木下カンセープレゼンツ　サマーカップ2025フィギュアスケート競技会　ジュニア男子シングルプレビュー

　

今週末、8月9日より“木下カンセープレゼンツ サマーカップ 2025フィギュアスケート競技会”(サマーカップ)が開催される。ローカル大会ながらシーズン開幕を飾る夏の競技会としてすっかり定着したこの大会、ジュニアもトップクラスが揃い、とても見応えのある大会となりそうだ。ジュニアカテゴリーは、一部を除いて一般的にはまだ知られていない選手も多いだろう。だが将来有望な選手はとても多く、また私が取材していない選手でも短期間のうちに目を見張る成長を見せてくれることも多い。ジュニア男子についても出来る限り幅広く選手を紹介するので、是非今回の大会でお気に入りの選手を見つけて応援してあげてほしい。

中田璃士は全日本ジュニア合宿の取材にて、全日本での優勝に向けて「頑張ります!」と宣言していた。もっともこれは、島田麻央が全日本の優勝を狙うと宣言した話を記者から聞かされ、半ば誘導される形で答えたもの。実際には鍵山優真の壁は高いのだが、「4回転を4本降りて、自分のやることをやったら後は運です」との返答。運を引き寄せるために宿泊したホテルの部屋を綺麗にするなど徳を積むことをしている、と語っていたが、とても素晴らしい心がけだと思う。今季は世界ジュニア選手権の連覇、そしてファイナルのタイトル奪還を目指すシーズンとなる。スターの系譜を引き継ぐ選手として、さらなる進化を期待したい。

今季の高橋星名は、トリプルアクセルで確率が上がらず苦労しているようだ。ただこれは4回転ジャンプの練習を意欲的に行っていることの副作用のようなもの。現在、4回転ジャンプはアクセルを除く5種類を練習しているという。加えて身長の伸びの影響もあってジャンプの確率が落ちているようだが、まだシーズン序盤。これから調子を上げて、今季の最大目標としている名古屋でのファイナル出場をつかみ取ってほしい。今季のフリープログラム、 “ミッション”はかつて多くの選手が使った名曲。しっとりと落ち着いた曲調で、ここに大技が決まるととても映える。みなとアクルス杯ではミスが多かったのだが、サマーカップではより良い演技を期待したい。

蛯原大弥は今年1月のインターハイで、エキジビション前の練習にて4回転ルッツを成功。関係者の間で話題となった。その時は「とても試合で使える状態ではない」とのことだったが、先日の全日本ジュニア合宿でも4回転ルッツを成功。今もまだ確率は低いようだが、「4回転を2種類入れたい」との構想があるそうで、安定してきた4回転トウループの次に加える2種類目の候補としてルッツを考えているようだ。過去の戦績だけを見ると、さほど素晴らしい結果を残しているわけではないのだが、実際に滑りを見るととても良い選手だと分かる。歯車がかみ合えば一気に成績が上がる予感を感じさせる選手だ。彼も昨年出場できなかったファイナルを今季の目標として考えているとのこと。今季のジュニアグランプリは本当に激戦となりそうだ。

森遼人は昨シーズン、怪我のために十分な演技ができなかった。推薦出場した全日本選手権ではショート落ち、全国中学校大会は欠場した。ただそこから復帰を目指す今季、ジュニアグランプリの派遣を勝ち取るほど復調しているようだ。合宿の練習ではトリプルアクセルなどジャンプに苦労しているように見えたのだが、「加点の付きやすい跳び方を色々模索している段階」と、現状でのジャンプの確率については心配していない様子。何よりも今年は痛みもなく練習を積めていることが素晴らしい。

植村駿も演技を観るのが楽しみな選手だ。昨シーズンは西日本ジュニア選手権、全日本ジュニア選手権で素晴らしい演技を披露。今季も好調を維持しており、初めてのジュニアグランプリへの派遣が決まった。「自分の武器はスピード」と語る通り、スピードに乗ったスケーティングからのジャンプが魅力だ。今季はフリーで4回転に挑戦するそうで、こちらも楽しみだ。そしてショートプログラムには“ポエタ”を選んだとのこと。どんなポエタに仕上がっているのか大いに期待したい。

他にも注目したい選手は多い。昨シーズン、1年目のノービスAクラスながら全日本ノービスで優勝した佐久間陸もエントリーしている。全日本ノービス2連覇を目指す今季、全日本ジュニア合宿にも招かれたが、先輩方に交じっても物怖じすることはなかったようで、「植村駿と仲良くなった」と話してくれた。周藤集はとても雰囲気のある、滑りの美しい選手だ。昨シーズンは不調が続いたが、復活を期待したい。田中蓮音はとにかく華のある選手。表現力は以前から光っていたが、昨シーズンには3+3のコンビネーションジャンプも習得した。小河原泉颯 はアイスダンスとの二刀流ながらシングルも本格派だ。パートナーの吉田菫と同様、アイスダンサーとは思えない質の高いジャンプを跳ぶ。今季、ジュニアグランプリにアイスダンスで派遣されるのかどうか現時点では分からないが、貴重な二刀流選手として両方とも続けてほしいものだ。三島舞明はジャンプのポテンシャルがすごい。まだ粗削りな面が目立つが、ジャンプの迫力だけでも観客を沸かせられる選手だ。シーズン序盤からこのメンバーを観られるのは本当に幸せなことだ。どうか選手達の演技に声援を送ってあげてほしい。

文：中村康一（Image Works）