピードが速いわけでもない、しかし的確な位置へ放たれたサーブから始まったプレーは最後、味方がブロックポイントを奪う結果に。チームは勝利を手にした。

大同生命SVリーグ 2025-26

「嬉しい気持ちと同時に、正直ほっとした感覚でした。ほんとうにみんなが助けてくれたおかげだったかなと思います」

感謝と同時に安堵の表情を浮かべた柳沢。というのも、このときチームは11月9日のレギュラーシーズン第3節以降、白星から遠かっており、公式戦で勝利するのも1ヵ月ぶりだった。

さらには対戦相手がいわゆる下位カテゴリーだっただけに、いっそう負けたくない思いが強かったことが想像できる。その中でもベテランサーバーに絶大の信頼を寄せていたのが北原勉監督だった。熊本戦を終えて、目尻を下げてこう語っている。

ハイタッチを交わす柳沢紫子

「実はV.LEAGUE DIVISION2時代の熊本戦で、柳沢選手がサーブで2桁近くの得点をひっくり返したことがあったんです。なので、昨晩のミーティングでも選手たちには『ばたつくんじゃない。柳沢選手がいるから大丈夫だよ』と伝えていましたし、ほんとうにそうなりましたね!

経験値が高い選手はあのようにいつもどおりのプレーをしてくれますし、そうすれば大丈夫だと示すことで周りを落ち着かせてくれます」

ちなみに…と聞いてみる。マッチポイントから、指揮官は柳沢がどちらのサーブを打つとにらんでいたのか。

「あそこはいつもどおりのサーブを打ってくれるだろうな、と。8割、9割の加減に映るかもしれません。ですが、勝負しすぎるわけでなく、それでいて確実に相手を崩してくれるサーブです。

トスを上げて、サーブのモーションに入ったときに、もう最高の表情をしていましたよね。誰もが緊張するし、勝負のかかった大事な場面でしたが、『やるぞ』という顔つきでしたから、私も『そのまま、いけ!』と信じていました」

北原監督は明かす。「彼女はチームがたとえオフであっても、サーブ練習だけでもひたすら取り組むような選手なんです」と。それが『いつもどおり』のパフォーマンスをつながっているのだ。

そんな姿を披露した柳沢もユニフォームを脱ぐ。山形の地で重ねてきた思い出と、ともに。すでに活動拠点の移転が決まった中で臨んだ皇后杯で、柳沢はこんな思いを口にしていた。

「ホームである酒田市民の皆さんはもちろん、山形県全体が温かく応援し、サポートしてくれたおかげで、アランマーレというチームは成り立っていると感じますから、山形を離れる寂しさは正直あります。

ですが、私たちが酒田市に執着する声を上げたとしても、それ以上に、チームが強くならないことのほうが悔しいですし、私自身は恩返しにならないと思うので。秋田に移って、いっそう強いチームになることが酒田市民、山形県民の皆さんへの恩返しになるという考えで今は過ごしています。アランマーレ山形としては今季が最後のホームゲームになるので、そこで勝ちたい気持ちは強いですね」

この週末の試合でエンドラインに立ったとき、柳沢はいつもどおりのパフォーマンスを発揮しようとするに違いない。けれども思うのだ。本人そしてチームにとってのラストホームゲーム。きっと、いつも以上の力が湧き上がるだろうと。

文/写真:坂口功将

坂口 功将

スポーツライター。1988年生まれ、兵庫県西宮市育ち。
「月刊バレーボール」編集部(日本文化出版)で8年間勤めたのち、2023年末に独立。主にバレーボールを取材・執筆し、小学生から大学生、国内外のクラブリーグ、そしてナショナルチームと幅広いカテゴリーを扱う。雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、バレーボール関連の配信番組への出演やイタリア・セリエAの解説も務める。

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