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3年連続で頂点に立ったギニャール/ファッブリ組「完璧ではなかったが自分たちの演技を誇りに思う」 | ISU欧州フィギュアスケート選手権2025 アイスダンス レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部3年連続で頂点に立ったギニャール/ファッブリ組
堂々たる勝利。シャルレーヌ・ギニャール/マルコ・ファッブリ(イタリア)が、あらゆる点で他の追随を許さず、3年連続でヨーロッパアイスダンス界の頂点に立った。今季前半戦で世界のトップ争いを大いに刺激した2組、エフゲニア・ロパレヴァ/ジョフレ・ブリソー(フランス)とライラ・フィアー/ルイス・ギブソン(イギリス)は表彰台の両脇に並んだ。好プログラム・好パフォーマンス続きの今大会は、たくさんのPBパーソナルベストで賑わい、2位から4位まではわずか1.07点差という接戦だった。
「とても満足しています。自慢したいわけではありませんが、得点面で圧倒できたことが嬉しいんです。完璧ではありませんでしたが、今日の僕たちの演技を誇らしく思います」(ファッブリ)
2人にとって13度目の欧州選手権で、改めてその高い技術力を発揮した。ツイズルで珍しく両プログラムとも男性側がレベルを取りこぼしたが、それ以外は盤石な足元を披露。RDリズムダンスでは、スピードに乗った正確なパターンダンスステップシークエンスでアイスダンサーとしての真価を見せつけ、FDフリーダンスでは、質の高いエレメンツでGOE出来栄え点を着実に積み重ねた。
35歳と36歳のカップル――ファッブリはユーロ優勝の翌日に37歳になった――はまた、ベテランらしい円熟味と、いつまでも失わぬ瑞々しさをも巧みに両立させた。
2024/25シーズンのRDテーマ「1950〜1970年代のソシアルダンス」に関して、実は「僕らにとっては簡単ではなく、このテーマが求めるものを正確に理解するのに時間がかかりました」と打ち明けた。ところが今や小粋なスイング風衣装をまとい、誰よりも軽やかにRDを跳ね踊る。
コンフォートゾーンだけに留まらない。FDは「今までとは違うモノを作りたい」と、昨季のエキシビションを競技用プログラムに作り変えた。決して簡単ではなかった。シーズン序盤から「ロボット風の力強くこわばった動き」と「アイスダンス特有の柔らかい足の動き」の配分に苦心してきたという。
「正しいバランスを見つけ出さねばなりません。僕たちにとっては挑戦でした。ようやく快適に滑りこなせるようになってきましたが、まだまだ改良できると感じています」(ファッブリ)
RDもFDも、TES技術点はもちろん、PCS演技構成点全3項目でもことごとく首位に立ったギニャール/ファッブリ組は、総合212.89点で3連覇を果たした。初優勝時2.99点差、昨季3.56点差と「逆転されてもおかしくはなかった」と語る過去2大会とは異なり、今回は5.36点差の快勝だった。
「初めて優勝した大会は、実は最悪だったんです。誰もが私たちを大本命に推していて、ものすごいストレスを感じました。去年は少しはマシでしたが……。でも今回は、本当に心から楽しめました」(ギニャール)
過去2回の世界選手権でも連続で台乗りを成功させ、今やアメリカのマディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組とカナダのパイパー・ギレス/ポール・ポワリエ組と並び不動の世界トップ3に数えられるギニャール/ファッブリ組だが、今季GPフランス杯では3連覇を逃した。FDで転倒があったせいであり、なにより優勝したロパレヴァ/ブリソー組が、素晴らしいパフォーマンスを2本揃えたからだった。
GP大会初優勝、初めてのGPファイナル進出と、今季明らかな躍進を遂げたロパレヴァ/ブリソー組は、「初めての欧州表彰台」を目指して欧州選に乗り込んだ。ただ2年前5位、1年前は4位と、1つずつステップを上がってきた2人は、慎ましく3位を想定していたという。
「正直、2位に入ったことに驚いています。メダルを取るために練習に励んできましたが、でも銀メダルだなんて……本当にすごいことです。想像さえしていませんでした」(ブリソー)
