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チョック/ベイツ組が前人未到のアイスダンス全米7連覇!ペアはエフィモワ/ミトロファノフ組が気品高き演技で2連覇達成 | 全米フィギュアスケート選手権2026 ペア&アイスダンス レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部史上最多7度目の優勝を果たしたマディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組
4年に1度の、特別なナショナル。2026年1月上旬、ミズーリ州セント・ルイスで開催された全米フィギュアスケート選手権は、金・銀・銅・白鑞という4色のメダルをかける大一番であると同時に、2月にイタリア・ミラノで開催される冬季オリンピックの最終選考会という意味も帯びていた。
五輪出場権3枠を有する男女シングルとアイスダンスに関しては、明快だった。今回の全米選手権上位3人/組が、そのまま五輪代表チーム入りを決めている。ただし、2枠のペアに関しては、カップル競技だからこその複雑な事情で、必ずしも全米トップペアが、夢の舞台への扉を開けられたわけではなかった。
ペア
「最後の奇跡を信じて」、アリサ・エフィモワ/ミーシャ・ミトロファノフ組は2026年全米選手権に全身全霊で挑んだ。ショートプログラム(SP)では、ほぼすべてのエレメンツを端正にまとめ、非公認スコアながら自己ベストを5点以上も上回る75.31点をマーク。全10組中、ダントツの首位に立った。
「お互いを心から信頼して、演技に臨みました。正直に言うと、いつもより少し緊張していました。でもプログラムの間中ずっと、アリサが僕の手を強く握っていてくれたんです」(ミトロファノフ)
フリースケーティング(FS)の序盤には、「自分たちの手で決してコントロールできないもの」をつかもうとする思いが、少し空回りした。3つのジャンプ要素で立て続けにミス。サイド・バイ・サイドのコンビネーションジャンプでは、転倒した男性を女性のフリーレッグがかすめる場面も。
配信情報
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全米フィギュアスケート選手権 2026 アイスダンス&男子シングル フリーダンス&フリースケーティング
配信日時 : 2026年1月11日(日)午前7:10 ~
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全米フィギュアスケート選手権 2026 ペア&女子シングル フリースケーティング
配信日時 : 2026年1月10日(土)午前7:30 ~
それでも2人はすぐに流れを立て直した。以降のエレメンツはすべてレベル4で揃え、気品高く、ロマンチックに、「ある愛の詩」を美しく演じ上げた。FS132.40点でやはり1位に立ち、合計207.71点で、2年連続の全米チャンピオンに輝いた。
奇跡は、起こらなかった。フィンランド生まれのエフィモワの、米国籍取得手続きは、2度目のタイトルをもってしても早まらなかった。4年後のフレンチアルプス五輪を待ちながら、結婚2年目の2人は、まずは今季の四大陸選手権と世界選手権に集中を切り替える。
「オリンピックは、私にとって大きな夢です。でも、今は、今大会でミーシャとともに成し遂げたことを誇りに思います。将来に向けた良い経験にもなりました。今後は国際大会でも上位に食い込みたい。これが次の大きな目標です」(エフィモワ)
SP5位から逆転3位に入り、結成3年目にして2年連続台乗りのケイティ・マクビース/ダニイル・パークマン組もまた、やはりロシア出身パークマンにいまだ米国籍がない。ただ2人にとって初めての、なによりシングル・前パートナー時代から通して全米出場10回目のマクビースにとって初めての世界選代表の座を、確実に射止めた。
「ダニイルと滑ることで、私のアスリートとしてのレベルは大きく上がりました。彼と組む前は、全米のポディウムに立てませんでしたから、本当に素晴らしいことです。今後も自分たちのペースで、ステップアップの旅を続けていきたいと思います」(マクビース)
自ずと米国ペアの五輪2枠を巡る戦いは、他のカップルに託された。しかもSP後は2位から5位までの4組が0.86差で並ぶという、超がつくほどの接戦だった。
