人気ランキング
コラム一覧
楠本岳(東レアローズ静岡)
「大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)」を戦う男子の東レアローズ静岡は、8月30日にユニフォーム発表会を実施。2025-26シーズンの新しいユニフォームは、チームカラーのブルーやオレンジが直線と曲線を織り交ぜてデザインされ、新鮮な印象を与える一着となった。
新しさでいえば、今季からは入団2季目の藤中優斗が新たにキャプテンを務める点も1つ。また、2024年パリ五輪のベストミドルブロッカーであるアメリカ代表のテイラー・エイブリルも入団が決まっており、注目を集めている。そして、ルーキーの楠本岳も見逃せない存在だ。
昨季は内定選手としてチームに帯同すると、徐々に出場機会を獲得。やがてシーズンの最優秀新人賞部門においては、得票数こそ6票だったとはいえ、リーグで5位にランクイン(1位は160票でウルフドッグス名古屋の水町泰杜)。上位5人のなかで楠本は唯一の内定選手であったことが、その存在感の高さを示していた。
特筆すべきは、そのアタックセンス。身長は177cmとアウトサイドヒッターとしては決して高い部類ではないものの、跳躍力を活かし、なおかつコースを打ち分けて得点を重ねる。
学生時代から所属校では下級生時からエースを務め、大阪・昇陽中学校、京都・東山高校ではいずれも日本一に貢献している。天理大学でも当然のごとく主力を担い、昨年の西日本インカレではチームを35年ぶりの優勝に導き、自身は最優秀選手賞に輝いた。
その大学時代の最後に強烈なインパクトを残したのが、昨年末の令和6年度天皇杯 全日本バレーボール選手権大会ファイナルラウンドでのこと。
天理大学時代の天皇杯、右はムセルスキー(サントリー)
12月13日の2回戦で、SVリーグのサントリーサンバーズ大阪と対戦すると、身長218cmのドミトリー・ムセルスキーのブロックを前にして、巧みに得点を奪ってみせる。敗れはしたものの、第2セットは25-23で獲得。終わってみれば、これはサントリーがこの大会で唯一落としたセットであり、その立役者となったのが楠本だった。
そうして内定選手として東レ静岡に加入すると、アタックはもちろん、守備でも貢献する姿が。楠本は言う。
「自分自身、コートに入ったときには、サーブレシーブからのプレーが求められていると思うので。サーブレシーブは自信がありますし、それをメインに。SVリーグは相手にビッグサーバーが多いので、まずはキープすることをイメージして、セッターの手元に寄せられるときは、しっかりと寄せていきたいと考えています」
レシーブする楠本岳
そのパフォーマンスに舌を巻いたのは、当時、東レ静岡のキャプテンだった重藤トビアス赳。同じアウトサイドヒッターとして、このように語った。
「オフェンス面に関して、高い決定率を残していますよね。それにディフェンス面でもディグに加えて、ブロックでもとてもいい位置どりで跳ぶので、後ろで守りやすいと感じます」
続けて、重藤は自虐ぎみに「僕と違って、ちゃんと今までバレーボールをやってきたんだろうな、とプレーを見ていて思います。上手だなぁ、って(笑)」とコメント。重藤とて、学生時代から武器としていたサーブもアタックも光るものがあるが…。それはさておき、楠本の実力はSVリーグでも認められたところ。
もっとも、楠本のようなスタイルは、東レ静岡がチーム作りにおいて1つの軸とする部分だ。「日本人アウトサイドヒッターの可能性にトライしたい」とは、昨季から指揮を執る阿部裕太監督。
高い守備力を備え、なおかつ攻撃面でも世界と渡り合う、そんなアタッカーを擁して戦うビジョンをチームとしても描いている。内定時代、楠本はこのように意気込んだ。
「やはり、リーグ全体のレベルが高いので、自分のこの身長は避けられない部分です。だからこそ、サーブレシーブはしっかりとこだわらないといけませんし、リベロと同じくらいの返球率を求めていきたいと思います」
この2025-26シーズンから、東レ静岡の一員としてSVリーグへ本格的に参戦する、小さな巨人。アタックに目を奪われることは必至だが、まずはレシーブから是非とも注目してもらいたい。
文/写真:坂口功将
坂口 功将
スポーツライター。1988年生まれ、兵庫県西宮市育ち。
「月刊バレーボール」編集部(日本文化出版)で8年間勤めたのち、2023年末に独立。主にバレーボールを取材・執筆し、小学生から大学生、国内外のクラブリーグ、そしてナショナルチームと幅広いカテゴリーを扱う。雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、バレーボール関連の配信番組への出演やイタリア・セリエAの解説も務める。
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
J SPORTSで
バレーボールを応援しよう!