今大会トップ10のどのカップルよりも、今季ここまで数多くの試合をこなしてきた。欧州前ですでに8試合。つまり実戦でプログラムの完成度を上げてきた2人は、今回のユーロはRD、FD、総得点のすべてでPBをマーク。昨季までに比べれば、約6点半も伸ばしたことになる。
中でもPCSが大きく上がった。キッチュすぎて逆にクールなユーロディスコナンバーで踊りまくるRD「ラスプーチン」は、動きのシャープさやダイナミックな高揚感では群を抜き、PCSの「コンポジション」と「プレゼンテーション」で国際大会では初めての9点台を得た。
「他とは違うものを探し求めてこそフランス人」と、ロパレヴァ/ブリソー組は自分たちでRDの楽曲を決めたというが、FDでもあえてクラシカルなテーマを避けた。選んだのはBFRNDのシンフォニックテクノ。静と動とが交差する、ハードでダークな世界観を構築し、「スケーティングスキル」でもついに9点超え。PCSオール9点台という高評価を見事に手に入れた。
「FD前に2人で誓ったんです。今日の成績がどうなろうとも、私たちのやり方は変わらないって。ただリンクに戻って、今後もひたすらハードに練習を積むだけです」(ロパレヴァ)
GPアメリカ大会ではチョック/ベイツ組を、GPフィンランド大会ではギレス/ポワリエ組を上回り、GPファイナルでは初めてのメダルも持ち帰り……今季前半の台風の目となったフィアー/ギブソン組は、今大会はほんの少し冴えなかった。過去2年欧州銀メダルを射止め、いよいよ頂点獲りも期待されたが、むしろ一歩後退。銅メダルで大会を終えた。
「今回の経験は、この先に向けての良き教訓になります。大きなモチベーションにもなりますよ」(ギブソン)
特にRD「フリーク」は今季最低の得点だった。具体的なミスがあったわけではない。ただいつもならキレッキレなのに、フィアー曰く「電気的な」エネルギーが足りなかった。各エレメンツのGOEも伸び悩んだ。RD2位までの遅れは1.18点と、大きくはなかったが、むしろ4位との差がわずか0.31点。表彰台落ちさえ心配された。
実力者のフィアー/ギブソン組は、FDできっちり立て直した。強い意志の感じられる毅然とした滑り、明確で淀みのないムーヴメント、そしてフィナーレにはビヨンセの「クレイジー・イン・ラブ」で会場を熱狂の渦へ。FDだけならロパレヴァ/ブリソー組を上回る2位の得点を獲得し、総得点でも差を0.74点に詰めた。
「今日の演技後に胸に湧き上がってきた感情は、プライスレスです。自分たちのことをすごく誇りに思います。私たちは戦い、自分たちのやりたいことを、正確にやり遂げました」(フィアー)
ただ3位と4位の差は、0.33点差と僅差のままだった。ユーリア・トゥルッキラ/マティアス・ヴェルスルイス(フィンランド)が、RD、FDともにPBを塗り替える素晴らしい演技を見せたからだ。中でも今季屈指の名プログラムと謳われるFDのタンゴは、2年前に欧州選3位に輝いて以来のPB更新で、トータルでは7.48点も点を伸ばした。待望の、初の200点超えだった。
「パフォーマンスにはすごく満足していますし、メダル争いに加われたなんて素敵なことです。この得点をずっと目標にしてきましたし、今後も成長あるのみ。まだまだ進化の余地はあります」(トゥルッキラ)
オリヴィア・スマート/ティム・ディーク組(スペイン)のFD「デューン」もまた名作だ。今季GPアメリカ大会ではFD3位で逆転表彰台に歓喜し、今回もRD7位から5位へのジャンプアップを実現。やはりRD・FDともにPBを叩き出し、結成2年目にして初めてのユーロで総合5位食い込んだ。
折原裕香/ユホ・ピリネン組(フィンランド)は120%ポジティブパワー全開のRDでも、ストーリー仕立てで演じ上げるFD「コーラスライン」でも、嬉しいPBを勝ち取った。総得点ではなんと10点以上も伸ばし、欧州7位と躍進を果たしている。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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