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バレーボール コラム 2025年10月9日

【SVリーグ 女子開幕まであと1日!】「上がった!」。デンソーエアリービーズの川畑遥奈がつなぐ、福島への想いと未来

SVリーグコラム by 田中 夕子
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川畑遥奈(デンソーエアリービーズ) (C)SV.LEAGUE

インナーカラーを施した明るい髪に、鮮やかなネイルのデザインが映える。

「入団したばかりの最初、1年目はオフィスネイルと言われていたんですけど、何でもいいんじゃない?と思って。私はやりたい派だったので、最初から好きなようにやってきました」

髪色も髪型もそれぞれの個性。同じように、コートの中でもどれだけ自分の長所を見せられるかが、プロ選手として生きる道。デンソーエアリービーズ川畑遥奈は、まさにコートで『魅せる』選手の1人だ。

大同生命SVリーグ 2025-26

京都橘高校から東海大学へ。同期の中川つかさ(NECレッドロケッツ川崎)とともに、4年時は春季、秋季リーグと東日本インカレ、最後の全日本インカレも制し大学四冠を達成した。

トップサーブレシーバーとベストリベロを受賞した川畑 (C)SV.LEAGUE

学生時代から守備範囲の広さと統率力、コート内で発揮するリーダーシップが光る選手ではあったが、デンソー入団2年目の昨シーズンから主将に就任。リベロとしても自身初のトップサーブレシーバーとベストリベロを受賞。ベテランから若手まで揃うチームの中で、頼れる主将として存在感を発揮した。

ロザマリア(・モンチベレル)選手はベテランで、プレーだけでなくチームのことも引っ張ってくれる。そのおかげで私も支えられていますし、コートに立つベテラン選手は少ないのでコミュニケーションを取りながら。若い選手、今年も高卒で入ってきたフレッシュでガッツのある選手たちがいるので、その子たちも思いきりプレーできるように、自分も一緒にプレーしたいと思っています」

大同生命SVリーグ 2025-26

昨シーズンは開幕9連勝を飾り、レギュラーラウンドを29勝15敗の4位で終えた。チャンピオンシップでもクォーターファイナルは埼玉上尾メディックスとのフルセットに及ぶ大熱戦を制し、セミファイナル初戦で大阪マーヴェラスに勝利し、決勝進出まであと一歩と迫った。しかし2戦目を落とし、1勝1敗で迎えた第3戦はストレートで敗れた。

優勝に向け、初戦を落としてから気迫を前面に打ち出す大阪MVに対し、押され気味になる中でも、強打レシーブだけでなく、ブロックに当たって方向が変わったボールや、味方のスパイクがブロックされた時のフォロー。

誰よりもボールを追い続けた川畑 (C)SV.LEAGUE

数字には残らずとも、「絶対に負けない」「この1本を何が何でもつなげる」と最後まで献身的なプレーで、誰よりもボールを追い続けたのが主将の川畑だ。

そして、敗れた直後であるにも関わらず、昨季からホームとなった福島の地元紙の取材を質問が尽きるまで、最後まで、誰よりも丁寧に応じていたのも川畑だった。

チームとして目指す成績や、得られた収穫。さまざまなことを語る中、事あるごとに川畑が口にしてきたのが「福島の復興のために」という言葉。2011年の東日本大震災から14年が過ぎても、未だ真の復興には程遠い。

自宅に帰ることができず不便な生活を強いられる人や、郷里を離れた人がいる。それでも年月が過ぎ、報じられる機会も減る中で、川畑が口にする「福島の復興のために」という言葉は、福島の人たちにとっていつも心救われるものであるはずだ。

昨シーズンから福島をホームタウンとして活動してきたとはいえ、選手の練習拠点や住環境は、これまでと同じ愛知県にある。2027年の夏頃には現在の愛知県西尾市から、福島県郡山市への移転が見込まれているが、それまでは福島でのホームゲームには愛知からの移動が伴う。

コンディション面を考慮すれば、選手にとっては負担もかかるが、川畑は「それ以上の価値と意味がある」と言う。

「愛知県には自分たちも含めれば、(男女でSVリーグに)4チームあるので、体育館や観客数。いろいろな問題もある中、トップリーグで戦うチームがない福島県をホームタウンとして戦うことで、新しいファンの獲得にもつながるし、自分たちがバレーボールを頑張ることで復興や地域貢献にもつながる。

それは大同生命SVリーグの理念や目的にもかなっていると思います。確かに移動は大変ですけど、でもそれ以上にバレーボールの魅力、チームの魅力を広げたい、という思いのほうが強いです」

昨シーズンはホームアリーナである『宝来屋ボンズアリーナ』が改修中で、郡山だけでなく、会津若松市や福島市、いわき市や南相馬市など、福島県内各地で試合が開催された。

場所によっては移動が不便な場所もあるが、地元の人たちからすれば滅多に見られるわけがないトップチーム、世界で戦う選手たちの活躍を見られるのは楽しく、有意義な経験であったはずだ。

実際に筆者が取材へ訪れた会津若松での試合も、来場者には家族連れが多く、方言を交えて盛り上げる会場MCのアナウンスに合わせて、楽しそうにしている観客の姿が印象的だった。

これから先、地元のチームとして多くの支持を集めるようになれば、きっとより多くの人たちがバレーボールを楽しむ空間が作りあげられていくのではないか。そんな期待も高まった。

2年目のSVリーグが始まる。

昨シーズンの最後に敗れた悔しさを晴らす場であるとともに、それぞれの選手がそれぞれの場所で重ねてきた努力の成果を発揮する場でもある。

世界選手権で4位に入った女子バレー日本代表の活躍も記憶に新しく、今季はより多くの人たちがバレーボールを見ようと足を運ぶ機会も増えるかもしれない。だからこそ、ここからいかに根づかせていくことができるか。日本代表としても合宿や韓国での親善試合に出場した川畑が言った。

「SVリーグも2年目を迎えて、認知度も上がっていると思うし、代表の選手みんなが頑張ってくれたおかげで、女子バレーも盛り上がっていると思うので、そこに自分たちの力も乗せて。SVリーグを盛り上げていきたいです」

最後まで諦めず、どんなボールもつなぐ。チームの勝利のため。バレーボールが面白いと1人でも多くの人に伝えるために。

「落ちた」と、思うボールの先にきっと川畑が伸ばす手がある。そして、響き渡る声が聞こえるはずだ。

「上がった!」

その声を、その姿を楽しみに。開幕は、間もなくだ。

文:田中夕子/写真:(C)SV.LEAGUE

田中夕子

田中 夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。WEB媒体、スポーツ専門誌を中心に寄稿し、著書に「日本男子バレー 勇者たちの奇跡」(文藝春秋)、「高校バレーは頭脳が9割」(日本文化出版)。「夢を泳ぐ」「頂を目指して」(徳間書店)、「絆があれば何度でもやり直せる」、凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること」(カンゼン)など、指導者、アスリートの著書では構成を担当

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