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バレーボール コラム 2025年7月27日

染野輝、同期の高橋藍からの学びとユニバ日本代表で見せた『雰囲気を変える力』

SVリーグコラム by 坂口 功将
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ユニバ代表で日の丸を付ける染野輝

初めて日の丸をつけた中学生時代から、社会人になった今も変わらない。コート上ではガッツあふれるプレーを繰り出し、アップゾーンでは声を張り上げて盛り上げる。そのスタイルはさらに一段と極まった印象を受けた。

バレーボール「大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)」男子、サントリーサンバーズ大阪に所属する染野輝(そめの・ひかる)はこの夏、ドイツで行われた「FISUワールドユニバーシティゲームズ(2025/ライン・ルール)」のバレーボール競技に男子ユニバーシティゲームズ日本代表(以下、ユニバ日本代表)として参加した。

自身にとっては2年前の前回大会に続く、ユニバ日本代表の活動。チームとしての結果はもちろん、染野は1つの覚悟を持って臨んでいた。

「僕自身はやはり、アピールの場だと一番に考えています。サンバーズでこの1年間、きつい…、悔しい経験をしているので。ここでも明確な結果が求められてきますし、少しでもアピールできたらと思うんです」

昨年春に順天堂大学を卒業して、入団したサントリーで過ごしたルーキーイヤー。その2024-25シーズンにおいて、チームは大型補強を敢行した。

とりわけ染野のポジションであるアウトサイドヒッターには、今や文字どおり日本を代表するバレーボールプレーヤーとなった高橋藍(高ははしご高)や、強豪国のポーランドでエースを張る実力者のアレクサンデル・シリフカを加えた。昨年11月、チームの練習拠点で染野と遭遇した際、その口から声が漏れた。

「すごいっスよね…」

染野にとってはアウトサイドヒッターとして、精度の高いレシーブから攻撃に参加していくスタイルも、世界で名だたるその2人と被っていた。「1年目から試合に出られたらいいな…」。そんな願望を抱くだけで精一杯だった。

「軽い気持ちだったのが正直なところです。でも、そうではなく、途中からは2人を『見て学ぼう』というマインドに変わりました。もちろん、レギュラーを目指す気持ちはありましたが、藍やオレク(シリフカ)のプレーや立ち居振る舞い、声かけまで学ぶようにしたんです。それを2年目、3年目に活かしていくんだと」

そこで気づいたのが、チームの雰囲気を変える力、だった。

「アウトサイドヒッターとしてコートに立ったときに、2人は雰囲気を変えることができる力を持っているなと、一番に感じました。やはり、藍やオレクも積極的に周りへ声をかけていますし、それも僕も真似しようと思っていました」

海外勢の高いブロックに打ち込む染野輝

加えて、高橋からはプレーに関するアドバイスも授かっていた。その1つが、高いブロックへの対処方法。例えばサントリーでチーム練習をする際には、身長218cmのドミトリー・ムセルスキーのブロックが立ちはだかる場面もあるわけだが…。

「もう、どこに打ったらいいかわからない、って感じですよね(笑)。でも、そういうときに藍が声をかけてくれるんです。『相手のブロックが完成する前に打てば抜けるから気楽にいきな』って」

「僕やBチームのメンバーに対しても、『こうやったらいいよ』と伝えてくれるので、同期ですけれど、僕個人としてはお手本になるプレーヤーであり、目指さなければと考えています」

『生きる教本』とも言うべき同期生がいることは、染野にとって財産になった。そうして臨んだ今回のワールドユニバーシティゲームズでは、まず雰囲気を変えることを実践した。

ドイツの現地時間7月18日、男子ユニバ日本代表にとって初戦となるチリ戦で、染野は途中出場を果たす。第2セットの終盤、そして第3セットは開始時からコートに立つと、持ち前のガッツをプレーに昇華させた。

チームの雰囲気を変える染野輝

「第1、第2セットを比較的楽にとることができた中、メンバーを変えた第3セットの序盤はシーソーゲーム気味な展開で、流れも少し悪かったので。何か1つでも変えなければいけないと考えていました。となると、一番わかりやすいのは雰囲気を変えることだな、って」

「そこを僕やリベロの高木啓士郎((高ははしご高/広島サンダーズ)、中島健斗(VC長野トライデンツ)が一緒になって盛り上げていこうという気持ちでプレーしていました」

結果としてストレート勝ちを収めたため、出場時間としては物足りなさもあったに違いない。けれども、染野は胸を張った。

「確かに、もうちょっとプレーしたかったかも。でも、今の自分に与えられた仕事はそういうところなので。それにこの先、キャプテンが欠ける事情もありますから、それに対しても準備をしていかなければならない。僕としては自分の仕事を100%すること、それが大事です」

その言葉にある通り、キャプテンを務めた水町泰杜(ウルフドッグス名古屋)はビーチバレーボール競技に参加するため、インドアでのプレーは予選グループ戦までと決まっていた。そうして水町がチームを離れたあとは、染野がキャプテンマークをつけることに。気持ちを全面に押し出し、チームをベスト4へ導いた。

一方、アタッカーとしては海外勢の高さやパワーに苦しむ場面も少なからず。それはこの先、トップカテゴリーで戦っていくためには必要な部分であり、染野自身も「このユニバ日本代表での経験を成長の糧にして、身につけていきたい」とあらためて強調した。

染野輝、新シーズンはヴォレアス北海道で戦う

サントリーで過ごしたルーキーイヤーを経て、この夏には日の丸をつけて国際大会を戦い、そして2025-26シーズンは期限付き移籍で、ヴォレアス北海道でプレーすることが発表された。そのリリースでは「1年後、サンバーズファンの前で少しでも成長した姿を見せられるように努力していきます!」とコメントしている。

学びの時間は続く。そうして一歩ずつ、レベルアップしていくのである。

文/写真:坂口功将

坂口 功将

スポーツライター。1988年生まれ、兵庫県西宮市育ち。
「月刊バレーボール」編集部(日本文化出版)で8年間勤めたのち、2023年末に独立。主にバレーボールを取材・執筆し、小学生から大学生、国内外のクラブリーグ、そしてナショナルチームと幅広いカテゴリーを扱う。雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、バレーボール関連の配信番組への出演やイタリア・セリエAの解説も務める。

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