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第75回全国高等学校スケート選手権大会(インターハイ)、フィギュアスケート競技が宇都宮市スケートセンター(栃木県宇都宮市)にて1月23日-26日の日程で開催された。宇都宮では久し振りのインターハイ開催だ。前回、このリンクで開催された2017年には、男子では友野一希が優勝した。彼の素晴らしい演技に加え、2位だった本田太一がエキジビションでとても観客に受けていたことが今でも思い出される。ただ今回の宇都宮スケートセンターは、2017年に比べてリンク内がとても寒く、また十分な練習ができずに試合に臨まなければならなかったために、選手にとっては調整の難しい大会となったようだ。
優勝 中田璃士
優勝 中田璃士
中田璃士が昨年に続き、インターハイ二連覇を達成した。世界ジュニアチャンピオンとして負けられないところだったが、本人はとても緊張してしまったようで、ジャンプでは危ない場面もあった。3フリップ+3トウのコンビネーションが、最初のフリップで前のめりの着氷、かろうじてセカンドを付けることができた。
「いや、ほんとにもう6分間は完璧でした。今回は久しぶりに試合前に緊張してしまいました。でも、まとめられたので良かったんじゃないかなって思います」
世界ジュニアチャンピオンが、インターハイでそこまで緊張したことに驚かされた。なぜそんなにも緊張してしまったのだろか。
「いや、分かんないです。本当に楽しんでこようと思ったんですけど、ほぼメンツ全日本ジュニアじゃないですか。絶対負けたくないので、それが強かったんだと思います」
ただ最近の中田璃士は、きわどいジャンプだったとしても転ばなくなった。トレーニングをしっかりするようになったことが好影響を与えている。左足を疲労骨折したことがきっかけで体幹トレーニングに力を入れるようになったそうだ。そしてたとえきわどいジャンプでも、転ばずに耐えることで演技をまとめる意識が強くなったのだ。現在、怪我は完治し、不安のない状態で練習を積めていると語る。ただ今回のインターハイ、氷上での練習機会が限られたため調整に苦労する選手が多かったのだが、中田璃士もその影響を受けたようだ。
「緊張したことも、やはり今日、朝練習がなく、試合が1発目の滑りだったことも少し影響してたんじゃないかなと思います」
今回、氷上練習が十分にできない環境で大会を開催したことは今後しっかり検証してもらいたいものだ。インターハイのフィギュアスケート競技は、開催を引き受けてくれるところを探すだけで大変な苦労があり、やむを得ない面があるのは承知しているが、かつての時代とは違い、今やトップ選手は当たり前に4回転、トリプルアクセルを跳ぶ。不十分な練習で試合に臨むことは選手にとって危険なことでもあるのだ。
中田璃士にとって、この先の最大の目標はもちろん3月に開催される世界ジュニア選手権だ。2連覇を成し遂げ、満を持してシニアに上がりたいところだ。ただ12月のジュニアグランプリファイナルでは、フリーでソ・ミンギュに逆転を許し、2位にとどまる結果となった。フリーで直前に滑ったソ・ミンギュが、エレメンツ構成は控えめながらもパーフェクトな演技を披露したことがプレッシャーになってしまったそうだ。
「(ファイナルでは)やることやれれば勝てるのに勝てなかったので、(世界ジュニアでは)絶対勝ちます」
そもそも演技の構成において、中田璃士の方が難度が高く、やれることをやり切れば勝てるはずだった。ただそれをやり切ることの難しさを思い知ったファイナルだった。
そして迎えたフリー。ノーミスを目指すと話していたのだが、4回転サルコウ、トリプルアクセルにミスが出て、決して満足のいく出来栄えとはならなかった。4回転トウループが安定していたことは好材料だが、より完成度を上げていく必要を感じさせるものだった。もっともその後の国スポでは、フリーで4トウ+3アクセルの連続ジャンプを含め、素晴らしい演技を披露した。インターハイの教訓を存分に生かした形で、世界ジュニア選手権への準備は整ったといって良いだろう。宣言通りに連覇を果たし、次世代のエースとしてさらに飛躍することを期待したい。
2位 西野太翔
2位 西野太翔
ショートプログラムはとても良い入り方をして素晴らしい演技をしていたのだが、最後のジャンプ、3ルッツ+3トウを予定していたところ、共に1回転となってしまいノーバリュー。大きく得点を落とすこととなってしまった。スコアは65.41。彼としてはとても低い点数だ。本来であれば12点は上乗せできていたはずだ。
「いつもよりタイミングが多分少し早かったのが原因だと思います。少し焦ってしまいました。しっかり明日までに修正したいです」
