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フィギュアスケート コラム 2026年2月13日

第46回全国中学校スケート大会 フィギュアスケート競技 女子シングルレビュー

フィギュアスケートレポート by 中村康一(Image Works)
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第46回全国中学校スケート大会フィギュアスケート競技が、2月1日-3日の日程で長野県長野市、ビッグハットにて開催された。今年の女子は、ジュニアグランプリファイナルで表彰台に上った岡田芽依を筆頭に、ジュニアグランプリで活躍した選手達、そして来季からジュニアに昇格するノービスのホープなど、将来の日本フィギュア界を担う有望な若手が多数参加する見ごたえのある大会だった。

優勝 岡田芽依

優勝 岡田芽依

今季、ジュニアグランプリで優勝、ファイナルで3位と大活躍を見せている岡田芽依が素晴らしい演技を2本揃え、優勝を飾った。2年ぶり、2回目の優勝だ。ショートプログラムは彼女にしては本調子でないように見えたのだが、それでもノーミスの演技を披露した。

「調子があまり良くないまま迎えた今回の全中だったんですけど、今自分ができる精一杯の演技をしようって思って集中して臨みました。大きなミスなくまとめられたのは良かったかなと思います」

今季、特に全日本ジュニアからファイナル、全日本選手権にかけては素晴らしいコンディションをキープしていた。それが今回、練習の様子がそこまでではないように見えたのだ。

「全日本ジュニアからの連戦の疲れがなかなか抜けなくて、練習で結構苦労したんですけど、そんな中でもしっかり調整して今回挑むことができたかなと思います」

岡田芽依は2年前、1年生の時にこの全国中学校大会で優勝している。それまでは将来有望とされながらも、目立った成績は残していなかった。それが全中での優勝を機に大きく道が開けた。ジュニアグランプリへの派遣を皮切りに活躍を続け、今季はファイナルで銅メダル、世界ジュニア選手権への派遣と世界でもトップクラスの選手へと成長したのだ。ただ昨年の全中では思うような結果が残せなかった。仕上がっていなかった新作のフリー、“ミス・サイゴン”を使ったことも影響したように感じていたが、そのプログラムもその後1年間使い続け、今では素晴らしい仕上がりになっている。「優勝を意識し過ぎると昨年のように力が入ってしまう」と平常心を心掛けるとのコメントをしていたが、やはり優勝は意識している様子だった。そしてもう一つ、負けられない要素があった。1学年下のライバル、金沢純禾の存在だ。全日本選手権で世界ジュニア選手権の代表争いをし、結果、岡田芽依が代表に選ばれたのだ。金沢純禾は「ここでは勝ちたい」と意欲を見せていたので、そのことを伝えてみた。

「ライバルとしてファイナルなど一緒に出場してきた仲間なので、勝ちたいっていう思いはあるんですけど、まずは自分の演技にしっかり集中して、自分が今できる最高の演技を目指してしっかり集中したいです」

と冷静にコメントしていた。そして迎えたフリー、岡田芽依は最近の試合で続けている通り、トリプルアクセルに挑戦した。結果はダウングレードの転倒と失敗に終わったが、その後は立て直し、フリーは2位だったものの、総合で1位となった。

「ショートよりは緊張はしなかったので、全部のジャンプを思いっきり挑めたかなと思います。トリプルアクセルを転倒してしまったのはほんとに悔しかったんですけど、そのあとしっかり切り替えて、回転不足はあったんですけど、大きなミスなく終えられたことは良かったと思います」

この日、優勝を争う金沢純禾がトリプルアクセルを回避する選択をした。安全策のフリーで126点をたたき出し、後に滑る岡田芽依にはプレッシャーがかかる場面となった。

「朝の公式練習では(金沢選手がトリプルアクセルを)やっていたので入れると思ってたんですけど、6分間を見てちょっとあれ?ってなりました。でも自分はトリプルアクセルに挑戦するっていう気持ちでずっといたので、そのままチャレンジしました。ダブルアクセルにするっていう選択肢はあったんですけど、やっぱりラストの全中ということで、もう悔いのない演技がしたいと思ってチャレンジしました」

トリプルアクセルは、西日本ジュニアから一貫して挑み続けている。もちろん世界ジュニア選手権でも挑戦する予定だ。曲をかけない練習では着氷しているので、本番での成功もあともう少しだと期待したい。

