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バレーボール コラム 2025年11月27日

新人セッター中西健裕、苦闘する日本製鉄堺ブレイザーズで雰囲気を変える力

SVリーグコラム by 坂口 功将
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中西健裕(日本製鉄堺ブレイザーズ)

『大同生命SVリーグ 2025-26 男子』では、今季も名だたる海外トッププレーヤーが来日した。また、国内の移籍市場も活性化し、各チームで主力を担った面々が新天地に身を移したケースが見られる。

その代表例が日本製鉄堺ブレイザーズ。アメリカ代表を五輪のメダルに導いてきた大エースのマシュー・アンダーソンや、イタリア代表の新鋭アタッカーであるトンマーゾ・リナルディ、昨季はVC長野トライデンツでチーム最多得点をあげたウルリック・ダールが新外国籍選手として入団した。

さらにサントリーサンバーズ大阪で、4度のリーグ優勝に貢献したセッターの大宅真樹や、ウルフドッグス名古屋の主力を担ってきた高梨健太らが移籍加入を果たしている。チームにとっては過去に類を見ないほどの強力補強といえた。

大同生命SVリーグ 2025-26 男子

だが、いざシーズンが開幕し、第5節を終えた時点で2勝8敗と負け越す。サントリーとの第4節、大阪ブルテオンとの第5節と「大阪ダービー」では、いずれも勝利することができなかった。

対戦相手が恐れをなすほどに闘争心むき出しで戦う様子から、チーム名の由来でもある「炎の鉄人たち」を代名詞としてきた日鉄堺BZ。だが、その炎が消えようかとしていたのが、とりわけ第4節のGAME1だった。

昨季リーグ王者のサントリーとの今季初対戦で、第1セットを先取されると続く第2セットは出だしからブレイクを許し、1-2から7連続失点。4-14と10点差をつけられたところで、新人セッターの中西健裕とオポジットのウルリックが2枚替えとして投入された。

「相手がとてもいい戦いをしていて、むしろ自分たちが取り立てて悪いわけではないと感じていました。ただ、だからこそ前向きに、もっともっと攻めたらいいのに、と」

チームを盛り上げる中西健裕

アップゾーンからそう眺めていた中西はコートに立つと、まずはチームの雰囲気を変えることから始めた。

「プレーどうこうではなく、少し空気が重たかったので、それを変えるためにフレッシュに戦おうと考えていました」

相手の猛攻を浴びながらも、中西はウルリックによるライト方面からのアタックを中心に攻撃を組み立てていく。そして1点が決まるごとにコート中を駆け回った。

「なるべく大きな声を出して、やるだけだと思っていましたから(笑)。セッターとしてはまず両サイドの攻撃を、ネットのアンテナ付近までしっかりとトスを伸ばしきってアタックを決めきってもらおうと意識していました。そうすればウルリックは決めてくれるので」

とはいえ、サントリー側にはドミトリー・ムセルスキー(身長218cm)、小野寺太志(身長202cm)、イゴール・クリュカ(身長207cm)という巨人たちが前衛に並ぶローテーションもあった。セッターとして、その巨大な壁と対峙したわけだが…。

「アップゾーンにいるときも、リザーブ同士で『あのローテはやばいな』と話していました。なかなか自分たちが噛み合わず、攻略できなかったことは課題です。なので、しっかりと得点につなげて1本でサイドアウトがとれるようにしたいです」

試合後、悔しげにそう語った中西。けれども爪痕を残した試合でもあった。北島武監督はこのように評価している。

セカンドセッターとして投入された中西健裕

「しっかりとラインまでトスを伸ばす技術も身についてきましたし、ウルリックとのコンビもいいので、自信を持って2枚替えで起用できています。それにムードを変える、チームを勢いづけられるキャラクターですから。結果を残してくれました」

中西がチームの雰囲気を変えたのは、同じコートに立っていた仲間も感じていたこと。リベロの森愛樹は「中西がああやって盛り上げてくれたことで、自分たちの士気が上がる一面はありましたね」と喜んだ。

そうしたムードメーキングは、この試合だけに限らず、シーズンが始まる前から中西自身が胸に留めていたことだ。ルーキーイヤーを控え、本人は「セットアップやトスワーク、それに1本でも多くディグを上げられるディフェンス力を見てほしい」と語り、加えて「周りを巻き込むような声がけを。どんな選手ともコミュニケーションをとって、チームをより勝たせられるようになりたい」と意気込んでいた。

シーズンが開幕し、「かなり落ちついてプレーできるようになりました」と微笑む中西が次に目指すは、自身の役割をプレーでも確立させること。

大同生命SVリーグ 2025-26

「SVリーグはもちろん、ブレイザーズで過ごす中で毎日、これまで自分がいた世界とのレベルの違いを実感しています。そこはなんとか食らいついていきたい。それに目の前には大宅さんというお手本と言いますか、尊敬できる選手がいますから、どんどん吸収していきたいです。セカンドセッターとして、雰囲気だけでなく、プレーでも。大宅さんに追いついて、支えられるようにと考えています」

まだまだ続くシーズンにおいて、試合中に苦境に立たされる場面は出てくるだろう。実力は言うまでもないトッププレーヤーたちが、いかに力を結集させて勝機を手繰り寄せられるかは、この先の日鉄堺BZにとって1つの焦点となる。

起爆剤としての活躍が期待される中西健裕

と同時に、闘志の火種となる存在も不可欠。あの試合、中西に感化されてか、ウルリックや森、ミドルブロッカーの渡邉晃瑠らもこれでもかと口を大きく広げ、叫びながら感情を爆発させていた。

まさに、炎の鉄人たち。その熱は確かに、そこにあった。

文/写真:坂口功将

坂口 功将

スポーツライター。1988年生まれ、兵庫県西宮市育ち。
「月刊バレーボール」編集部(日本文化出版)で8年間勤めたのち、2023年末に独立。主にバレーボールを取材・執筆し、小学生から大学生、国内外のクラブリーグ、そしてナショナルチームと幅広いカテゴリーを扱う。雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、バレーボール関連の配信番組への出演やイタリア・セリエAの解説も務める。

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