調子は良かっただけに悔しい、と語ってくれた。西野太翔は今季、ジュニアグランプリで素晴らしい活躍を見せた。昨シーズンは1戦目で順位が悪かったため2戦目に派遣されず悔しい思いをしたが、今季は1戦目のイタリア大会で優勝、ファイナルにまで駒を進めることができた。特にイタリア大会のフリーが白眉の出来栄え。私も大いに感動した演技だったので、それを本人に伝えたところ、
「明日はイタリア大会を超える演技を見せます」
と力強く約束してくれたのだ。強気な発言に驚かされたのだが、練習ではノーミスの演技ができていて、感触が良いことを受けての発言だった。そして迎えたフリー、残念ながらイタリア大会ほどではなかったが、十分に素晴らしい演技を披露してくれた。
「4回転を2本、最近は練習でしっかり決まってたので、それが決められなくてすごい悔しいっていう気持ちです。トリプルアクセルは2本を最近の大会でしっかり決められていなかったので、それが決められたのは良かったかなと思います」
4サルコウを決められなかったことを悔やんでいたが、その後に立て直しができたことに一定の手ごたえを感じていた。世界ジュニア選手権の前哨戦、テストとして考えると、十分に良い経験となったのではないだろうか。
「ここで失敗したことをしっかり練習して、世界ジュニアにつなげたいです」
学校別対抗では、高橋星名と2名で出場した星槎国際横浜として優勝することができた。良いイメージを持って世界ジュニア選手権に向かってもらいたいものだ。持ち前の高いポテンシャルからすれば、今季の活躍はまだまだ十分とは言えない。真価を発揮するのはこれからだ。今後の成長を楽しみに見守りたい。
J SPORTS 放送情報
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第75回全国高等学校スケート競技・アイスホッケー競技選手権大会 フィギュアスケート競技 男子 決勝 フリースケーティング
放送日時:2026年2月13日(金)午後 5:30 ~ J SPORTS 4
3位 田内誠悟
3位 田内誠悟
今季、ブライアン・オーサーに師事するためにカナダに渡るなど大きく環境を変えた田内誠悟だが、順調に進化しているようだ。全日本ジュニアまでは苦労していたトリプルアクセルも徐々に手のうちに入れつつある。今回は回転不足を指摘されていたが、着氷の印象はかなり改善されていた。近いうちに計算できるジャンプになるのではないだろうか。今回、ショートプログラムの後半に3フリップ+3トウを跳ぶという試みをしたことが奏功した形だ。これは日本滞在中に練習を見てもらっている、成瀬葉里子コーチの提案だったという。
「以前は最後にループを飛んでいたんですけど、毎回成功できていたわけじゃなかったので、それを見て成瀬先生から『フリップ+トウの確率がいいから変えてみたらどうかな』って提案してもらいました。自分ではフリップ+トウを後半に跳ぶのは危険だと思っていてその考えはなかったので、後押ししてもらえたと思います」
この日、演技を終えてリンクから上がる際に、次に滑る小河原泉颯とグータッチのような形でエールを交わす場面があった。
「いいライバルです。彼はトリプルアクセルの質がすごくいいので、そこは本当に見習っていきたいところです」
ショートプログラムのトリプルアクセルは回転不足判定だったのだが、その理由については、
「6分間練習でいつもより回りすぎてしまって、それを本番の演技に向けてどう修正していこうかって考えてたんですけど、本番は回転が足りないという形になってしまいました」
このように説明してくれた。練習ではしっかり回って跳べているジャンプなので、完成まであともう少しなのだろう。彼は最近とみに、良く話してくれるようになった。スケートだけでなく、言葉でも自身を表現することを積極的にするようになった印象だ。今回の試合において、「スコアや順位を気にせずに取り組みたい」と語った後、その真意について詳しく話してくれた。
「全日本ジュニアで、フリーは自分の中ではすごく感触が良かったので、これはベストに近い点数が出るかもしれないと思っていたんですが、10点以上ベストに届かない点数をいただいて、苦しい思いをしました。それで点数、順位にとらわれずに楽しく演技ができることが1番なんじゃないかなって思うようになり、今回からはそういうとこにフォーカスしてやっていこうって考えました」
全日本ジュニアでは、来日して帯同してくれたブライアン・オーサーに良いところを見せたいと大会前に語っていたが、それは残念ながら叶わなかった。試合後、スタンドで二人並び、他の選手達の演技を見つめる姿が印象的だった。ブライアン・オーサーは、実は昨年のジュニアグランプリ選考会にも来日して帯同してくれていたのだ。田内誠悟にとても目をかけ、熱心に指導してくれていることが伺える。フリーの演技を総合3位で終え、試合後に再び語ってくれた。
