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バルトシュ・クレク(東京グレートベアーズ)
『大同生命SVリーグ 2025-26 男子』の第4節、東京グレートベアーズとウルフドッグス名古屋の対戦は、他のカードに先んじて11月13日(木)14日(金)の平日ナイターに実施された。
2日間とも8000人以上の観客が詰めかけた中、ひときわ注目を集めたのが、ホームチームの東京GBに新たに加入したバルトシュ・クレクだった。
クレクといえば、2020-21シーズンから4季にわたり、WD名古屋に所属。その間にはチームのキャプテンを務め、2022-23シーズンのリーグ優勝の立役者となった。
身長205cmの体格から繰り出される強打は豪快そのものだが、その一方で繊細なハートの持ち主。チームそして仲間への献身的な姿勢を欠かさず、情に厚い姿もしばし見られる。
大同生命SVリーグ 2025-26 男子
【ハイライト動画】第4節 東京グレートベアーズ vs. ウルフドッグス名古屋(11月14日)
母国ポーランドの強豪クラブで過ごした1シーズンを経て、再び来日。古巣との初対戦となった、11月13日のGAME1では、こんなワンシーンがあった。
それは試合前の選手入場でのこと。アウェーチームのWD名古屋に続いて、次に東京GBから選手が1人ずつ、きらびやかな演出とともに名前をアナウンスされてコートに入るわけだが、背番号「1」のクレクは整列の位置に就く寸前、相手コートに向かって、両手を腰のあたりに添えて深々と頭を下げたのである。そう、日本でいう「お辞儀」そのものだった。
その姿に気づいてか、同じポーランド代表で今季からWD名古屋に入団したノルベルト・フベルも両方の手のひらを合わせて、こちらも日本流のアクションを繰り出す、なんとも粋な邂逅となった。
試合後の会見に臨むバルトシュ・クレク
なぜ、お辞儀だったのか。試合後の会見でクレクは、その胸の内をこのように語っている。
「今、私は日本にいるので、日本人らしく振る舞うべきだと考えています。それが私なりの気持ちの表し方です。ウルフドッグス名古屋に対してリスペクトを持っていますし、これは嘘でも本音を隠したいわけでもありません。本当に素晴らしい時間を過ごせましたから」
仲間だけでなく相手にも敬意を払う。トッププレーヤーが備える一面だ。その姿にチームメートも刺激を覚えている。昨季は即戦力ルーキーとして活躍し、今や堂々とエースアタッカーを務める後藤陸翔は言う。
「彼は自身の状態がいいときは、もちろん素晴らしいパフォーマンスをしますし、たとえ悪いときでも周りをプッシュしてくれます。それに絶対に手を抜きません。
そこにプロフェッショナルを感じますし、長年その積み重ねをしてきたからこそ、今のような一流の選手になったのでしょう。チームや相手へのリスペクトなど器の大きさに触れて、僕も長くプレーして、そうなりたいですから、彼からたくさんのことを学んでいます」
振り返れば、WD名古屋に在籍した際は準優勝に終わった2021-22シーズンを経て、その翌年には日頃の練習から「これのままでは、あの悔しさをまた味わうことになるぞ」と周りを叱咤し、リーグ優勝へ導いた。
在籍ラストイヤーの2023-24シーズンでは、自身のコンディションは決して万全でなくとも、V・ファイナルステージ(現在のチャンピオンシップ)の最終順位決定戦まで常にベンチに身を置き、コート上で戦う仲間たちをサポートし続けていた。
優勝の喜びも敗れた悔しさも、その時間は今なおクレク本人にとって思い出深いものとなっている。
「WD名古屋には友人もいますし、敬意を払う意味でも、ああしたアクション(お辞儀)になりました」
ただし、今回は対戦相手の身だ。クレクは強調した。
「もちろん、今はグレートベアーズの一員として、個人的にはもっともっといいプレーをして、チームに成功をもたらす。その一心で頑張っています」
この第4節では勝利を挙げることができなかった東京GBだが、年明けの1月10日(土)11日(日)には再びWD名古屋をホームで迎える。さらには3月14日(土)15日(日)に今度はアウェーゲームでWD名古屋と対戦する。
対戦機会はこれからも巡ってくる。そこでは特別な感情を抱きつつも、チームを勝利に導かんと気を吐き、腕を振り、得点を重ねるクレクの姿があるに違いない。
文/写真:坂口功将
坂口 功将
スポーツライター。1988年生まれ、兵庫県西宮市育ち。
「月刊バレーボール」編集部(日本文化出版)で8年間勤めたのち、2023年末に独立。主にバレーボールを取材・執筆し、小学生から大学生、国内外のクラブリーグ、そしてナショナルチームと幅広いカテゴリーを扱う。雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、バレーボール関連の配信番組への出演やイタリア・セリエAの解説も務める。
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