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男子シングルは絶対王者マリニンが4連覇&個人14連勝を達成!女子はグレンが3連覇で念願の初五輪の切符を掴む | 全米フィギュアスケート選手権2026 男女シングル レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部3連覇を果たしたアンバー・グレン
4年に1度のオリンピックイヤーだからこそ、タイトル争いと並行して、「チームUS」入りをかけた激しい争いも繰り広げられた。ベテランたちは誇りを胸に戦い抜いた。悲しみや苦しみを乗り越えた先の、渾身の演技も光った。最終的に男女とも、全米の表彰台に立った3選手が、それぞれミラノ五輪の出場権を手にした。
女子
「Fake it till you make it(できるようになるまで、できるふりをしろ)」。こう自らを奮い立たせ、戦い続けてきたアンバー・グレンが、表彰台の最上段を守った。女子シングルとしてはミシェル・クワン以来となる3連覇。なにより26歳にして、生まれて初めてオリンピックへの切符もつかんだ。
「今の私にたどりつくまで、10年かかりました。でも、この場にいられること、この夢を生きられていることに、心から感謝しています。つらい時期があったからこそ、なおさらそう思えるのです」(グレン)
ショートプログラム(SP)は「人生最高の出来」だった。冒頭のトリプルアクセルを鮮やかに決め、続く2つのジャンプ要素も完璧に着氷。マドンナの「ライク・ア・プレイヤー」に乗せたキレのある演技で、ステップ、スピンはいずれもレベル4と高いGOE出来栄え点を獲得した。83.05点という、全米女子歴代最高得点を叩き出した。
首位で迎えたフリースケーティング(FS)では、朝から恐ろしい緊張感に襲われた。それでも「Beleave and Breathe(信じて深呼吸)」を胸に、グレンは氷に立った。
配信情報
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全米フィギュアスケート選手権 2026 女子シングル ショートプログラム
配信日時 : 2026年1月8日(木)午前10:25 ~
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全米フィギュアスケート選手権 2026 男子シングル ショートプログラム
配信日時 : 2026年1月9日(金)午前10:15 ~
トレードマークのトリプルアクセルは4分の1回転不足を、常々課題としてきたトリプルループは回転不足と判定され、「ああすればよかった」「今度はこうしよう」という思いが頭の中を駆け巡ったという。それでも昨シーズンから滑り込んできた「I Will Find You」を通して、グレンは最後まで自信や希望を力強く体現し続けた。
FSもやはり150.50点という大きな得点で評価され、総合得点はISU非公認ながらも自己ベストの233.55点に到達。喜びの涙を、他の2人の五輪代表……アリサ・リュウとイザボー・レヴィトと分かち合った。
「自分の身体と向き合い、氷の感覚をつかもうとしました。そうしているうちに、長年の経験が、自然と生きてきたんだと思います。自分の足でしっかりと乗り越えることができました。心身両面を強化してきた努力が実を結び、本当に嬉しいです」(グレン)
現世界チャンピオンであり、今季のGPファイナル覇者であるリュウにとっても、昨季から滑り続けるSP「プロミス」では「これまでで最高に好きな演技」ができた。
一方のFSでは、新たな「レディ・ガガ・メドレー」をお披露目。シーズン初戦は異なるガガ楽曲を組み合わせた構成で臨んだが、どうもしっくりこなかったという。そのためGPシリーズは昨季と同じ「マッカーサー・パーク」で転戦しつつ、今大会へ向け急ピッチでプログラムを作り直した。衣装もこれまでのゴールドから、格上のプラチナカラーに変わった!
