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藤中颯志(サントリーサンバーズ大阪)
「大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)」のチャンピオンシップは4月25日(金)からセミファイナルに突入する。レギュラーシーズンを2位で通過した前年度リーグ王者のサントリーサンバーズ大阪は、ホームの『Asueアリーナ大阪』で、3位のウルフドッグス名古屋を迎え撃つ。
そのWD名古屋の強みの1つがサーブ。効果率17.7%でトップサーバーに輝いたオポジットのニミル・アブデルアジズを筆頭に、効果率12.2%で個人ランキング8位のセッター深津英臣、11.9%で同9位の新人アウトサイドヒッター水町泰杜といった面々が効果的に相手のレシーブを崩して勝機を手繰り寄せる。なお、チーム全体でも効果率11.8%はリーグトップの数字だった。
時に試合の流れを一気に引き寄せるサーブで優位に立たせないことが、サントリー大阪にとってまずは鍵となるだろう。サーブレシーブに入るアウトサイドヒッターと、リベロはその重責を担うことになる。
サントリーで守護神を務める藤中颯志
その点において、サントリーで守護神を務めるのが在籍3季目の藤中颯志。チームのキャプテンを務める藤中謙也、東レアローズ静岡の藤中優斗に続く末弟であり、アタッカーの兄2人と異なりリベロとしてプレーしてきた。
年数でいえば若手の部類に入るとはいえ、そのキャリアで積んできた経験は豊富。専修大学時代に内定選手として入団した、VC長野トライデンツでは1部・2部の入れ替え戦に出場し、熾烈なサバイバルを制して1部残留に歓喜した。
卒業後は長兄と同じサントリーに入団すると、2023年には世界クラブ選手権に出場し、そこでは銅メダル獲得に貢献している。そのときの経験を、本人はこう振り返る。
「大会期間は1週間ほどでしたが、自分の中で本当に成長できた時間でした。それまでも海外の選手と対戦する機会はありましたが、まさに世界のトップクラブと戦うこと自体は違った刺激になりました。価値観が一段と広がった感覚でした」
2022年からは日本代表にも登録され、B代表で国際大会に出場した経歴も。同じリベロでいえば日本代表に名前を連ねる大阪ブルテオンの山本智大、ジェイテクトSTINGS愛知の小川智大は世界でもトップクラスの評価を受けており、彼らの背中は藤中にとって指標だ。
「とにかくそこにまずは追いつくことを。追い越して、次の五輪の選考に自分も食らいつけるようなリベロになりたいです」とにらんでいる。
そのためにも今はレベルアップに励む日々。特に、この2024-25シーズンはSVリーグとなって「世界最高峰のリーグ」を掲げる中、各国から強力なサーブの打ち手が来日してきた。その現実に対して、シーズンの最中、藤中はどこかうれしそうにこう話した。
「それ自体はとても楽しみにしていました。日本のリーグで高いレベルの外国籍選手がプレーする。そのサーブを受けられることによって、リベロとして成長できていると実感します。なので、楽しくバレーさせてもらっていますね」
WD名古屋とのセミファイナルでは、ときに時速130キロを超えるニミルの弾丸サーブが襲ってくる。それを返したとき、藤中の瞳はさらに輝いているはずだ。
一方で、藤中は今季の初戦、それもSVリーグ開幕と華々しく飾られた東京体育館のコートに姿はなかった。というのもシーズン開幕を前にコンディション不良に見舞われ、出場登録こそされていたがプレーは叶わなかったのである。
喜入祥充(サントリーサンバーズ大阪)
その代役を務めたのが、在籍7季目の喜入祥充だった。その開幕戦は大阪Bに敗れる結果に終わったが、リベロとしてフル出場を果たした試合後の喜入の表情は晴れやかだった。
「正直めちゃくちゃうれしかったです。いい舞台でやらせてもらえる。よっしゃ!!と思っていましたから」
喜ぶことができた背景には、これまで自身が歩んできたキャリアがある。早稲田大学を卒業後、チームにはリベロとして入団したものの出場機会をつかめず。ときにアタッカーとして、ときにリリーフサーバーとしてコートに立っていた。もっとも大阪の名門・大塚高校時代はハイジャンパーとしてうならせたアタッカーだったわけだが。
リベロとしてポジションをつかめない当時は、「自分でも、何してんねんやろうな、と言いますか…。もちろん、チームが勝つために自分がやれること、自分に与えられる役割をまっとうする気持ちでしたが、いろんな起用法でズルズルと過ごしてきました」とは本人の述懐。
喜入祥充は開幕戦出場を果たした
それゆえに今季の開幕戦では「これまでの道のりが思い描いたものではなかったですけれど、自分が目指したポジションに辿り着くことができたので。リベロでプレーできてよかったと思えます」と胸を張ってユニフォームを着ることができたのである。
「もう跳ぶのは疲れるので(笑)。地に足をつけて頑張っていますよ!!」と言って白い歯をのぞかせた喜入は藤中同様、SVリーグという環境の中で己を磨いている。
「いろんな外国籍選手が対戦相手にいますし、自分たちのチームにも。そのおかげで練習自体のそもそものレベルが高いですし、そこでやらせてもらっているからこそ、自信につながっています」
藤中が復帰を果たしてからは控えに回ることになったが、それでも開幕戦のように不測の事態はいつやってくるかわからないからこそ、準備を怠ることはない。と同時に、本人にしか抱けない、こんな思いもある。
「実はチームで大阪出身の選手が自分だけなんです。関西人という括りで言えば、(高橋)塁も藍(高ははしご高)もいるのですが。出身の北摂地方でバレーボールをして、サントリーという大阪のチームに帰ってきた唯一のメンバーなので。『大阪の選手』としてどんどん盛り上げていきたいと思います」
サントリーサンバーズ大阪のリベロ2人
今季からチーム名に地域を冠したサントリーサンバーズ大阪。チャンピオンシップのセミファイナルを戦う『Asueアリーナ大阪』はホームゲームを開催してきたアリーナであり、またファイナルの会場は東京のため、これが今季最後の大阪での試合になる。
いざコートに立てば、喜入は地元出身の選手として抱く格別な思いをプレーに昇華させるに違いない。
文/写真:坂口功将
坂口 功将
スポーツライター。1988年生まれ、兵庫県西宮市育ち。
「月刊バレーボール」編集部(日本文化出版)で8年間勤めたのち、2023年末に独立。主にバレーボールを取材・執筆し、小学生から大学生、国内外のクラブリーグ、そしてナショナルチームと幅広いカテゴリーを扱う。雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、バレーボール関連の配信番組への出演やイタリア・セリエAの解説も務める。
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