人気ランキング
コラム一覧
エバデダン ラリー(大阪ブルテオン)
この9月はフィリピンのマニラで開催されている「2025男子世界選手権大会」を戦ったバレーボールの男子日本代表。
結果は予選ラウンド敗退と悔しいものに終わったものの、初戦のトルコ戦でチーム最多3本のブロックシャット、最終戦のリビア戦ではアタック決定率90%(10本中)の奮闘を見せたのがミドルブロッカーのエバデダン ラリーだった。
今や文字どおり日本を代表するミドルブロッカーに、その名前を挙げることに異論はあるまい。筑波大学では全日本インカレ優勝の立役者となり、卒業後に入団した大阪ブルテオン(当時はパナソニックパンサーズ)では、早々とレギュラーに抜擢。今や前衛において不動の存在となり、2024-25 大同生命SVリーグでレギュラーシーズンベスト6に選出された。
昨季のSVリーグ、ベスト6に選出
日本代表に登録されるのも今年で4回目。昨年のパリ五輪で登録メンバー入りはかなわなかったが、日の丸をつけての存在感は着々と増しつつある。
今年は2028年のロサンゼルス五輪に向けて、新たなオリンピックサイクルが始まった年ということもあり、西本圭吾(広島サンダーズ)や、佐藤駿一郎(ウルフドッグス名古屋)といった実力派のミドルブロッカーも日本代表のメンバーとして加わっているが、ラリー自身はそこにレギュラー争いという意識を強く持っているかと言われれば、どうやらそうではない様子だ。
「正直、争っている感覚はなくて。どちらかといえば一緒にチームを作り上げていく、という具合ですかね。『自分がメンバーから落ちるわけがない』と思っているわけではないですし、かといって、『もし自分が外れたら…』とも考えていません。
とにかく今日の練習をどうやって、みんなとやり遂げるか、目の前の試合をどうやってみんなとゲームメークしていくか、そこに1人のミドルブロッカーとして向き合っています」
世界選手権を控えて、9月3日に実施されたブルガリアとの壮行試合でそう語っていたラリー。昨年のパリ五輪落選も悔しくなかったわけではない。それにミドルブロッカーとして、「世界ナンバーワンになりたい」という野望だって持っている。そこにあるのは素直な成長意欲だ。
「ロサンゼルス五輪がある4年後の自分ですか?まったく想像はできていないです。日々成長するしかないな、としか。限界を決めることが好きではないですし、それにまだまだ自分は成長過程にあると思っているんです。どんどん成長して、自分が知らないような自分になれればいいなと思いますね」
それが今年の代表活動が始まったおり、口にしていたビジョンだ。もっともリーグで個人タイトルを手にしたことも含めて、自らが評価されている実感は当人にある。それは対戦相手からも。ラリーは照れくさそうに言う。
「SVリーグで感じることもありました。自分が前衛にいることで、相手が嫌がっているなと。けっこう言われるんですよ、相手チームのセッターから『なんで、お前がいるんだよ』みたいなことを(笑)。そういうのが嬉しいなと思いますから。だから自分も返すんです、『すみません。ありがとうございます』って」
ちなみに、そんな“嫌味”で評価してきたのは、大宅真樹(日本製鉄堺ブレイザーズ)や、関田誠大(サントリーサンバーズ大阪)といった、名だたるセッターたちだそう。ネットのそばにいると、フォーカスせざるをえない。それはある種、ミドルブロッカーとして極上の賛辞だ。
ブロックに飛ぶエバデダン ラリー
そして、ラリー自身も周りの視線を集めることをいとわない。堂々とレギュラーとしてプレーする大阪Bにおいては、積み重ねた経験値がプレーや振る舞いにも表れている。「『自分を見てくれ~』みたいに緩い気持ちで臨めている自分もいますね」とラリー。2024-25シーズンに髪型をいくつかアレンジしたのも、そうした精神的な余裕が要因の1つにはあった。
父はナイジェリア人、とアフリカ系のルーツを持つことから、髪質もブラックヘアのスタイルが馴染む。長野・松本国際高校時代は短髪だったが、筑波大学時は「これまででいちばん長かった」と本人も振り返るように巨大なアフロ調だったことも。
社会人になってからはサイドを刈り上げるスタイルが多かったなか、昨年末の令和6年度天皇杯 全日本バレーボール選手権大会では6本のラインで仕立てたコーンロウを“決勝仕様”に採用。また年明けには、髪の毛を数本ごとに小さく束ねて捻りあげるスタイルに変更する。このヘアスタイルはチャンピオンシップに入ってから再びお披露目された。
本人の告白。「1月の下旬あたりにこの髪型をしたときにパフォーマンスがよかった記憶があって。試合も全勝だったんですよ。なので、いいことをやろう、と。願掛けといいますか」
なお、天皇杯決勝はサントリーにストレート負けを喫したとあって、「あれはダメです、最悪(笑)。負けを呼ぶ髪型はもうしません」と、どうやらコーンロウは封印したようだ。
アフロヘアのエバデダン ラリー
今年の代表シーズンにおいては特にアレンジすることなく、ボリューム満点のヘアスタイルでプレーしている。聞いたところ、“あの人”からのリクエストを受けているからだそう。
「いったん伸ばします。というのも、石川祐希選手からお達しがきたんです。『来年、髪の毛を結べるようになるまで伸ばして』『切るんじゃないよ?』って。祐希さんはそんな感じで僕に接してくれます。どこか興味津々な様子で、向こうから」
まだまだ成長の真っ只中。パフォーマンスも、そして髪の毛も伸ばし続ける。きたる2025-26シーズンを終えて彼がどんな“勝負ヘア”でいるのか、どうぞお楽しみに。
文/写真:坂口功将
坂口 功将
スポーツライター。1988年生まれ、兵庫県西宮市育ち。
「月刊バレーボール」編集部(日本文化出版)で8年間勤めたのち、2023年末に独立。主にバレーボールを取材・執筆し、小学生から大学生、国内外のクラブリーグ、そしてナショナルチームと幅広いカテゴリーを扱う。雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、バレーボール関連の配信番組への出演やイタリア・セリエAの解説も務める。
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
J SPORTSで
バレーボールを応援しよう!