真新しいプログラムだからこそ、いまだ完璧とは言えなかった。2本ジャンプで4分の1の回転不足を取られ、SPではオール9点台だった演技構成点(PCS)も、FSでは「構成」でやや伸び悩んだ。「滑った感触は良かった」としつつも、「映像で見直す必要がある」とリュウは語る。SP2位から、FSは3位と一歩後退。トータルでは2年連続の2位で大会を終えた。
4年前に16歳で五輪を体験した後、一旦「完全引退」の道を選んだリュウは、そこから復帰2年目に再び五輪へ。おそらく本人はちっとも気にしていないはずだが、「アメリカ女子20年ぶりの五輪メダル」という大きな期待を背負って、ミラノへ向かう。
「母国の代表として大きな舞台で戦っていても、メダルのことばかり考えているわけではありません。もちろん、外側の人たちがメダルを期待しているのは分かります。でも私たちが得るのは、『本物のオリンピック』という経験そのものなんです。とてつもなく大きな経験です。本当にワクワクしています」(リュウ)
1年前は足の負傷で欠場したイザボー・レヴィトは、2年ぶり4度目の全米表彰台乗り。18歳で、初めての五輪行きを決めた。
イタリア人の母を持つレヴィトは、特別なシーズンに向けて、イタリアに縁の深いプログラムを2本用意した。SPはイタリアの大女優ソフィア・ローレンのメドレーを、コケティッシュに舞い踊り、FS「ニュー・シネマ・パラダイス」では、淡い夢のような、ノスタルジックな心象風景を氷の上に描き上げた。両プログラム通してのミスは、FS冒頭のコンビネーションの回転不足のみ。それ以外はノーミスかつオールレベル4で、大きな夢を射止めた。
「この瞬間に、この場所で、成功しなければなりませんでした。オリンピック出場年齢で迎えた初めてのオリンピックイヤーでしたから、特別なプレッシャーも感じました。特に大きな問題なく乗り切れて、本当に嬉しいです」(レヴィト)
女子シングルとしては最年長27歳のブレディ・テネルは、2度の足首のケガを乗り越え、8年ぶりの五輪代表入りへ挑んだ。かつて2度、全米の頂点を極めたチャンピオンは、ほぼノーミスの2演技で高い実力と気高い存在感を改めて示した。結果は4位と夢破れたが、「これまでの努力が報われたと感じ、再び氷上にいることに喜びを見出しました」と、前向きなコメントを残した。
テネルは5位サラ・エヴァーハード、7位スター・アンドルーズとともに、四大陸選手権代表に選出。またFSでトリプルアクセルを2本成功させ、初出場6位に飛び込んだ16歳ソフィージョリーヌ・フォンフェルテンは、世界ジュニア代表に選ばれた。
男子
傑出した才能と、揺るぎない王位。完璧にこなしたSPで2位以下に25.84点差を、ほんの少し守備的に戦ったFSでは27.15点差をつけ、圧巻のトータル324.88点でイリア・マリニンが4年連続の栄光を手にした。2023年12月のGPファイナル以来、個人戦14連勝。まさに無敵の「クワッドゴッド」として、自身初のオリンピックへと乗り込む。
「人生すべてをかけて、この瞬間を待ち望んできました。ここに辿り着くまで、本当に長い道のりであり、努力の連続でした。オリンピック代表に選ばれたことを心から光栄に思います。あの舞台に立ち、素晴らしい時間を過ごすことが待ちきれません」(マリニン)
SPは大きな4回転フリップで幕を明けた。当然のように残す2つのジャンプ要素も、危なげなく余裕の着氷。そもそも参加18選手の中でコンビネーションに4回転を入れたのはマリニンだけ。圧倒的な得点差は目に見えていた。
もちろんマリニンは、他のエレメンツでも完璧を目指した。「ザ・ロスト・クラウン」の速いビートに合わせ、リンクを所狭しと駆け巡り、アクロバティックな側転や後転で空間的な広がりを創り出した。すべてのエレメンツでレベル4と高いGOE加点を獲得し、PCSでは特に「プレゼンテーション」で、10点満点中9.75点という高い評価を得た。
スケート靴がいまだ完全に馴染んではいなかったこともあり、FSでは「安全策を取り、五輪に向け体力を温存する」ことを優先したという。約1ヶ月前のGPファイナルでは、「4回転6種7本」でワールドレコードを塗り替えたマリニンだったが、全米では「3種3本」にとどまった。それでも冒頭の4回転フリップは、ジャッジ9人中7人がGOE満点をつけるほどの完璧さ。ジャンプの得点が1.1倍となるプログラム後半には、4回転ルッツと4回転サルコーからのコンビネーションをさらりと組み込んだ。
マリニン自らがナレーションを吹き込んだプログラム「ア・ヴォイス」は、過去から未来へと続く物語であり、「いまだ光届かず、道なき場所から、始めよう」の言葉で締めくくられる。初めての五輪出場を決めた21歳の若者は、かつて誰も成し遂げたことのない偉業に向かって走り続ける。
