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藤原直也(ジェイテクトSTINGS愛知)
「大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)」男子のジェイテクトSTINGS愛知は9月7日、ホームタウンの岡崎市にて火災予防啓発キャンペーンに参加。そこでは藤原直也と堺爽人が消防本部の一日署長を務める予定となっている。
2人はこの夏、ドイツで開催された「FISUワールドユニバーシティゲームズ(2025/ライン・ルール)」に出場。中でも藤原はエースアタッカーを務め、チームをベスト4へ導いた。
そのワールドユニバーシティゲームズ日本代表では、キャプテンの水町泰杜(ウルフドッグス名古屋)を筆頭に、高木啓士郎(高ははしご高/広島サンダーズ)や、藤原たち2001年生まれの通称「01(ゼロイチ)世代」がチーム年長にあたり、その面々はSVリーグにおいても2024-25シーズンは各チームで即戦力ルーキーとして存在感を示した。
もっとも藤原の場合は、チーム内競争という点に関して言えば、群を抜いて過酷だった。というのも入団1年目の昨季、所属先のSTINGS愛知は藤原と同じアウトサイドヒッターに世界トップクラスの選手を、それも2枚揃えたからである。
トリー・デファルコと藤原
まずはルカルド・ルカレッリ。バレーボール王国のブラジル代表では2010年代から絶対的エースとして君臨し、2016年リオデジャネイロ五輪では金メダルを獲得した実績を持つ。そして、もう1人がトリー・デファルコ。東京2020五輪を前にアメリカ代表で頭角を表すと、強烈な高速バックアタックを代名詞に今や世界トッププレーヤーに名前を連ねている。
そんな2人が、チームメートになる。なおかつSVリーグになって外国籍選手のオン・ザ・コートルールも拡充され、試合では2人同時に出場することが可能だ。場合によっては、藤原の出場機会も限られる可能性だってありえた。その現実に藤原はどう感じていたのか。シーズンが始まってまもなく、そのことを聞くと意外にも淡々としていた。
「特に焦りも不安もなくて。途中出場であっても、『いけ!!』と言われたら、いく準備はしています。そこでチームの勝利に貢献できるようなプレーをしたいと。特に外国籍選手の2人は攻撃力が素晴らしいので。その攻撃を活かすためにも1本目のパス(レシーブ)の質や細かいつなぎの部分に自分自身はフォーカスしています。最初は難しさもありましたが、徐々に慣れてきて、今はチームをうまく回せていると感じます」
高い水準でプレーした藤原
実際、2024-25シーズンは開幕を前に、ルカレッリがコンディション面に不安を覚えていたため、そこでは藤原が先発で器用された。他チームにも世界レベルの外国籍選手が並ぶなか、藤原は攻守ともに高い水準でプレーし、チームのファンや報道陣の中でもそのパフォーマンスを評価する声は少なくなかった。
それはミハウ・ゴゴール監督(現・テクニカルアドバイザー)も同じく。昨季の最中、藤原についてこのように語っていた。
「いつも一生懸命取り組んでくれる姿を誇りに思います。まだ1年前は中央大学の学生でしたが、今はこれだけのスター選手のなかで立派にプレーしています。ときにはミスもありますが、夏場からの練習ではアタックに磨きをかけてきました。
状況の応じたティップやフェイント、それにアタックのコースを変えること、ですね。彼にとって困難な状況かもしれませんが、それでも今のところは(藤原)直也のパフォーマンスに満足しています。彼がこのチームにいることを嬉しく思います」
いざコートに立てば、外国籍選手の2人だけでなく、周りにはセッターの関田誠大(現・サントリーサンバーズ大阪)や、宮浦健人(現・ウルフドッグス名古屋)ら、日本代表の面々がずらり。
藤原は「リーグ戦が始まって最初の何週かは緊張しました」と振り返りつつ、「周りの選手たちが自分がやりやすいような声かけをしてくれたので、徐々に慣れることができました。それにルカ(ルカレッリ)も、本人が試合に出られないときにも代わりに入っている僕に対して、『こうしたほうがいいよ』とアドバイスをくれました。一緒に立つとルカは安定感があるので、僕も安心してプレーできました」と感謝した。
藤原のような立場に身を置く、特に若手選手は今後も出てくるだろう。SVリーグが「世界最高峰リーグ」を目指して、競技レベルが向上していくならなおさらだ。ルーキーイヤーをその世界で過ごした藤原は話す。
「僕にとって一番大きかったのは、普段の練習からあのスピードを体感できたことです。特に打球の速さ。守っていると、デファルコの打ってくるボールがこちらにくるのがめちゃくちゃ速いんです。パワーだって全然違う。それは日本人選手との違いだと感じましたし、映像で見ているのとでは別物。それを肌で体感できたことは、自分の成長につながりました」
ワールドユニバーシティゲームズの藤原
その成果を実感する機会の1つが、ワールドユニバーシティゲームズだった。藤原は2年前の前回大会にも出場していたが、そのときは「経験が少なくて、『あぁ、これが世界かぁ』と。そこで勝負するには自分の力が少し物足りないと感じていました」と明かす。けれども今回は違った。
「リーグを通して、すごい選手たちとやってきましたから。海外に対する怖さは全然ありませんでした。しっかりと自分のプレーを出していけば、通用する手応えを感じています」
その夏を経て挑む、2年目のシーズンがまもなくやってくる。関田や宮浦ら主力選手がチームを去ったとはいえ、ルカレッリやデファルコらは残留。この2025-26シーズンも世界トップクラスのパフォーマンスを見せてくれるだろう。それでも藤原は堂々と口にした。
「昨季はデファルコや(宮浦)健人さんにトスが多く上がっていましたから。そこでトスをもっともらえるようになって、得点に絡んでいきたいです」
「まずはしっかりと試合に出られるように。アウトサイドヒッターには(サントリーから藤中)謙也さんも加わったことで、日本人選手の出場枠はさらに熾烈になるはす。なので、そこを勝ち取れるように、この夏は頑張っていきたいです」
2025-26シーズン、コートに立つ藤原の姿がそこにあれば、これまで以上にたくましく映るはずだ。
文/写真:坂口功将
坂口 功将
スポーツライター。1988年生まれ、兵庫県西宮市育ち。
「月刊バレーボール」編集部(日本文化出版)で8年間勤めたのち、2023年末に独立。主にバレーボールを取材・執筆し、小学生から大学生、国内外のクラブリーグ、そしてナショナルチームと幅広いカテゴリーを扱う。雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、バレーボール関連の配信番組への出演やイタリア・セリエAの解説も務める。
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