真っ先に好位置につけたのがオードリー・シン/バラージュ・ナギー組だ。SPの「ムーランルージュ」を力強く演じ上げ――同楽曲で平昌金メダルのテッサ・ヴァーチュの演技指導を受けた――、2位で折り返す。しかしシーズン序盤の五輪予選会で追加枠を持ち帰れなかった2人は、FSで小さなジャンプミスやレベルの取りこぼしを連発。総合5位に後退してしまう。
一方、ジャンプではSPもFSも女性側の転倒があったものの、エリー・カム/ダニー・オシェイ組は、それ以外のエレメンツはひとつひとつ心を込めて丁寧にこなした。なにより2人らしい優しさあふれる表現力で、見る者の心を温かく満たした。SP2位、FS3位と安定したパフォーマンスを2本揃え、銀メダルを獲得。2人にとって結成初年度から4年連続の台乗りであり、五輪期間中に35歳の誕生日を迎えるオシェイにとっては、悲願の五輪行きチケットをついに手に入れた瞬間だった。
かつてオシェイはタラ・ケインと9シーズンを共にし、全米制覇・四大陸制覇を成し遂げながら、2度の五輪チャンスをものにすることはできなかった。北京五輪シーズンには新たにチェルシー・リウ(今大会はライアン・ベダードと組み8位)と組むも、練習中の事故をきっかけにわずか半年で解散。その後はコーチ業を始め、半ば「引退」したようなものだったという。ところが指導者として練習相手を務めた14歳年下のカムとの、相性の良さに、オシェイは明るい可能性を見出した。再び現役として、夢を追いかけ始めた。
「長い旅でした。この目標は、いつも僕の心の最前列にありました。USチームの一員となって14年、ようやく夢が叶いました。こうして僕の隣にいてくれるパートナー(カム)に、心から感謝しています」(オシェイ)
もう1つの枠には、総合4位のエミリー・チャン/スペンサー・アキラ・ハウ組が滑り込んだ。SPは8位と大きく出遅れた。スロージャンプに入る前の準備段階で、女性側にまさかの転倒があった。タイミングが完全にずれながらも改めて行ったスローでの着地で、再び女性が転倒。「最悪の悪夢」(チャン)という状況だった。
「直後はいろんな感情が一気に押し寄せましたが、その後、『自分はなぜスケートを始めたんだろう』と初心に立ち返る時間が持てたんです。そして『スケートを純粋に好きだったあの頃の自分のために滑ろう』という思いで、FSに向かいました」(チャン)
FSも決して完璧ではなかったが、チャン/スペンサー組は渾身の演技を披露した。ジャンプは着地で耐え、スピードとキレのあるリフトやスピンで魅せた。FSだけなら3位の好成績。大逆転で、ミラノ行きを決めた。
アイスダンス
記録に残る大会だった。世界選手権3連覇中のマディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組が、全米アイスダンス史上最多となる7度目の優勝を果たした。2011/12シーズンにチームを結成して以来、2人にとっては15回目の全米出場であり、全種目を通して大会史上初の14年連続表彰台という偉業でもあった。
「15年間の道のりを思いながらも、感傷に浸りすぎないよう努めました。僕らはトレーニングとパフォーマンスにすべての時間を投資してきました。そんな自分たちへの究極のご褒美は、素晴らしい滑りをすること。あらゆる出来事を、ただ楽しみたいと思っています。だって、それはほんの一瞬でしかなく、もしかしたら最後になるかもしれないからです」(ベイツ)
まさに記憶に刻まれる演技だった。リズムダンス(RD)のレニー・クラヴィッツ・メドレーでは、ハードなギターリフに乗せて、すべてのエレメンツを高い完成度で披露。ベテランでありながら常にフレッシュさを失わない「チョクベイ」らしく、洗練された熱狂をアリーナいっぱいに撒き散らした。圧巻の91.70点で首位に立ち、フリーダンス(FD)へと駒を進めた。
漆黒のコスチュームで臨んだFD「黒くぬれ!」は、カリスマ的チャンピオンにふさわしい作品に仕上がった。雄牛とマタドールの命を賭した緊迫感に、母国で戦う最後の大会かもしれないという、2人の強い覚悟が重なる。スコア表のGOE評価はほぼ5と4だけが並び、特に序盤のリフトではGOE満点の評価。また演技構成点(PCS)の「構成」では、9人のジャッジ全員が10点満点をつけた。137.17点をマークし、合計228.87点で全米5連覇を達成した。
