入団2季目の足立溜奈（ヴィクトリーナ姫路）がSVリーグ初スタメン。兵庫県出身選手として口にした地元の子どもたちへの思い

足立溜奈（ヴィクトリーナ姫路）

3月16日（日）に行われた「大同生命SV.LEAGUE（SVリーグ）」女子のヴィクトリーナ姫路vs.デンソーエアリービーズは、姫路の大物ルーキー秋本美空が出場3試合目にして待望の初得点を挙げて、さらには同期の河俣心海も初アタックで初得点を記録するなどフレッシュな面々が注目を集めた。

と同時に、その試合で見逃せない活躍を披露したのが、こちらは入団2季目のミドルブロッカー、足立溜奈である。

自身のSVリーグ初スタメンをアヴィダル・セリンジャー監督から告げられたのは試合当日の朝。これには本人も「いきなり『今日入るよ』と言われて、いろんなことを考えて試合に臨みました」と振り返る。

起用方法はセッター対角。というのも、チームはその1週間前にオポジットでプレーしていた田中咲希が負傷離脱し、前日の15日に14得点をあげて勝利に貢献したアナ ルイーザ フヂゲルもコンディションを鑑みて欠場することになっていた。そこで、これまでも2枚替えで投入されていた足立に白羽の矢が立ったわけだが、セリンジャー監督は自信を持って送り出していた。

「デンソー戦にむけた1週間の練習で、足立の調子がとてもよく、準備ができているなと手応えを感じていました。常々、『試合の本番では練習してきたことが必ずそのまま出るからね』とは選手たちに話していますし、足立には『とにかくベストを尽くすんだ』と伝えました」。

今季初スタメンの足立溜奈（ヴィクトリーナ姫路）

そうして起用された足立は持ち前のパワフルなスパイクをライト方面から放つ。セット途中で交代する場面もあったもの、全4セットで開始時からコートに立ち、終わってみれば秋本の21得点に続く15得点をマークした。

「特にスパイクの打点を下げないことを心がけていました。練習では高い打点から自分の得意なコースに打つことを意識してきましたし、今日の試合では相手のレシーブが届かないエリアや、ワンタッチされても追いつけないようにボールが飛んでいく打ち方、それにブロックのないコースにきれいに決めることができました」とは試合後の本人の言葉。

デンソー相手に連勝とはならなかったが、セリンジャー監督も「足立には『今日はここが少し物足りない』という点がまったくありませんでした。彼女のパフォーマンスに心から満足しています」とほめちぎった。

監督が称えたのはプレー面に加えて、この日が満員の観客の中で行われた試合だったということに対しても。「フル出場で、それも2000人のお客さんの中でプレーするのは、彼女にとって初めてのことだったでしょう。練習とはまるで違う環境下だと思いますが、そのなかで見事にプレーを成し遂げました」とセリンジャー監督。

もっとも、足立にとっては今季初のスタメン出場を地元・兵庫県で果たしたことが、さらに特別なものになった。

「シンプルにうれしかったです。なかなかユニフォームをホームゲームで着る機会がなく、それでも知り合いや両親が見にきてくれたので。今日は2000人以上のお客さんに来ていただいたなかで活躍できましたし、試合に使ってもらえたことで、地元でバレーボールを頑張っている子どもたちに『あの舞台に立ちたい！』と思ってもらえる機会になったかなと」。

そんな思いでプレーしていた足立。姫路を拠点に地域に根ざして活動するチームにとって、地元出身の選手が活躍するといううれしいトピックだった。

文／写真：坂口功将