人気ランキング
コラム一覧
岩澤実育(埼玉上尾メディックス)
『2025-26 大同生命SVリーグ』は男女ともにレギュラーシーズンの日程が発表され、各チームはすでに新体制をスタートさせている。
そこには国内移籍の選手もいれば、新たに来日する外国籍選手の名前も。と同時に、2024-25シーズンかぎりで退団、さらには現役引退した選手の名前がないことにふと寂しさを覚える。
女子の埼玉上尾メディックスも、そうしたチームの1つ。このオフはAstemoリヴァーレ茨城からオクム大庭冬美ハウィが移籍加入。
また、昨季は社会人クラブチームでプレーしていた入澤まいの国内トップリーグへのカムバックや、ベテランの内瀬戸真実の現役復帰といった新戦力に関するトピックスが豊富な一方で、チーム在籍は12シーズンを数えたリベロの山岸あかねがユニフォームを脱いだ。
引退した山岸あかね
コートネームの『キラ』の愛称で親しまれ、人柄のよさとコート上でのキャプテンシーでチームメートから絶大な信頼を寄せられた山岸。リーグでは通算230試合出場を突破し、女子日本代表としては昨年夏のパリ五輪にリザーブメンバーとして帯同した。その後、現役引退を発表し、2024-25シーズンがラストイヤーとなっていた。
功労者の決断に寂しさを隠せずにいたチームメートは数知れず。山岸と同じポジションの岩澤実育もそうだった。昨シーズンの半ば、ふとこんな思いを明かしていた。
「どの選手も次のシーズンがあるかどうかは分からないですし、それは自分もそうです。おそらく全員が『今のシーズンが最後だ』という思いでプレーしていると思います。キラさんがリベロで出場して、そこに私はリリーフサーバーとしてコートに入る機会があったからこそ、そこで学べることはたくさんありましたし、一緒に頑張っていきたい気持ちでいます」
岩澤は東京の名門・下北沢成徳高校を卒業後、埼玉上尾に入団。だが、山岸が守護神を務めているとあって、なかなか出場機会は巡ってこず。それでも「少しでもチームに勢いを引き寄せられるように」とリリーフサーバーで投入されては、効果的なサーブを放った。
そうして徐々にリベロとしてプレーする時間帯も増えていき、2024-25シーズンはレギュラーに定着。サーブレシーブ成功率52.7%でリーグ全体2番目の成績を残した。
そうしたなかでも本人の言葉にあったとおり、ときにはリリーフサーバーで投入され、そのまま後衛でプレーした際に、山岸が同じコートにいると、その存在の大きさを感じずにはいられなかったという。
岩澤実育(左)と山岸あかね(中)
「自分とキラさんの2人が入ると、お互いの守る範囲についてはまったく気にしなくていい、と言いますか。自分と反対側のエリアに関しては全部、キラさんが捕ってくれるという安心感がありましたし、その分、自分は思いきって周りの選手をカバーしにいくことができました」
山岸と一緒に戦うことができる最後のシーズン。岩澤は自身の成長意欲を、偉大な先輩との別れという寂しさの上に覆い被せていた。
「チームからいなくなってしまったら、聞けることも聞けないので。今のうちにたくさん見て学んだり、試合中にもアドバイスをもらうのですが、そうした時間を増やして、キラさんの技術を吸収できればいいなと思うんです。キラさんになりたい、わけではありませんが、キラさんみたいな存在になれるように頑張っています」
山岸が女子日本代表に名前を連ねたように、岩澤も今年度は2年ぶりに代表へ招集されると、ネーションズリーグへの出場を果たしている。一方で、5月10日にチーム主催で引退試合を設けられた山岸はその後、埼玉上尾とアンバサダー契約を締結したことを発表し、今も練習にはその姿がある。
さらなるレベルアップを目指す岩澤にとって、山岸のそばで学びを得られるまたとない時間はしばらく続きそうだ。
文/写真:坂口功将
坂口 功将
スポーツライター。1988年生まれ、兵庫県西宮市育ち。
「月刊バレーボール」編集部(日本文化出版)で8年間勤めたのち、2023年末に独立。主にバレーボールを取材・執筆し、小学生から大学生、国内外のクラブリーグ、そしてナショナルチームと幅広いカテゴリーを扱う。雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、バレーボール関連の配信番組への出演やイタリア・セリエAの解説も務める。
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
J SPORTSで
バレーボールを応援しよう!