「順位、点数を全く気にせずに、ただ自分のできることをやろう、出し切ろう、楽しもうと思って演技できました。その気持ちを大切にやっていけたら、結果も今日みたいについてくることが多くなるんじゃないかなって思っています」
1本目のトリプルアクセルはqマーク(1/4回転の不足)こそついたが、かなりクリーンに近いジャンプだった。2本目は転倒したが、これもqマーク判定と徐々に認定へと近づいているのが見て取れた。
「すごく緊張して(2本目の)アクセルを転んだんですけど、でも他のトリプルのジャンプは自分の中でもかなりいいものが揃えられたんじゃないかなって思っています。インハイの最終グループは全日本ジュニアの最終グループのような緊張感があるので、その緊張感の中で、後半、疲れた中でジャンプを綺麗にまとめられたっていうのは、練習の成果が出せたんじゃないかなって思っています」
以前、試合本番で緊張してしまい、練習の成果が発揮できなかった頃からは大きく変貌を遂げつつある。
「カナダに移って、練習の仕方と、試合へのピークの合わせ方、そしてスケートへの向き合い方っていうのを自分なりに形にすることができるようになりました」
トリプルアクセルが形になってきたことで新たな世界が見えてきそうだと感じている様子。ゆくゆくは4回転もプログラムに入れたいところだ。そして来季、今季は果たせなかったジュニアグランプリでの活躍を期待したい。
「ジュニアのラストシーズンになるので、もちろん行きたい気持ちはあるんですけど、でもその行くための過程を楽しめたらいいな、って思っています」
演技だけでなく、言葉での表現も個性が感じられるようになってきた。様々な経験を積んだシーズンを終え、来季は飛躍する姿を見られそうだ。
4位 高橋星名
4位 高橋星名
ジュニアグランプリでも活躍する実力者だが、この試合ではショートプログラムで大きく出遅れてしまった。冒頭の3ループからして上手くはまらなかったのだが、後半のコンビネーションジャンプ、3ルッツ+3トウを予定していたところが完全なパンク。加点込みで12点台を期待していたはずのエレメンツが0点に終わってしまった。
「やっぱり本番になってしまうと緊張がすごく出てしまって、力が入らなくて。練習でもなかったミスがいっぱい出てしまって、今はとにかく悔しいですね。ここまでミスが多かったっていうのは練習でもほんとになくて。それにジャンプだけじゃなくてスピンでもミスが出てしまって、もうなんか悔しいを通り越して、ちょっとびっくりです」
調子自体は良かったというが、本番に合わせることが上手く行かなかったと悔やんでいた。初めてのインターハイ、そして初めてのリンク。不安が大きかったのだという。
「このリンクで初めて滑ったのが昨日、ほんとに昨日の20分だけだったので、氷に自分のベストを合わせるのもちょっと難しかったです。まだ結構苦労してます」
フリーでは、見せ場の4サルコウこそ転倒したが、その後の立て直しに成功。フリーだけならば2位の好演技で総合4位と順位を上げた。
「転倒した後の切り替えの形を今まで練習してきたので、しっかりその練習の成果が出たかなと思います」
この日の演技で印象的なシーンがあった。後半のループ、空中で軸が外れそうになり、見ていてヒヤリとしたのだが、締め直してしっかり着氷。ここを耐えたことが大きかったと思う。
「後半、体力的にきつい中での練習を何度もくり返してきました。ループは練習でもあのぐらいになって耐えることが多かったんです。それもある意味練習通りかなと思います」
今季は良いことも悪いこともあったシーズンだった。特に早い時期から公言していた最大目標、ファイナル出場を逃したことは残念だった。
「今季は昨シーズンより緊張することが多くて、練習でできてても本番でできないってことが多かったシーズンでした。今回もショートではそうなってしまったんですけれども、フリーや他の良かった試合では緊張に少しずつ打ち勝ってきているので、少しずつでも成長していってるのかなと思います」
来季はその緊張を克服すること、そして4回転ジャンプの安定を期待したい。そうすれば今季逃したファイナル出場も再び叶えられるはずだ。
5位 小河原泉颯
5位 小河原泉颯
昨年のインターハイではショートプログラムで出遅れるもののフリーで順位を伸ばし、入賞を果たした小河原泉颯。今季はショートプログラムから好位置に付けることができた。ただ取材では、予定していた3フリップ+3トウが3+2になってしまったことを悔しがっていた。
「悔しいです。3+3降りればもしかしたら70点に乗ってたかな」
