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バレーボール コラム 2025年8月25日

NEC川崎に移籍のヌワカロール。2季連続トップスコアラーのターニングポイントとなった試合とは

SVリーグコラム by 坂口 功将
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2季連続得点王のヌワカロール

バレーボールのSVリーグ女子、NECレッドロケッツ川崎に今季から加入したアウトサイドヒッターのシルビア・チネロ・ヌワカロール(イタリア)が、8月12日に26歳の誕生日を迎えた。

ヌワカロールといえば、2023年に来日して東レアローズ滋賀(当時は東レアローズ)に入団。身長180cm・最高到達点330cmの高さを存分に活かしたアタックで得点を量産すると、2023-24、2024-25シーズンと2季連続でリーグのトップスコアラーに輝いた実績を持つ。準優勝で涙を飲んだ昨季ファイナルのリベンジを期すNEC川崎としては、強力な補強となった。

振り返れば昨シーズンは装いを新たに「大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)」が始まり、レギュラーシーズンの試合数も大幅に増加。そのなかでもヌワカロールは、全44試合中43試合に出場すると、昨季の女子選手では唯一となる1000得点の大台を突破してみせる。

最終的に1047得点を叩き出し、2位のロザマリア・モンチベレル(ブラジル/デンソーエアリービーズ)の927得点を大きく引き離して得点王に輝いた。

そのシーズンにおいてターニングポイントとなった試合があった。それがレギュラーシーズンの第11節である。

今年1月4日、Astemoリヴァーレ茨城をホームに迎えて、新年一発目の試合に臨んだ東レ滋賀だったが、そのGAME1ではポイントゲッターのヌワカロールが9得点と沈黙し、ストレート負けを喫する。その敗因を分析し、チームは打開策を見出すことにした。東レ滋賀の林謙人コーチは述懐する。

昨季は東レ滋賀に在籍したヌワカロール

「シッソ(ヌワカロールのコートネーム)は純正オポジットなので、託すボールもハイセット(二段トス)が続いていたんです。それだとさすがに厳しいよね、と。そうではなく、アタッカー4枚のうちの1人として入ってもらうためにも、ファーストテンポの攻撃に変えました」。

「速くしたうえで、なおかつ彼女の打点の高さも活かすように、しっかりとジャンプしてもらい、セッターのジン(田代佳奈美のコートネーム)が、そこにトスを持っていく形をとったんです」

その提案にヌワカロールも、「ハイセットばかりだと私も打ちきるのがなかなか大変だから」と言って承諾した。

もっとも、この第11節の対戦相手だったAstemoは、結果的にシーズンのトップブロッカーに輝くミドルブロッカーのブリオンヌ・バトラー(身長195cm)と、アウトサイドヒッターにマッケンジー・メイ(身長193cm/ともにアメリカ)を並べることで強力なブロックを敷いていた。ヌワカロールの高さを持ってしても、その攻略は困難を極めたのである。

「外国籍のブロッカー2人が立ちはだかるわけですから、どうしてもその上から打たねばと高さを意識しがちだった。そうではなく、助走のスピードを活かすことで、それが相手にとってはいちばん嫌だろうなと考えたんです」

「それにファーストテンポの攻撃に入ってもらうことで、相手からすればほかのアタッカーも見る必要が生じるわけで。結果的にこれが的中しましたね」(林コーチ)

そうして臨んだ翌5日のGAME2では、フルセットの激闘の中、ヌワカロールは両チームを通して最多41得点をマーク。1セット平均8得点と他を圧倒する攻撃力でチームを勝利に導いてみせた。

打点の高さに加えた、速いテンポ。それによってもたらされた効果を実感していたのは対戦相手も同じだった。

当時、Astemoでコーチを務めていた今村駿(現・大阪マーヴェラス)も、「バトラーとマッケンジーの2人がいても決められた。それまでのハイセットだったらブロックも間に合っていたのが、テンポが速くなったことで絶妙に間に合わなくなったんです」と証言している。

そうして東レ滋賀は1つの戦い方を見出したのであった。林コーチは言う。

今季はNEC川崎に移籍するヌワカロール

「やはりシッソは得点力もあるし、その打球もそう簡単に拾えるものではありません。ですが、日本のディフェンス力や組織力、それにSVリーグになってコートに立つ外国籍選手の数が増えたことで、スパイクを決めるのも容易ではなくなった」

「シーズンも中盤になれば、どのチームも1本目のボールをシッソに捕らせるなど、彼女をつぶしにきていましたからね。だからこそ、チームとしてはまわりのサイドアタッカーに頑張ってもらいたいと考えていました。ちょうどその兆しが見えていた時期でもあったんです。そうしてチームも上り調子になって、シッソもさらに決められるようになりました」

その後、チームは2月に入って最大12連勝を遂げて、チャンピオンシップ進出に大きく前進。ヌワカロールも2季連続リーグ得点王へ加速したのであった。

今年1月5日にチームが下した1つの決断。その試合を振り返ってもらった際、林コーチと今村コーチ両人が口をそろえたことがある。それを最後に。

「いくら速くしたい狙いがあったとはいえ、その際にシッソが打てる状態をつくる必要がありますし、打ち方まではコントロールできません。そこはトスでカバーするしかない。なので、あれはセッターが頑張ったところですね」(林コーチ)

「相手チームながら、あの試合のキープレーヤーだったのは、まぎれもなくジンです」(今村コーチ)

チームの提案をすぐに実行してみせたベテランセッターが、そこにはいた。田代佳奈美こそ、影の立役者だったのである。

文/写真:坂口功将

坂口 功将

スポーツライター。1988年生まれ、兵庫県西宮市育ち。
「月刊バレーボール」編集部(日本文化出版)で8年間勤めたのち、2023年末に独立。主にバレーボールを取材・執筆し、小学生から大学生、国内外のクラブリーグ、そしてナショナルチームと幅広いカテゴリーを扱う。雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、バレーボール関連の配信番組への出演やイタリア・セリエAの解説も務める。

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