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ハイレベルな代表メンバーが出揃った女子シングル。日本からは千葉百音、樋口新葉、松生理乃が参戦 | ISU四大陸フィギュアスケート選手権2025 女子シングル プレビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部画像左から樋口新葉、千葉百音、松生理乃
欧州を除く地球上4つの大陸の、頂点を決める戦い。今年2025年は2月20日(木)から23日(日)までの会期で、韓国のソウルにて、ISUフィギュアスケート四大陸選手権の熱戦が繰り広げられた。
1ヶ月後の世界選手権、さらには1年後に控える冬季五輪の行方を占う上でも、見どころの多い大会となった。J SPORTSでは、3月17日(月)より、全種目全滑走放送でお届けする。
昨世界選の女子シングル表彰台には、日本、アメリカ、韓国からそれぞれ1人ずつ選手が並んだ。ボストンで開催される2025年世界選で、最大3枠の出場権を有しているのもまた、女子では同3カ国だけ。世界選3連覇中の坂本花織(日本)とGPファイナル覇者アンバー・グレン(アメリカ)は不在だが、世界屈指の層の厚さを誇る3つの強豪国から、ハイレベルな代表メンバーが出揃った。
中でも前半戦のクライマックス、GPファイナルの出場6枠中5枠(ジュニアも6枠中3枠)を独占し、国内選考が最も熾烈な国である日本は、千葉百音、樋口新葉、松生理乃を送り出した。
2年前にシニア国際大会2戦目にして四大陸初出場・初表彰台乗りを成し遂げた千葉は、ディフェンディングチャンピオンとして、ソウルに乗り込む。今季は初のGP大会表彰台(しかも2大会)、初のGPファイナル進出、ついには初のGPファイナル表彰台(2位)と、着々と世界トップクラスへの道を邁進中。早くから技術点と演技構成点(PCS)の両面でバランス良く高評価を得てきたが、近頃はジャンプの判定に少々苦しめられているかもしれない。一方で丁寧で精緻なスケーティング、姿勢の美しいスピン、たおやかながら芯の強さを感じさせる表現力はますます磨きがかかる。ショートプログラム(SP)「ラストダンス」ではアップテンポなダンスナンバーにも挑戦し、新たな魅力を大きく開花させつつある。
完全休養以前の強い滑りを取り戻した樋口は、3年ぶりのISUチャンピオンシップ帰還。弾力あるジャンプはもちろんのこと、キレッキレのスピードにダイナミックなステップは凄みを増した。北京五輪個人戦でSP・フリースケーティング(FS)ともに成功させた3回転アクセルに関しては、今季ここまで完全回避。代わりに難度の高い3連続ジャンプをFS後半に組み込み、GPアメリカ大会逆転優勝やフランス大会逆転2位を成し遂げてきた。SP「デューン」は、至高の出来。7年前の世界選2位にして、北京五輪で団体戦メダルに大いに貢献した実力者は、千葉や坂本と並んで、世界選への出場も決まっている。
松生もまた、3年ぶりの四大陸出場を決めた。GPシリーズでは、2戦とも、いずれもFSをほぼノーミスの1位で終えての表彰台乗り。特にカナダ大会はSP10位から総合2位という、とてつもない逆転劇で、強い精神力を証明した。初のGPファイナル進出さえ果たしている。柔らかく、優しく、どこまでも伸びていくようなエッジワークは、うっとりするほど美しい。PCS3項目のうち「スケーティングスキル」では、安定して8点台がつくようになってきた。
GPファイナルで4種目中3種目を制し、地元開催の世界選を前に勢いを増すアメリカは、アリサ・リュウとサラ・エヴァーハードをエントリー。また全米制覇で四大陸代表に選ばれたものの、出場を辞退したグレンの代わりに、ブレイディ・テネルが代表に入った。
それぞれに意味は異なるが、リュウとテネルにとっては「復活」のシーズン。16歳の若さで一旦は引退を選んだ前者は、嬉しい現役復帰。足首の故障で昨季をほぼ棒に振った後者は、27歳にして、キャリア2度目の再起を成功させた。
コロナ禍直前の2020年世界ジュニアで銅メダルを獲得し、世界が日常を取り戻しつつあった2022年世界選で銅メダルを手にしたのを最後に、氷から離れたリュウにとって、実は初めての四大陸。グレン、イザボー・レヴィトと並んで世界選へと向かう前の、大切な実戦の機会でもある。一方のテネルは2年ぶり4度目の参戦で、2度目の表彰台乗りをかける。前回の五輪イヤーは故障で完全休養を余儀なくされたからこそ、ベテランは現役続行にこだわる。勝負の来シーズンにつなげるべく、渾身のパフォーマンスを披露してくれるはずだ。
今季シニア本格転向の18歳のエヴァーハードは、正真正銘、生まれて初めてのISU選手権に挑む。「ノープレッシャーで、ある意味ファンみたいな気分」と語るように、思い切った演技を見せてくれるに違いない。
韓国はもちろん、開催国として、現時点でのベストメンバーをぶつけてくる。国内ランキング大会と国内選を制したキム・チェヨンに、両大会でシニアとしては2番手につけたユン・アソン、さらには2年前の四大陸女王イ・ヘイン。世界選も完全に同じ3人で戦う。
元世界銀メダリストのヘインに関しては、昨季終盤から問題を抱えてきたせいもあり、この四大陸がようやく今季の国際戦1戦目。また3年前の世界ジュニア4位アソンにとっては、シニアでは初めての大舞台。つまり国民の期待は、否応なしに、チェヨンへと集中する。
2季前のジュニアGPファイナル3位を最後に、シーズン半ばでシニアに転向したチェヨンは、目覚ましい成長を続けている。1年前の四大陸では、銀メダルを勝ち取った。続く世界選でも、銅メダルに輝いた。今季のGPシリーズは必ずしも成功とは言えないし(フランス杯4位、中国杯3位)、シニアのGPファイナル進出もいまだ達成できてはいない。ただ今回の四大陸のわずか1週間前に行われたアジア冬季競技大会で、両プログラムともに完全なるノーミス&オールレベル4の完璧な演技を実現させ……SP1位の坂本花織を退け、金メダルを持ち帰った!
さらり、と軽やかにジャンプを飛ぶ上に、極めてミスも少ない。小柄ながら、ジャンプの高さや幅は十分だし、回転不足やエッジエラーも最小限。公式戦での転倒は、ジュニア時代から通じてもなんとひと桁のみ。しかもジャンプ得点が1.1倍となるFS後半に、難度の高い連続ジャンプを2つも組み込むという驚異的な持久力。柔らかい肢体から繰り出されるスピンで、レベルを取りこぼすことも、稀にしかない。
なにより母国韓国で行われた大会で、チェヨンは現在、4試合連続優勝中。死角はほとんどない。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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