「曲かけだとその音楽に惑わされたりして、なかなか確率が上がらない状態なので、世界ジュニアまでに曲の中でしっかり着氷できるような練習をしていきたいと思ってます」

エストニアを訪れるのは初めてだという。ヨーロッパの街並みが好きなので楽しみにしている、と話してくれた。私も過去に何度か訪れているが、タリンはとても美しい街だ。きっと素晴らしい経験になることだろう。初めての世界ジュニア選手権、最高の演技で観客を沸かせてもらいたいものだ。

2位 金沢純禾

2位 金沢純禾

今季、ジュニア昇格初年度にしてジュニアグランプリシリーズ優勝、そしてジュニアグランプリファイナル出場と大ブレイクを果たした金沢純禾。優勝した岡田芽依とは僅差の2位となった。ショートプログラムは、ループにqマーク(1/4回転の不足)が付いたり、レベルの取りこぼしがあったことを反省していたが、十分に素晴らしい演技だった。全日本選手権で世界ジュニアの代表の座を争った、岡田芽依との直接対決について聞かれると、

「勝ちたいっていう思いは強いんですけど、友達兼ライバルっていうとても良い関係で、挑めるのはとても嬉しいですし、良い刺激になります」

と、ライバル心はありながらも仲の良さを感じさせる関係性を語ってくれた。今季、挑戦を続けているトリプルアクセルについて、ショートプログラム直後にはフリーで挑む予定だと話していた。ところがフリー当日、練習での感触が悪かったようで挑戦を回避。この点について聞いてみた。

「公式練習もずっとトリプルアクセル入りでやっていて、本当に迷いに迷って、ウォーミングアップの途中で決めました」

「戦略的撤退」と表現していたが、朝の公式練習ではトリプルアクセルを練習していたものの、6分間練習の中で回避を決めたのだという。このことで岡田芽依が戸惑ったとのエピソードを先に書いたのだが、それを金沢純禾に伝えてみたところ、「本当ですか?」と、自分の決断が岡田芽依に影響を与えたとは思っていなかったそうだ。「トリプルアクセルを降りる確率がファイナルの頃よりも悪かった」とのこと。たとえ回転不足でも転ばずに着氷できればそれなりの点数が残るが、ダウングレードで転倒、となるとほとんど点数が残らない。そのリスクを考え、村元コーチと相談の上で決断したそうだ。来季に向けては「トリプルアクセルと4回転を果敢に挑戦していきたい」と話してくれた。

最後に、今季の大活躍について総括してもらうべく、振り返りの質問をさせてもらった。率直なところ、今季については活躍はするだろうが、ファイナル進出までは想像していなかった。私の不明を伝えて詫びたのだが、

「私もです。いや、まさかファイナルまで行けると思ってなくて。しかも1戦目、イタリア大会でショート1位だった時に1位!?と思って、本当にまずそこで1位になれるとは思いませんでした」

イタリア大会でのショートプログラムのスコアは驚きだったようだ。

「ショートで60点は超えたことあったんですけど、いきなり65点!?って本当に驚きました」

もっとも、これが本来あるべき評価なのだろう。国際大会に出場していない選手は、国内ではなかなか高得点を出してもらえないものだ。

「で、そこからはファイナルもあるかなって思っていたので、ポーランド大会はすごく緊張したんですけど、無事にファイナルに行けました。1年目ながら良くやったんじゃないかなって自分の中で思ってます」

ジュニア1年目にして世界で活躍する選手になれたことは実に素晴らしく、手放しで称えたい。来季の目標についても話してくれた。

「世界ジュニアにやっぱり行きたかったなっていう思いは強いんですけど、1年目にしてはあんまり想像してなかった自分になれたので、来年も自分の想像を超えられるように頑張りたいなって思います。来季はもう1回ファイナルに行きたいです。ファイナルでの演技が終わって、キスクラの時に『もう終わっちゃったな』みたいな気持ちで、その時また出たいなって思いました。こんな試合はなかなかないし、来季もう1回ファイナルに行きたいなっていう目標はあります」

以前は技術点で稼ぐタイプの選手との印象だったのだが、今季、そこも大きく進化したように感じる。この全中での滑りは本当に素晴らしかった。来季、世界ジュニア出場、そしてファイナルでの表彰台の目標を叶えてほしい。