この日のスコアは66.44。フリップ+トウは後半だったので、ベースバリューの段階で3.19の損失。GOE、そして難度が上がることによるPCSへの影響を考慮すれば70点に乗っていた可能性は十分にある。そしてこの日、特に素晴らしかったのはトリプルアクセルのクオリティだ。見事な着氷のジャンプだった。
「6分間では降りてなくて結構不安だったんですけど、試合で結構質のいいジャンプアクセルできてほっとしてます」
GOEでは+2止まり。合計1.6点しか加点がなかったのだが、それはちょっと低いのでは?と感じるほどの質の高いトリプルアクセルだった。アクセルの練習をする上で参考にしている選手について聞かれると、
「羽生結弦君のでかいジャンプはめっちゃ好きです。あとジュニア世代だと、なんかあそこにいる中田璃士君とか」
と、近くにいた中田璃士を指すと、それに中田璃士が手を挙げて応えるという仲の良さを見せてくれた。
「フリーは今季あまり良くない」と不安を見せていたが、課題のフリーもまずまずの演技で総合5位を勝ち取った。ショート後に「5位以内を狙いたい」と宣言していた通りの順位だ。フリーでも冒頭のトリプルアクセルは綺麗に成功。すっかり安定した感がある。ループ、ルッツでの2つのパンクがあり、順位を落としてしまったが全体的には悪くなかったように感じる。
「トリプルアクセルは練習ではあんまり決めれてなかったので、自分の中ではたまたまみたいな感じなんですけど、でも降りれたことはすごい良かったです。ループは結構苦手なジャンプなんです。ルッツに関しては全日本ジュニアの時以来、練習をしてないんですよ。足の怪我があって、今は痛くないんですけどまた悪化したらと思うと怖かったので。右足首の疲労骨折でした。やっぱり練習しとけば良かったなっていう悔いは残ってます」
ところで彼は良く知られている通り、アイスダンスとの二刀流選手だ。今季はシングル、アイスダンス、共に全日本選手権出場という、快挙であり、同時にハードな経験をした。「いい経験になりました」と語るが、今後、どう両立していくかは悩みどころとなるだろう。もちろんアイスダンスを経験したことで、表現力、スケーティングなどプラスになったことも多々ある。将来はどんなスケーターを目指しているのだろうか。
「誰よりも目立つっていうか。誰よりも滑ってて、誰よりも上手い選手になりたいですね。友野一希選手と羽生結弦選手が混ざった感じですね」
それは最強じゃない、と返すと、
「最強ですよ。まじ。任せてください。なりますよ」
と、軽い口調ながら力強く宣言してくれた。楽しみにしたい。
J SPORTS オンデマンド番組情報
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第75回全国高等学校スケート競技・アイスホッケー競技選手権大会 フィギュアスケート競技 男子 決勝 フリースケーティング
配信日時 : 2026年2月13日(金)午後5:30 ~
6位 芳岡優希
6位 芳岡優希
6位に入賞したのは芳岡優希。かつて全国中学校大会で取材させてもらったことがあるが、その時は全く話してくれず、とても苦労したことを覚えている。元来、口下手な選手のようだが、最近はかなりしゃべれるようになり、演技以外の部分でも成長を感じられた取材となった。
「ショートを通過するのがまず目標でした。入賞は嬉しいです」
これには驚かされた。こちらの想像からはかけ離れた低い目標設定だったようで、入賞は全く考えていなかったのだという。とはいえ、ショートプログラムの内容は悪くなかった。3つのジャンプは回転不足もなくしっかりまとめ、他のエレメンツもまずまず。彼の場合、PCSが低い傾向にあるのだが、エレメンツをこれだけまとめればショート通過は当然だろう。そしてフリーでは、4回転を3本決める演技を見せてくれた。それもループ、トウループ、サルコウの3種類だ。4本目として挑んだトウループは残念ながらパンクしたが、トリプルアクセルは2本着氷。エレメンツ構成では最高レベルだ。実は以前より、練習でこの構成に挑んでいることは知っていた。愛知県のローカル大会や中部ブロックでも朝の公式練習では超高難度の構成に挑んでいた。ただ試合でこれだけ決められたことは初めてだ。
「本番で緊張するといつも結構ミスが多かったんですけど、今回は最初の3つ(の4回転)が結構感触が良かったんです」
これだけ良くなったことには何か理由があるのか、普段の練習について聞いてみた。
「跳び方を自分で考えて練習しています。教えてもらったことを自分で考えてやってたら良くなりました」
これはちょっと驚きだ。4回転の跳び方を自分で改良する選手はなかなかいない。それにしても本当に良く話してくれるようになった。「最近はインタビューにもちょっと慣れてきました」とのこと。彼は過去にいくつものクラブを移籍しており、現在は名古屋のグランプリ東海クラブに在籍する。今の練習環境はどうなのだろうか?
