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デフスポーツの文化について | 町田樹のスポーツアカデミア 【Dialogue:研究者、スポーツを斬る】 手話言語が拓くデフスポーツの未来 #20
フィギュアスケートーーク by J SPORTS 編集部デフスポーツの文化について | 町田樹のスポーツアカデミア 【Dialogue:研究者、スポーツを斬る】 手話言語が拓くデフスポーツの未来 #20
4年に一度のデフスポーツと手話文化の祭典デフリンピックが11月に東京で開催されます。そこで今回は、「ろう者学」ならびに「手話言語学」をご専門とされている大杉豊先生をお招きして、デフスポーツ文化の魅力や課題についてじっくりと議論していきます。第2回目の書き起こしコラムでは、大杉先生とデフスポーツの関係や、デフスポーツの文化について議論を進めていきます。
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町田樹のスポーツアカデミア 【Dialogue:研究者、スポーツを斬る】 手話言語が拓くデフスポーツの未来 #20
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大杉:国際ろう者スポーツ委員会は、11月にデフリンピックが開催されますが、それを統括している団体です。わかりやすく言うと、パラリンピックの統括団体はIPCという委員会ですよね。オリンピックはIOC。同じような見方でデフリンピックを統括するのは国際ろう者スポーツ委員会というところがあります。ICSDと言います。私はそこの副会長を担っています。
町田:デフリンピックが来月に控えていて、大学も始まって、研究者、教育者としても毎日フル稼働だと思うんですけれども、それに加えてさらに国際ろう者スポーツ委員会の副会長としてデフリンピック準備委員会も入っておられて、本当に今大変なんじゃないですか。
大杉:そうですね。東京でデフリンピックが開催されますので、全日本ろうあ連盟の皆さんや、東京都の職員の方々に力を合わせてもらって、一生懸命準備をしていただいています。ICSDの役割は、細かい問題をどのように解決していくかなど、組織委員会から受ける質問に対応していくことです。また、世界各国から東京に行くことを楽しみにしている選手がたくさんいます。彼らがエントリーをする方法や流れ。どのような立場から、どこで承認を受けられるのか、様々な質問に対して一つひとつ答えている状況です。一番いい方法とは何かを考えながら、スムーズに進むために今頑張っている状況です。
町田:裏に表に支えておられるわけですけれども、当然そのオリンピックパラリンピック、デフリンピック、そういうメガスポーツイベントは当然アスリートが主役ではあるんですけれども、やっぱり支える人あってこそですよね。オリンピックやパラリンピックもやっぱり開催すれば、その国、その都市において、そのスポーツを支える人材の育成の場にもなっています。デフアスリートのみならず、デフスポーツを支える人がたくさん輩出されたら、もっと日本のデフスポーツのイベントだったり、あるいはデフスポーツをする環境っていうのは豊かに、あるいは普及していくと思いますか。
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大杉:デフリンピックのような大きな大会が開かれるというと、やはり開催国というのは大変な苦労があります。聞こえる人達というのは、聞こえないろう者とどのようにコミュニケーションをとればいいのか、情報をどのように、音をどのように伝えればいいのかを、聞こえる人は頭で覚えようとすると思います。そうではなくて、実際にろう者に接して学んでいく。少しずつコミュニケーションの方法を覚えていく、一緒に進んでいくことが必要だと思います。デフリンピックが開催された後に、期間中に得た知識が広がっていくと思います。日本でももっとろう者のスポーツが展開されていく、またはサポートをしていくところが増えていくといいなと思っています。
町田:私たちの主体性も大事ですよね。このデフリンピックがせっかく東京であるんだから、私たちの方から聞こえない方々、デフアスリートと共にスポーツをやるという積極性も、この機会にどんどん聞こえる方々にも発信して、聞こえる人たちが積極的に聞こえない人たちを引っ張って、いろんな方々と共に進めていけたらいいなと思います。私も11月のデフリンピックでは、そういうことを意識しながら観戦したり注目したりしていきたいと思います。
■デフスポーツの文化について
参加資格
町田:次にデフスポーツの文化について深掘りをしていきたいと思います。私たちは今、当たり前のようにデフスポーツという言葉を使っていますけれども、このデフスポーツとは何なのかということを改めて押さえておきたいと思います。私は、聞こえない人、あるいは耳の聞こえにくい人たちがやるスポーツだと認識しているんですけれども、この言葉だと、ともすればまだちょっと漠然としていると思うんですが、具体的に参加資格などの観点からデフスポーツとは何かについて教えていただけたらと思います。
ろう者学とスポーツの関わり
大杉:ろう者、聞こえにくい人達が参加するスポーツ、確かに漠然としているかもしれませんね。デフリンピックが始まったのが100年前、1924年頃。そこからずっと、ろう学校を卒業した人が参加できるという決まりがありました。ろう学校の経験があれば良いということです。それが1955年ぐらいにIOCが国際ろう者スポーツ委員会を正式にスポーツ団体として認知しました。それからしばらくして、1970年を過ぎたくらいに時代の背景もあり、昔と違って通常学校に通う子どもたちも増えています。そうなると、以前のまま、ろう学校の卒業生・ろう学校の経験者だけということでは説明がつかない時代になってきました。そのため、1975年くらいに国際ろう者スポーツ委員会の総会で研究者と医師と一緒に議論をした結果、良耳の聴力損失が55デシベル以上であれば、ということを決めました。そこで、参加者の資格ができたことになります。
町田:ルールは一般のスポーツと変わらないんでしょうか。
大杉:そうですね。ろう者は身体の中で耳が聞こえない以外は全てのことができます。競技規則も一般の大会、オリンピックや世界選手権の選手と全く同じ種目、またはルール、規則を準じて行っています。
町田:悲しいことに、能力があっても一般のスポーツの予選に参加できないという差別があった時はあるものの、現代においては、もしその能力があるのであれば、デフアスリートも一般スポーツの大会に参加することができる。ともすれば、オリンピックにも参加することができるということですよね。
大杉:ろう者の選手がオリンピックに参加したことはたくさんあります。有名なのは南アフリカの水泳選手がいました。以前、北島康介選手と競い合って、たぶん北島選手に勝ったと思います。そのくらいの力を持っている聞こえない選手もいます。デフリンピックに参加して、金メダルをとり続ける方もいます。
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文:J SPORTS編集部
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