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バレーボール コラム 2025年7月30日

星城高校、石川祐希ら偉大な先輩たちがつけた「1」を背負う辻淳志の決意。インターハイ バレーボール男子

バレーボールコラム by 田中 夕子
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偉大な先輩たちがつけた「1」を背負う辻淳志

ピンチはチームにとって新たな引き出しと武器を増やすためのチャンス。3回戦進出を果たした星城高校(愛知)の主将、辻淳志(3年)はまさに今、実感している。

「新チームになってから、エース頼みにならないバレーをやってきた。それがこういう大きな大会で、試されるじゃないですけど、練習してきた成果を発揮して、石田(瑛城、3年)と竹川(翔太、3年)で点を取ることができた。今日(30日)の試合ではすごく成長している、と実感できたのがチームにとっても収穫でした」

インターハイ予選リーグでフルセットの末に鳥取中央育英高校(鳥取)に勝利、決勝トーナメントへコマを進めた星城は、2回戦で高知商業高校(高知)と対戦した。

ベンチから声援を送る柏崎祐毅

昨年、一昨年の春高でも活躍した大エースの柏崎祐毅(3年)が欠場するアクシデントにも見舞われたが、セッターの辻が「成長を実感した」という石田、竹川に加え、北田向(1年)の活躍もあり、終盤の逆転劇で接戦を制し、ストレート勝ちを収めた。

今季の日本代表登録選手にも選出された深津英臣(ウルフドッグス名古屋)が主将を務めた2008年にインターハイを初制覇。現在、日本代表主将の石川祐希(ペルージャ)を擁した2012、13年には連覇を達成。

高校主要タイトル三冠を2年続けて制し、六冠を達成した竹内監督も「いろいろなことが起こるのがインターハイ」と苦笑いを浮かべる事態ではあるが、辻が言うように新チームが始動してからはチーム力をさらに高めるべく、大エースの柏崎に依存しない戦い方を構築すべく、練習を重ねてきた。

その中心で試行錯誤を繰り返してきたのが、セッターでもある辻だ。中学まではアウトサイドヒッターとしてプレーしたが、星城に入学後、セッターへ転向した。189センチの高身長はセッターとして将来を見据えても、1つの武器になる。

高校時代に石川のセッター転向も試みた竹内監督や、石川と高校時代にセッターとしてコンビを組んだ中根聡太コーチの指導のもと、成長を重ね、U16日本代表にも選出された。

インターハイでも高い位置でのセットアップから、サイドだけでなくミドルも絡めたコンビは星城の攻撃力をさらに引き出しているのだが、辻自身は「悩むことばかりだった」と振り返る。

「スパイカーの経験があるので、『自分だったらこうやって点を取るのに』とか、『何でこうしてくれないんだろう』というモヤモヤがずっとあって。

でも、スパイカーにはスパイカーそれぞれの考えや主張があるから、うまくいかないことも多いし、ぶつかることもある。僕も正直、何でだよ、と思うこともありました。

でも、竹内先生からは『キャプテンの仕事が全然できていない』と指摘されたり、セッターとしても、『スパイカーにワガママを言われてもそれを飲み込んで、変えて行かないとチームはよくならない』と言われてその通りだな、と。

自分自身、どうやってこのチームで勝つことができるか。ずっと追求しているんですけど、どこかできつい時は柏崎に頼ってもいたんです。

チームを鼓舞する辻

だから今回(インターハイで)、不安もあるけど、うちのスパイカーは柏崎だけじゃないし、僕自身も『柏崎に上げれば勝てるのに、何で上げないんだ』と言われるのは嫌なので、この大会ではこれまで以上に、仲間を信じて上げ続けるだけだと思っています」

柏崎に代わり、高知商戦でスタメンに抜擢されたのが北田だ。竹内監督が「まだパワーはないけれどテクニックがある」と称する北田の技で得点を重ねたが、リードした状況から追い上げられたり、相手にリードされた劣勢時はプレッシャーもかかる。

コートに立てば学年は関係ないとはいえ、経験は違う。サーブレシーブでも狙われ、なかなか思い通りのプレーができずにいた北田に対しても、辻は積極的に声をかけ続けた。

「1年生で試合に出るだけでも不安だと思うし、今日は柏崎に代わって出たので、なおさらプレシャーがあると思っていました。だから、北田が安心して伸び伸びプレーできるように『大丈夫だ、お前が失点しても周りがいる。俺らがいるから』と言い続けた。

チームが勝てるトスを上げ続ける辻

僕もあまり調子がよくなくて迷惑をかけたんですけど、チームが勝てるトスを上げられれば勝てる。ダメな時ほど、自分が崩れちゃダメだと思いながらプレーしました」

7月31日の3回戦は東海大札幌高校と対戦、勝利すれば準々決勝では今年1月の春高で敗れた東福岡高校と対戦する可能性もある。どんなメンバーで臨むかはまだわからない、と言いながらも、どこが相手でも、誰がコートに立っても勝てる自信がある。辻はきっぱりと言い切る。

「チャンスをつかみ取るのは自分たち。どのメンバーでも勝てるようにコントロールするのが自分の仕事なので、1試合ずつ成長していきたいです」

かつて全国を制した先輩たちがつけた「1」を背負うが、プレッシャーはない。

「石川祐希さんや、中根先生を指標にするのではなく自分の理想、自分のチームを作っていきたい。自分たちが結果を残すことができれば、それが完成形だと思うので、このチームで勝つために、もっともっと追求していきたいです」

仲間を信じて、自分を信じる。ピンチは、強くなるためのチャンスだ。

文/写真:田中夕子

田中夕子

田中 夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。WEB媒体、スポーツ専門誌を中心に寄稿し、著書に「日本男子バレー 勇者たちの奇跡」(文藝春秋)、「高校バレーは頭脳が9割」(日本文化出版)。「夢を泳ぐ」「頂を目指して」(徳間書店)、「絆があれば何度でもやり直せる」、凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること」(カンゼン)など、指導者、アスリートの著書では構成を担当

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