3位 宮崎花凜

3位 宮崎花凜

宮崎花凜が3位と表彰台に乗った。まだノービス年代、1年生にして驚くほどの活躍だ。もっともこれだけの高評価を得るのも納得だ。ノービスとは思えないほどにスケートが上手なのだ。ショートプログラムでは岡田芽依に次ぐ2位と最高の全中デビューを飾った。スピン、ステップをすべてレベル4で揃え、加点もしっかり付く出来栄えだった。6分間練習では緊張からかフリップに苦戦しており、本番でも冒頭の3フリップ+3トウは若干余裕のないジャンプとなってしまったが、ここを乗り切ってからは伸び伸びと素晴らしい演技を披露した。

「すごい緊張しました。少しでも点数欲しいので、自分の思いが伝わってほしいなって思って、体でその思いを表して演技してました」

堂々たる演技とは裏腹に、緊張するタイプのようだ。演技中の細かなことはあまり覚えていないようで、これも緊張のためなのだろう。ノービス年代の選手は、ショートプログラムに慣れていないために大きなミスをしてしまうことが多いのだが、宮崎花凜の場合はそれが全くない。推薦出場した全日本ジュニアでも、素晴らしいショートプログラムを披露した。その理由をどう考えているのかを聞いてみた。

「やっぱりショートってジャンプ3本しかないし、リカバリーが利かないので失敗できなくって、もう何がなんでも成功させなきゃいけないっていう死ぬ気で演技してるから、多分その気合いで失敗しないんじゃないかなと思います」

普通は、そのプレッシャーからミスをしがちなのだが、彼女はプレッシャーを力に変えることができるのだろう。迎えたフリーでは、118.13、素晴らしいスコアで総合3位となった。

「自己ベストが出なくて悔しいっていうのと、すごい緊張してたので、やっぱりその緊張の中でもちょっと危なかったんですけど、一応全部降りて良かったかなと思います」

これだけの演技をしても満足はしていなかったようだ。この日はルッツの練習で苦労していたのだが、本番ではしっかりと決めていた。緊張の中でもノーミスが出来る理由を聞いてみたのだが、明確な答えはなく、本人も良く分からないようだ。ただそれは練習をしっかり積んでいるからこそ出来ることなのだろう。来季は満を持してジュニアに昇格する。トリプルアクセルを習得すること、そしてジュニアグランプリで2戦の派遣をもらうことを目指すと話してくれた。今季の岡万佑子、金沢純禾のような大ブレイクを、来季の宮崎花凜にも期待したいところだ。スケーティングに関しては、年代を考えれば信じられないほど上手だと思うが、本人はまだまだ満足してないそうで、「(青木)祐奈ちゃんみたいに綺麗な滑りが出来るようになりたい」という。青木祐奈の滑りができるようになったら世界でもトップクラスのレベルになるのだが、是非目指してほしい。

4位 竹島花英

4位 竹島花英

宮崎花凜と同じくノービス年代の竹島花英が4位となった。

「初めてこの全中で3+3を入れて、失敗しちゃったんですけど、初めて入れて思ったより良かったと思います。全日本ジュニアでは3+3を入れなかったんですけど、今回は3+3を入れて、自分の中で大きな演技を出せたかなと思います」

今季、ブロック大会の頃から3+3を試合でやりたいと言っていたのだが全日本ジュニアでは挑戦できず、今回ようやくコーチから挑戦の許可が出たようだ。それも高難度の3ルッツ+3トウ。着氷がクリーンではなく、またトウループは回転不足判定だったが、完成間近の様子だ。3+3に取り組む場合、最初は3トウ+3トウから挑戦する選手が多いのだが、この点について聞いてみると、ルッツは得意なジャンプなのだという。また慣れないショートプログラムの場合、特にステップからのループジャンプで苦労する選手が多いのだが、ここも苦もなくこなしていた。

「ループは一番得意なジャンプで、回り過ぎる時があるぐらいです。今日はクリーンに降りられました」

ノービス年代にしてルッツ、ループを得意ジャンプだという。この選手もまた大物感が漂う。フリーではほぼノーミス。プロトコルを見るとqマークやフリップジャンプのアテンション(エッジが不明確の意味)はあったが、見た目はパーフェクト、堂々たる演技だった。

「自分でも今日は100パーセントを出し切ったので、すごい良かったなと思います。ただフリーだけだと自己ベストを更新したと思うんですけど、ショートと合計では自己ベストを更新できなかったので、来季は(総合で)自己ベストを更新できるようにしたいなと思っています」

今季、木下アカデミーに移籍し、大きく環境が変わったシーズンだった。「特にステップなどが上達したと思います」との控え目なコメントだったが、それだけではなく全てが上手くなったように感じる。そして来季、いよいよジュニアに昇格する。