「4年前に代表入り出来なかったことで、僕の心の中に火が付いたんです。もっと前に進みたい、もっと努力して、自分自身や自分のスケートを向上させたいという気持ちが芽生えました。こうして僕の人格や考え方は形作られました。今はこれまでの経験すべてに感謝しています。ミラノで起こるすべてのことを、楽しみにしています」(マリニン)
「クワッドゴッド」イリア・マリニンが個人戦14連勝を決めた
残り2段の表彰台と、2つの五輪出場権を巡る争いは、ことさら熾烈さを極めた。SP後には完成度の高いパフォーマンスを披露した樋渡知樹が2位に、12年ぶりのリバーダンスを「観客へのラブレターのような気持ち」で演じたジェイソン・ブラウンが3位につけた。しかしSP4位マキシム・ナウモフは表彰台まで2.76点差、5位アンドルー・トルガシェフも3.49点差と、かなりの僅差につけていた。そしてFSでは、後者2人が、魂を込めた演技で逆転を果たす。
SP冒頭の4回転トーループで転倒した影響で、トルガシェフは表彰台争いに出遅れたものの、FSでは、その4Tを鮮やかに決めることで、一気に波に乗った。続くコンビネーションで4分の1回転不足が取られた以外は、すべてのジャンプを力強く着氷。クライマックスは疾走感あふれる前衛的なコレオシークエンスで、ジャッジ9人中7人がGOE満点をつける見事な出来だった。
右足のケガで前回の五輪シーズンを完全に棒に振り、復活後も調子の上下に悩まされてきた。昨年のワールドや今季GPのNHK杯などでは、FSで大きく崩れることも少なくなかった。それでも今大会のトルガシェフは、「改めて初心に立ち返って」挑んだ。2年連続の銀メダルと、初めての五輪出場権を、その手につかんだ。
「いつかオリンピアンと呼ばれるかどうかは関係なく、オリンピック精神というものは、自分たちの内側にあるものだと思っています。再び立ち上がる力、前へ進む意志、粘り強さ……。全米に出場したすべての選手が、オリンピック精神を持っていました。誰もがあらゆるポイントのために、がむしゃらに戦いました。僕も、その仕事を、やり遂げました」(トルガシェフ)
昨ナショナル直後の飛行機事故で両親を失ったナウモフは、「スケート靴を履くことすら出来ない状態」から立ち上がり、「家族みんなで抱いてきた」夢を叶えた。
あらゆるジャンプで戦い続けた。何度も着氷で乱れたが、強い精神力で転倒を回避した。繊細でしなやかなスピンに、まるで心の叫びのようなステップシークエンス。心身すべてをプログラムにぶつけ、FSの演技直後はまっすぐ立っていられないほどだった。SPとFSの単体ではそれぞれ4位ながら、トータルではジェイコブ・サンチェスをわずか0.09点差で上回った。3年連続4位で泣いてきたナウモフが、ついに銅メダルに輝いた。喜びの涙を流しながら、天を見上げた。
「両親の想像を絶する努力と愛情がなければ、僕が今、ここに座っていることはなかったはずです。5歳で初めて氷上に立って以来、僕がずっと持ち続けてきた、そしてこれからもずっと持ち続けるであろう精神力が、今日の僕を支えてくれました。両親もきっと、笑顔で、僕を誇らしく思ってくれていることでしょう」(ナウモフ)
ところで、五輪出場を決めた3人は、両親ともに旧ソビエト出身のスケーターという共通のルーツを持つ。また2020年世界ジュニア選手権でともに戦った良きライバルであり、友でもある。
「あの大会のことはよく思い出します。2人と同じように、僕にとっても、大きな国際舞台に立つ初めての経験でした。あの頃から、僕は人間として、スケーターとして、大きく成長しました。自分自身を誇りに思うと同時に、彼らに感謝しています。だって彼らがいなければ、今の僕はここにはいなかった。彼らが努力し、情熱を注ぎ続けているからこそ、僕も頑張れるんです」(マリニン)
FSでジャンプの小さなミスが重なり、樋渡は惜しくも5位に後退。またブラウンはFS冒頭の転倒の影響か、その後もジャンプの感覚を取り戻せぬまま、8位で自身14度目の全米を終えた。両者は4位サンチェスとともに四大陸代表入り(ブラウンはその後欠場を発表、6位リアム・カペイキスが代わりに出場)。
また4回転時代に「置き去りにされ、もう続けられない」と一時は悩んだという31歳ブラウンは、人生3度目の五輪行きこそ叶わなかったものの、8度目の世界選手権行きを控えている。「クワッドゴッド」の国のナショナルは、たとえ4回転は飛ばずとも、精度の高い3回転や豊かな表現力で魅せるサンチェスや、伸びやかで軽やかなスケーティングが印象的なカペイキスという、素晴らしい個性が光る大会でもあった。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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