「今の環境はあんまり、毎日しっかりは練習できてないです。一般営業で練習することが多いんです」
名古屋、大須のリンクが本拠地のため、人の多い一般営業時間に練習することも多いのだという。あの人の多さの中で4回転を練習するのはなかなか厳しいのではないだろうか。
「今は、人が多くても4回転を跳べるようになってきました」
と、厳しい環境にも対応できているようだ。来季の目標について聞いてみると、これもまた驚きの回答をしてくれた。
「ショート、フリーをノーミスすることです。どの大会に出たい、とかは考えてないです」
普通はジュニアグランプリ、全日本などを目標にするのだが、彼はそういうことは考えていないそうだ。技の習得に関する目標については、
「4回転のフリップ、ルッツです」
つまり現在の3種類から増やして、5種類の4回転ジャンプを揃えることが目標なのだという。演技もトークも実に個性的。欲を言えばPCSに関わるスケーティングの部分をもうちょっと頑張ってほしい、との思いはあるのだが、本人はあまり気にしていない様子だ。個性派のジャンパーとして、目標を実現してもらいたい。
7位 名倉一裕
7位 名倉一裕
名倉一裕が7位入賞を果たした。昨年より順位は下がったものの、内容的には新たな進化を感じさせるものだった。決して高難度な構成をこなすわけではないのだが、とても端正な、質の高い演技で魅せるタイプだ。以前からその傾向があったが、今季はさらに質が向上したように感じる。
「中野先生のチームで練習するようになって、プログラムの曲かけを毎日ノーミスすることを意識して練習しています。そのノーミスを意識した演技の中で、ちょっとずつ余裕が出てきて、細かい動きにフォーカスした練習ができるようになってきました。そういった成長があって、良いものをお見せすることができたかなと思います」
今季から神戸クラブに移籍し、中野園子コーチの指導を仰ぐようになったことの成果が表れてきている、と実感している様子だ。今大会の演技は場内の観客にもとても受けていた。派手さはないが、スケートファンには刺さる演技をする選手だ。今後に向けてより高難度の技の練習は考えているのだろうか。
「トリプルアクセルは練習してます。してるんですけど、ちょっと怪我もあったので。でもアクセルは時々着氷できています。プログラムに入れるほどではないので、これからどんどん確率を高めて来季には必ず入れたいなと思っています」
来季の目標について尋ねると、
「ジュニアグランプリに出たいって気持ちがスケート人生の中でとても大きいので、とにかくジュニアグランプリに出れるように、そのビジョンを持っていつも練習しています。絶対出たいです」
そのためにはやはりトリプルアクセルは必須だろう。確率を高めて、是非とも来季の派遣を勝ち取ってもらいたい。
8位 三島舞明
8位 三島舞明
入賞を果たした三島舞明だが、この試合は決して良い状態で臨めたわけではなかったようだ。
「疲労骨折をして怪我明けだったんですが、それにしては出来たのかなと思います」
怪我明けだったとは思えないダイナミックな演技を披露したが、得意とする4回転ジャンプ、トウループで失敗したことは悔やんでいた。
「4回転でリピートついちゃったのが悔しいです。いつももうちょっと4回転調子いいんですけど、6分間で4回転の調子が全然良くなくて、それが本番に響いちゃって、焦って跳んだせいで、軸が斜めにずれてしまいました」
冒頭の4トウループは降りたものの、コンビネーションにする予定だった2本目の4トウループで転倒。レピュテーション(同じジャンプの繰り返しによる減点)となってしまったのだ。
「今日初めてフリーの通しをやったんです。ちゃんと最後まで滑れるかなって思ってたんで、滑り切れたことは自分の中で良かったかなと思います」
トリプルアクセルはオーバーターンはあったものの2本着氷でき、怪我明けというコンディションを考慮すれば十分な演技ができたと言えるだろう。最後のループをパンクしてしまったのだが、本当はここにコンビネーションを付けてリカバーをしたかったところ。本人もリカバーを意識はしていたのだが、パンクのために付けられなかったと反省していた。来季は万全の状態に仕上げて、持ち前の高い身体能力を生かした演技を再び見たいものだ。
文:中村 康一 / Image Works
中村康一(Image Works)
フィギュアスケートを中心に活躍するスポーツフォトグラファー。日本全国の大会を飛び回り、選手の最高の瞬間を撮影するために、日夜シャッターを押し続ける。Image Works代表。
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