「ジュニアでは金沢純禾選手や島田真央選手みたいに国際試合に行って優勝したり、トリプルトリプルを完璧に降りて、島田真央選手みたいに4回転やトリプルアクセルに挑戦していきたいです」

トリプルアクセルは今も練習しているのだそうだ。今やトリプルアクセルは試合で決められるかはともかく、練習することは誰しもが挑戦する時代になった。来季はジュニアグランプリの選考もし烈になりそうだ。島田麻央はジュニアを卒業するが、代わりに宮崎花凜、竹島花英がジュニアに昇格する。さらに山田恵もジュニアグランプリに意欲を燃やしており、怪我さえ治れば、の条件付きだが川勝玲奈にもチャンスがあるだろう。「尊敬する選手は坂本花織さん」だという。坂本花織のようなダイナミックなスケーティングをいつかは身に着け、世界で活躍してもらいたいものだ。

5位 上薗恋奈

5位 上薗恋奈

今季、所属していたLYSから神戸クラブに移籍、大きく環境が変わり、またジャンプの技術も一からやり直す形になったことで試合では不安定な演技が続いていた。ようやく技術面が固まりつつあり、来季への展望が開けた今大会だった。ショートプログラムではミスはあったものの、その後立て直すことができた。

「冒頭の3ルッツ+3トウで失敗はしてしまったんですけど、そこから切り替えて自分の演技をしようと思って、練習してきた自分が表現したいものを少しは発揮できたかなと思います」

神戸クラブに移籍し、中野園子コーチの指導を受けるようになって特に変わったのがルッツの跳び方だという。トウを突く右足を、かなり後方に下げて突くのが中野園子コーチの指導法で、以前とは大きく違うのだそうだ。夏場の大会では明らかに苦戦していたが、徐々に馴染んできているようで、12月の愛知県の大会では素晴らしい3ルッツ+3トウを披露していた。確率はかなり上がっているのではないだろうか。

「夏に比べたら、どこにどのコースで行って、どこに乗って跳ぶかっていうのが大分自分でも考えて飛べるようになってきたので、大分戻ってはきたかなとは思ってます。ただ『まだ近くに突いてるよ』って言われる時はあるんですけど、トウを叩いて跳ぶっていうのがなくなってきて、良くなってきていると思います」

以前の跳び方は、体に近い場所で右足のトウを叩く跳び方、それに対して現在は右足を大きく下げ、体から遠く離れたところにトウを置く跳び方。長年練習し、体に馴染んでいたものを変更するのはとても大変なことだ。ここが改善されれば俄然、スコアも計算が立つようになり、再びの国際大会への挑戦も期待したくなる。

「年齢的には来年が最後のジュニアなので、国際大会に出るのは必須だなと思っているんですけど、まずはやっぱり忘れていた自分の魅力を出すっていうのが1番大事かなと思うので、スピードだったり、表現力っていうのを忘れずにやっていきたいなと思っています」

表現力についていえば、今季の上薗恋奈の演技はPCSの評価が極めて低かった。ジャンプの改善に力を入れた関係で、スケーティング、つなぎに手が回らなかったということなのだろうが、かつての高得点を考えると信じられないほど低い。

「今までと違う感じの曲っていうのもあって、表現だったり、自分が見せたいプログラムっていうのをあまりできていなくて、やっぱりジャンプばかりに集中してしまう時が多かったので、自分が大事にしている表現を忘れずに、来季はちゃんと最初からやっていきたいなと思ってます」

迎えたフリー、最後のフリップの転倒やいくつかの回転不足判定はあったものの、全体的にはかなりまとまった演技を披露できた。

「内容的には1ミスで抑えられて、段々良くはなってきてるかなと思うんですけど、やっぱり点数が伸びていないので、レベルの取りこぼしだったり、そういう課題を次の試合までにクリアできるように頑張っていきたいなと思ってます」

シーズン前半にはミスが相次ぎ、演技をまとめられない時期もあっただけに本人も手ごたえを感じつつ、ただスコア的には満足はいかない、というところだろう。ジャンプの立て直しに注力したシーズンだっただけに、致し方ない面はある。また今回、回転不足判定がいくつか見られたのだが、それについては、

「やっぱり自分の体も変わってきて、今まで通りに跳べなくなってきたのが原因かなと思うので、今の体でもクリーンに跳べるようなジャンプにしていきたいです」

現在の身長は163cmだという。フィギュアスケート選手としては比較的高身長だ。このスタイルの良さは演技の魅力にもつながるが、ジャンプの安定には苦労もあることだろう。
来季、最後のジュニアシーズンにはジュニアグランプリなどで大いにアピールし、ISUポイントを稼いでほしいものだ。来季は派遣争いもし烈だが、復活を期待したい。

