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バレーボール コラム 2025年12月17日

甲斐優斗、笑顔のエースが見せたスーパーカレッジバレーでの涙

バレーボールコラム by 田中 夕子
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甲斐優斗(専修大学)

フルセットに次ぐフルセット。6試合を戦いきった甲斐 優斗は、文字通り、満身創痍だった。

全日本インカレ(全日本バレーボール大学男子選手権大会ミキプルーンスーパーカレッジバレー2025)、前日の準決勝もフルセット、しかも最終セットはデュースの末に国士舘大学に敗れ、最終日の3位決定戦で専修大学は近畿大学と対戦した。

スーパーカレッジバレー2025

昨年の準決勝と同じカードとなった両校の対戦を制したのは近大。勝利の喜びを爆発させる選手たちの姿を見ながら、やり切った、という表情で主将の甲斐が周囲の選手たちを労う。

ユニフォームで顔を覆う甲斐優斗

その姿に会場中から温かな拍手が送られた。その直後、さらに拍手の音が増す。観客席に挨拶を終えた甲斐が、ひと目をはばからずに泣いていたからだ。

コートに立つ時はいつも笑顔。初出場の春高で3位になった高校3年時も、劣勢だろうと優勢の時だろうと常に笑顔で、強烈なスパイクを見舞う。

専修大に入学後、日本代表に選出され、大阪ブルテオンでプレーする時も甲斐と言えば笑顔、もしくはどれほど手に汗握るような場面でも緊張など微塵も感じさせず、むしろ表情を変えずに淡々とやるべきことをやるのみ、とばかりにプレーする。

そんな姿を見て来たせいか、ユニフォームで何度も涙を拭い、それでも抑えきれずにうずくまってタオルで顔を覆い、涙する。そんな甲斐の姿は衝撃的でもあった。

6試合を戦いきった甲斐優斗

試合後、取材陣の前に現れた甲斐はいつもと変わらぬ甲斐だった。涙の理由を問うと、笑顔で言った。

「勝ちたかったので。悔しかった、っていうところですね。(うずくまったのは)立っているのが、しんどかったからです(笑)」

スーパーカレッジバレー2025

【ハイライト動画】男子 3位決定戦  近畿大学 vs. 専修大学(12月7日)|#c_volleyball

全日本インカレの2日前まで大阪ブルテオンの試合に出場していた。その前週、チームに合流して練習する時間もあったが、ぶっつけ本番に近い状況で、SVリーグを戦う疲労もあり、コンディションも決して万全ではない。

それでも最後の全日本インカレに出たい。直訴したのは甲斐だった。

最終学年の今季、チームの主将に就任した。日本代表や大阪ブルテオンでの活動もあり、春、秋リーグや東日本インカレは出場できず、専修の1番、キャプテンマークをつけて甲斐がプレーしたのは入れ替え戦だけ。春は勝利したが、秋は日本大学に敗れ、2部降格が決まった。

「最悪の置き土産を残してしまった」と言う甲斐は、せめて最後、全日本インカレだけは出たいと直訴した。SVリーグの試合は続き、16日からはブラジルで世界クラブ選手権にも出場する。かなりのハードスケジュールではあるが、甲斐の意志をブルテオンも尊重し、最後のインカレを迎えた。

圧巻のパフォーマンスを見せた甲斐優斗

見せた姿は圧巻だった。コンビを合わせる時間が限られていたことなど微塵も感じさせず、上がってきたトスはすべて決める。小学生の頃から同じクラブでプレーした幼なじみで、中学、高校、大学と共に過ごしてきた2学年下のセッター、森田慶は当時と変わらぬ“まーくん”の呼び名で、甲斐の凄さを語る。

「どんなトスでもいいから、上げてきて、って大会前から言われていたので、迷わず上げました。本当に全部決めてくれるし、一緒にプレーしていてもとにかくすごい。昔からまーくんはすごかったですけど、改めてとんでもないな、って思ったし、一緒にプレーできて楽しかったです」

負ければ終わりのトーナメント戦。何度も苦境に立ちながら、2回戦では中央大学、3回戦は法政大学、準々決勝では順天堂大学とすべて関東1部リーグの相手にフルセットで勝利し、ベスト4まで進んだ。

攻撃の大半を担うだけでなく、サーブレシーブの本数も多く、「もう動けない」というのも決して大げさではない。まさに疲労困憊の状態ではあったが、今まで経験がないほどにすべて出し尽くした大会は、甲斐にとっても貴重な経験になったという。

大学最後の試合を終えた甲斐優斗

「大学最後の試合だったので、もうどうなってもいいという思いで臨んでいたし、やり切りました。負けたことは悔しいですけど、全試合、その時の全力をぶつけてやったので、悔いはないです」

最後まで大エースとして、戦った。だからみんなが信じて、1つになった。

専修大の甲斐優斗として過ごした激動の4年に区切りをつけ、再び、世界へ踏み出していく。

文:田中夕子/写真:坂口功将

大同生命SVリーグ 2025-26

田中夕子

田中 夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。WEB媒体、スポーツ専門誌を中心に寄稿し、著書に「日本男子バレー 勇者たちの奇跡」(文藝春秋)、「高校バレーは頭脳が9割」(日本文化出版)。「夢を泳ぐ」「頂を目指して」(徳間書店)、「絆があれば何度でもやり直せる」、凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること」(カンゼン)など、指導者、アスリートの著書では構成を担当

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