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バレーボール コラム 2025年12月29日

世界クラブ選手権の準優勝から45時間の移動、タフな状況で大阪ブルテオンが見せたプロフェッショナル

SVリーグコラム by 田中 夕子
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厳しい状況を戦いきった大阪ブルテオン

日本のクラブ史上初、世界クラブ選手権で準優勝という快挙を成し遂げた大阪ブルテオン

12月27日のサントリーサンバーズ大阪との試合は、まさに『凱旋試合』ではあるのだが、帰国したのは3日前の24日。時差は12時間で、移動時間は45時間、かなりタフな状況での試合を余儀なくされた。

大同生命SVリーグ 2025-26 男子

国際経験豊富なトーマス・サムエルボ監督が「選手たちは全員間違いなく疲れているのは見ての通り」と語るように、第1セットは0-5とリードされる苦しい展開からスタート。

主将の西田 有志も「コンディションはよくないし、帰国してから休む時間もなかった。勝ち負けよりもケガをしないことが一番大事だった」と言うが、コートに立てばそれぞれが、厳しい状況でもできる限りのプレーをするのがプロの世界であり、ブルテオンの選手たちもハードスケジュールで疲弊した身体に鞭打って中盤から反撃を開始。

サーブ、ブロックで得点を返し、終盤には23-23の同点に追いついたが、最後は西川 馨太郎の速攻がブロックに止められ23-25、第1セットを失い、続く第2セットも21-25でサントリーが制した。

徐々にメンバーを代え、第3セットはセッターに中村 駿介、オポジットに西山 大翔、アウトサイドヒッターにはブライアン・バグナスを投入。

サムエルボ監督が開幕前から「今季は成長した」と話していたように、セッターの中村がラリー中もミドルやバックアタックを多用し、中盤に逆転。デュースにもつれたが26-24でこのセットを奪取した。

サントリーのホームゲームであることから、会場の応援はサントリーカラーの赤が目立ちはしたが、同じ大阪のブルテオンのファンも多く詰めかけた。

贔屓チームは異なるとはいえ、世界クラブ選手権の快挙も、ブラジルと日本を往復した直後の試合であることを多くのファンも理解している。第4セットは19-25でサントリーが制し、勝利を収めたが、ブルテオンの奮闘には会場からも大きな拍手が送られた。

日本代表で活躍する選手も多く、長距離や長時間の移動に慣れているとはいえ、西田が「これほどリカバリーや時差を調整する時間がなかったのは初めて」と思わず苦笑いを浮かべるスケジュールは、チーム内でも長いキャリアを誇る山内 晶大も「大変だった」と明かす。

「24日の17時に着いて、体育館に帰って次の日はノージャンプでウェイトとボールに少し触ったぐらいで金曜は会場練習。6対6の実戦練習を1時間して、次の日が試合。みんなそれぞれもちろん時差調整はしましたけど、僕も含めて帰ってきてからのほうが(時差ボケは)きつい。身体を起こして、慣らすためにはもっと動きたい気持ちもありましたけど、ケガのリスクもあるのでできない。なかなか熾烈で過酷でした」

快挙後のあまりに厳しい現実で、ベストパフォーマンスを発揮するなど到底難しいスケジュールではあったが、選手もスタッフも一切言い訳はしない。

大同生命SVリーグ 2025-26

サムエルボ監督も「ブラジルから帰ってきて疲れているから負けました、と言うのは嫌。我々は試合をしに来ている以上、持っているものをすべて置いていかなければならないし、休息が必要な中でも今持っているエネルギー、集中力をすべてコートの中で発揮したい」と述べたように、交代してコートに入った選手たちはそれぞれの持ち味を発揮し、疲弊した中でもコートの外も中も明るく盛り上げる。きっと純粋に見ている人たちも「いいチームだな」と思わせる力があった。

そして山内が口にしたのはもっと別の、次を見据えたポジティブなものだった。

「何より、世界クラブの最後にペルージャに勝ちたかった。金メダル、獲りたかったですね」

快挙にも満足せず、疲労や過酷日程に不満も述べず前を向くのは西田も同じだ。

「9割ぐらいの選手が時差ボケの中で試合をしていて、僕も体調はよくないし、動いていても脳が起きていないなと試合中に思うこともありました。でも、来週は絶対大丈夫だし、このスケジュールで戦うのも初めてだから逆に面白い。バレーボールを楽しむことがすべてだし、それを体現するのが、僕らにとってはマストなことですから」

厳しい状況でも戦いきった。心からの敬意を送るとともに、年明けの試合でどんな姿を見せるか。楽しみにしたい。

文:田中夕子/写真:SV.LEAGUE

田中夕子

田中 夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。WEB媒体、スポーツ専門誌を中心に寄稿し、著書に「日本男子バレー 勇者たちの奇跡」(文藝春秋)、「高校バレーは頭脳が9割」(日本文化出版)。「夢を泳ぐ」「頂を目指して」(徳間書店)、「絆があれば何度でもやり直せる」、凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること」(カンゼン)など、指導者、アスリートの著書では構成を担当

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