6位 森成美

6位 森成美

今季、埼玉から名古屋の名東クラブへと移籍し、大きな飛躍を見せた選手だ。ショートプログラムについては自身でも満足の演技だったようだ。

「目標にしていた50点台を出すことができて、ジャンプは少しミスがありながらも、最後のステップは楽しんで滑れたかなと思います」

得意のルッツジャンプでオーバーターンをしてしまったことを悔やんでいた。ルッツのコンビネーションを後半にしたのは、ループの確率が低かったことがあったようだ。「ループを後半にするとはまらない」とのことでこの構成にしたそうだが、それにはひとつ落とし穴があった。

「やっぱりスピン2連続っていうこともあって、目が回っているのと、ちょっと疲れているのもありました」

スピンを二つこなした直後のルッツ+トウということで、目が回っていて失敗したのだという。スピンで目が回る選手は珍しいように思うが、

「めっちゃ目が回ります。埼玉の時はスピンをあまり練習してなかったんですけど、名東クラブではスピンのレッスンがすごく分かりやすくて、埼玉ではあまり指導されてなかった部分も教えてくれるので、スピンのレベルも埼玉にいた頃よりも取れるようになってきました」

名古屋に来てからはスピンをしっかり練習するようになったそうなので、いずれ目が回る問題も解決されることだろう。大人びて見えるが、彼女も実はまだノービス年代。今季の全日本ノービスでは表彰台に立つことができた。シーズン当初はフリーで50点程度だったものが、全日本ノービスでは86.50。シーズン中にベストスコアが30点以上伸びたのだ。これほど短期間に伸びるケースは珍しい。名古屋に移ったことが奏功した形だ。クラブでは岡田芽依と一緒に練習し、また和田薫子と一緒に練習する機会を得たことも勉強になったと語る。彼女は元々、アイスダンスの村元・リード組の演技に感動してフィギュアスケートを始めたそうで、アイスダンスへの興味がとても強いとのこと。いずれはアイスダンスにも挑戦してもらえるととても嬉しい。

フリーでは冒頭の3ルッツが圧巻の高さだった。思わず声が出てしまったほどのビッグジャンプだった。

「ミスが出てしまったことは悔しいんですけど、1番最初の3ルッツで(GOEが)1.77がついていて、とても自信になりました」

練習からこんな素晴らしいルッツを跳んでいるのか聞いてみると、

「ルッツが1番好きなんですけど、正直もっといいジャンプがあるな、みたいに思っています。ルッツはもっともっと加点を稼げるようなジャンプに磨いていきたいです」

と、練習ではもっと良いルッツを跳べているのだと明かしてくれた。これは大きな武器になる。たとえて言うならば、三宅咲綺の3トウ+3トウのような、高さ、美しさで感動を与えられるクオリティのジャンプだ。「まさか最終グループに入れるとは思っていなかった」と、フリーは失うものはないとの気持ちで臨んだというが、ミスはあったものの素晴らしい演技だった。

「体力が私の中ですごい大きな課題になっていて、最後までスタミナが持たないことがほとんどなので、そこでやっぱりミスも出てしまうと、足の踏ん張りがきかなくなってスピードが落ちてしまうので、もっともっと体力をつけていきたいと思っています」

今回、ノービスよりも長いジュニアプログラムだったこともあり、まだ体力面でこなせていないようだ。ジャンプだけでなく、コレオシークエンスでのミスもあった。途中で躓いてしまいGOEで減点されたのだ。コレオシークエンスは本来、GOEでいかに稼ぐかのエレメンツなので、あの減点はもったいなかった。

「いつもはあそこで躓いたりはしないので、すごいびっくりしたんですけども、やっぱり前のループで転倒したのでうまくスピードが保てなくなって、いつものようにクロスでも押せなくなってしまうので、そういうミスがあると他にも響いてしまうってことがこの試合で分かりました」

コレオシークエンスの直前に苦手とするループジャンプを跳んだのだが、そこでの転倒が影響したのだという。ただミスはありながらも、ポテンシャルの高さを存分にアピールした演技だった。彼女も来季、ジュニアに昇格することになる。ジュニアグランプリの選考はますますし烈になりそうだ。ジャンプと表現力を兼ね備えた選手へと成長しそうなホープだ。招来が楽しみな選手がまた一人現れた。