「この勝利は、私たちにとって、すべてを意味します。先輩方が体現してきたアイスダンスの価値に憧れ、その背中を負ってきました。この思いが、私たちをここまで導いてくれたのです。私たちもその『遺産』を次の世代へつなぎ、このスポーツへの愛を広げていけたらと願っています」(チョック)
チョック/ベイツ組がカップルとして4度目の、そして36歳ベイツにとって5度目となる五輪出場を決めた一方、エミリア・ジンガス/ヴァディム・コレスニク組とクリスティーナ・カレイラ/アンソニー・ポノマレンコ組は初めての五輪代表入りを果たした。両カップルとも国籍問題がクリアな状態で――ウクライナ生まれのコレスニクは昨夏、カナダ生まれのカレイラは昨年末に、無事に米国パスポートを取得し、憂いなく2026年ナショナルに挑んだ成果だった。
特に、今シーズン初めてグランプリシリーズ表彰台に上がり、さらには初めてのGPファイナル進出と急成長を遂げた「ジンコレ」は、「僕らには失うものどころか、得るものしかありませんでしたから」(コレスニク)と、自然体で試合に臨んだという。
RDでは技術の正確さが光った。元世界ジュニア王者のコレスニクは、ミッドラインステップシークエンスでチョクベイ組と並ぶレベル4を獲得。さらにシングルから転向4年目のジンガスとともに、パターンダンスステップシークエンスでは全出場中唯一のレベル4をマークした。また若いカップル特有の勢いや瑞々しさ、滑る喜びが溢れ出すような演技で、FDではPCSが初めてオール9点台に到達。過去2回の「ピューターメダル=4位」から、一気にシルバーへと躍進した。
「オフシーズンに『五輪代表になるため、できることはすべてやろう』と誓いました。シーズンが始まった瞬間から、一歩も間違えられないと分かっていました。どの試合でも、私たちはお互いのために、2人のために滑りました。ほぼすべての試合で最高の滑りができたことを、誇りに思います」(ジンガス)
対して、昨シーズンはグランプリ2大会で表彰台に立ち、世界選手権でもトップ5入りした「カレポノ」は、今季前半戦はやや足踏みが続いていた。
それでもカレイラの国籍取得により、日々の「国境超えのドライブ」が不要になった。おかげで練習拠点に腰を落ち着け、トレーニングに集中できた。RDではダイナミックさやスピードに磨きがかかり、非公認ながらキャリアベストの高得点を叩き出した。またFDはシーズン前半のプログラムから、2年前に使用した「パフューム」に変更。より成熟さを増した表現力で、不穏かつミステリアスなストーリーを氷上に描き上げた。結果は、堂々たる4年連続の全米表彰台。五輪行きの夢を叶えた。
「4年前に僕は手術を受け、足を上げた状態でソファに座り、五輪のあらゆる競技を熱心にテレビで見ました。人生で一番どん底にいた頃ですが、次こそ五輪代表に入るという信念と夢は持ち続けていました。あの辛い時間がなければ、今の僕はここにいないと思います」(ポノマレンコ)
米国アイスダンス界には現役世界チャンピオンに加え、元世界ジュニア王者が2人+2組も揃っているからこそ、間違いなく、世界で一番ナショナルのレベルが高い。だからこそ、たとえ五輪代表には選ばれなかったとしても……、そもそも「USチーム入り」自体が極めて名誉あることだ。
キャロライン・グリーン/マイケル・パーソンズ組は、納得の演技を2本揃えらものの、惜しくも4位で大会を終えた。4年前の4位は、四大陸での初のISUチャンピオンシップ制覇につながっていたが、今回もやはり四大陸代表に選ばれた。やはり元世界ジュニア王者のウーナ&ゲイジのブラウン兄妹は、名プログラム「ゴッドファーザー」でスタンディングオ
ベーションの喝采を受けた。四大陸ではシニアで初めてのISU選手権に臨む。
平昌五輪で団体・個人ともに銅メダルに輝いたマイア・シブタニ/アレックス・シブタニ組は、8年ぶりにナショナルに帰ってきた。残念ながらFDのツイズルで大きなミスがあり、結果は10位に終わった。それでも2人にとって思い出の曲「フィクスユー」で、空間や時間の果てしない広がりを感じさせる演技を披露。この全米の氷の上で過ごした数分間は、2人の人生にとって、かけがいのない瞬間となったはずだ。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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