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大山遼(大阪マーヴェラス)
2024-25 大同生命SVリーグのチャンピオンシップ、ファイナルでは、対戦相手のNECレッドロケッツ川崎をまるで寄せつけずに優勝を飾った大阪マーヴェラス。
キャプテンの田中瑞稀、リーグMVPの林琴奈の両エース対角が攻守両面で安定感をもたらし、オポジットのリセ・ファンヘッケ(191cm)とミドルブロッカーの蓑輪幸(195cm)の高身長2人が中心となってNEC川崎のエース佐藤淑乃のアタックをはね返す。
セッター東美奈のトスワークに、リベロ西崎愛菜のディグとつなぎ…。コート上では誰もが自分の果たすべき役目をまっとうする、それが大阪MVの強さだった。
そして、もう1人。特筆すべきはミドルブロッカーの大山遼の存在だろう。筑波大学を卒業して臨んだ大阪MVでのルーキーシーズン、堂々と彼女はファイナルの舞台に立っていたのである。
「緊張はしていました、もちろん(笑)。緊張はしたのですが、ファイナルに関しては試合の展開もあって、攻める気持ちでプレーできていたと思います」
ポジションのミドルブロッカーでいえば、アタックとブロックが主なミッションになるわけだが、このファイナルで大山が光らせたのは、サーブとレシーブだった。
5月2日のGAME1におけるサーブの「効果」の本数は、両チームを通して最多となる12。「まずは『相手を崩す』ことを意識していました」と、サーブ効果率は23.5%に及んだ。特に第2セットは7-6からサーブ順が回ってくると、サービスエースを含めて9度のブレイクに成功し、このセットを決定づけた。
また、サーブを打った直後もコート上では、相手のアタックを拾い上げるなど献身的な動きも見せた。
「自分が後衛に入るときは1本でも2本でも多くボールを拾って、自分のブレイクにつなげたいと考えています。ディグは強みでもあるので。そこで少しでも貢献したい思いでした」と自身の持ち味を発揮してみせたのである。
GAME2でもスタメンとして出場し、「少しでも」どころか、目一杯にチームの優勝に貢献。ルーキーながらプレーしたファイナルの舞台は「経験という点でも自信になりました」と大山は胸を張る。
もっとも大阪MVのミドルブロッカーでいえば、2023-24シーズンにリーグのブロック賞とアタック賞の個人二冠に輝いた蓑輪や、日本代表への選出歴を持つ小川愛里奈ら実力派選手がそろう。それはチーム内競争の激しさを表しているわけだが、「1年目から試合に出たい気持ちは、めっちゃ強かったです」と少し照れくさそうに大山。
「同じ高校の先輩(小川)も、蓑輪選手もいるなかで、やはり少ない枠を競う必要がありました。ですが、いざコートに入るからには、しっかりと自分が活躍したい思いは入団するときからずっとありました」
そのためにも大事にしていたことがある。
「例えば、各プレーの決定率でいえば他の選手の方が高いかもしれません。ですが、自分がコートに入ることで安心する、と周りに思ってもらえるように1年目は頑張っていました。自分の中で『安定したプレー』は軸として持っていましたね」
ユニバ日本代表でも活躍した大山遼
その成果の証しが、まさにファイナルの舞台だったというわけである。そのルーキーシーズンを終えて約2ヵ月後、大山はワールドユニバーシティゲームズ(WUG)日本代表に名前を連ねていた。
ドイツで開催される「FISUワールドユニバーシティゲームズ(2025/ライン・ルール)」に参加するためであり、自身にとっては2年前の前回大会に続いての選出となる。ただ、活動にあたっての心境は違った。
「大学生で参加した前回は私の中で『挑戦』という感覚が強かったんです。ですが、それから2年が経って、自分がどれだけ成長したかを確かめたいと言いますか…。前回よりも何かしら自分自身が得たものは必ずあると。それを前回以上に発揮したいと考えています。そうですね…。どこか不思議な気持ちです(笑)」。
「チーム内の立場でいえば前回は一番年下でしたが、今回は一番年上。それに、この前までマーヴェラスではルーキーでしたから。久しぶりの年上という立場が少し新鮮です」
いざ、大会本番では宮部愛芽世(大阪MV)や、石倉沙姫(デンソーエアリービーズ)ら、同期たちと最年長世代としてチームを牽引。
日本の銀メダルに貢献
予選グループ戦のチェコ戦(現地7月18日)ではチーム最多5本のブロックポイントをマークすると、決勝のイタリア戦(同23日)では、宮部の最多13得点に続く10得点をあげる。
優勝にはあと一歩及ばずとも、前回大会に続く銀メダル獲得の立役者となる。何より大会自体が『大学生世代のオリンピック』とあって、現役大学生がチームの半分以上を占めるわけだが、そのなかでも安定感、そして安心感をもたらす存在だった。
この直近2年間を振り返っても、筑波大学4年生時に全日本インカレを制し、翌年にはルーキーとしてSVリーグ優勝をレギュラーの1人として味わった。得てきた『何かしら』は決して目には見えずとも確かにそこにある。そして、輝かしい成果をその手にもたらしているのだ。
文/写真:坂口功将
坂口 功将
スポーツライター。1988年生まれ、兵庫県西宮市育ち。
「月刊バレーボール」編集部(日本文化出版)で8年間勤めたのち、2023年末に独立。主にバレーボールを取材・執筆し、小学生から大学生、国内外のクラブリーグ、そしてナショナルチームと幅広いカテゴリーを扱う。雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、バレーボール関連の配信番組への出演やイタリア・セリエAの解説も務める。
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