7位 一貫田紗生

7位 一貫田紗生

一貫田紗生も今季、大きく飛躍した選手だ。6月のオーヴィジョンアイスアリーナカップでフリーのみで114.00のスコアを出し、一気に注目が集まるようになった。全日本ジュニアで10位、全日本選手権への推薦出場も果たした。今回のショートプログラムでは、後半に予定していた3ルッツ+3トウのコンビネーションで失敗。大きく出遅れてしまった。

「このショートは今回が最後だったんですが、ルッツでこけてしまって笑顔にはなれませんでした。ちょっと振り回して跳んでたところもあるので、そこが原因かなと思ってます」

この日、全体的に緊張を感じさせる演技だった。それには全日本選手権での経験が影響していたようだ。

「全日本でこけちゃったりして、ショートがちょっと怖くなってるところはあったかなと思います」

全日本選手権では期待されていたことを実感していた分、ミスが続いてのショート落ちはショックだったという。今回も失敗はしてしまったが、それでもフリーに進むことができた。全国中学校大会ではフリーに進めるのがわずか18名。大きなミスをするとそれだけでショート落ちに直結するものだが、何とか12位で通過することができた。そしてフリーではトリプルアクセルに挑戦すると話してくれた。実は全日本選手権での公式練習で、彼女はトリプルアクセルを練習していたのだ。フリーでは挑戦するのだろうな、と想像していたのだが、それは叶わなかった。

「全日本の時に結構跳べそうだったので、感覚掴んで帰りたいなと思ったんですけど、ショート落ちしてしまいました」

今回のフリー、ようやく試合でトリプルアクセルに挑戦することができた。結果はダウングレードだったが、良い挑戦だったと思う。

「ジャンプはちょっと点数的に回転不足が何個かあるかなと思うんですけど、スピンを2つぐらいぐらついちゃったのが少し悔しいなと思ってます」

とはいえ今回、ショート、フリーとやれることをやり切れた。全日本選手権での嫌なイメージは払しょくできたのではないだろうか。

「もう切り替えないと駄目なので、これからはミスしないようにジャンプを安定させたいです。今季、3ルッツ+3トウが跳べるようになって点数が伸びてきたところもあるんですけど、スケーティングとかをもっと強化して上手くして、もっと点数伸ばしたいなって思ってます」

来季の目標については「もう一度全日本に出たい」と話してくれた。もちろん国際大会、ジュニアグランプリへの派遣も勝ち取りたいところだが、「選考会に呼ばれたら」と控えめな回答だった。ただ可能性はもちろんあるだろう。来季は全日本のフリーでトリプルアクセルを決める姿を見たいものだ。

8位 五箇 心乙祈

8位 五箇 心乙祈

お名前は「みおり」さんと読むのだそうだ。演技を一目見て、太田由希奈さんを彷彿とさせるものを感じたのだが、やはりコーチは松永由希奈さん(旧姓、太田由希奈さん)とのこと。手足の使い方、指先の表現に独特なものがあり、決して身長は高くないのだが、氷上では大きく見える。ジャンプ構成は決して高難度ではないが、やれることを確実に実施し、美しい踊り、表現で魅せるタイプの選手だ。

「スケーティングとかスピンで見せられる選手になりたいなって思います。松永先生はスピンの姿勢とか、(エッジに)乗る位置とかも丁寧に丁寧に教えて下さっています」

現在跳べるトリプルジャンプはループまでの3種類だが、将来的には「先生みたいに、ジャンプ、スピン、スケーティング、全部がまとまっている選手になりたい」と語ってくれた。一方で、好きな選手として樋口新葉の名前も挙げてくれた。大分タイプが違うように思うが、共に神宮で練習していて憧れるようになったようだ。樋口新葉のようなジャンプを目指したい、とのことで、トリプルアクセルも意識しているのだろうか、と聞いてみると

「跳べるようにしたいです」

と、将来の目標としては考えているそうだ。まずは来季、ルッツを習得することが最優先だという。彼女も来季からジュニアに昇格する。ジュニアグランプリ出場を目指して頑張りたい、と話してくれた。来季のジュニアグランプリは実に狭き門だと思うが、是非実現させてもらいたいものだ。

文:中村 康一

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中村康一(Image Works)

フィギュアスケートを中心に活躍するスポーツフォトグラファー。日本全国の大会を飛び回り、選手の最高の瞬間を撮影するために、日夜シャッターを押し続ける。Image Works代表。

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