人気ランキング
コラム一覧
第45回全国中学校スケート大会フィギュアスケート競技が、2月1日-4日の日程で長野県長野市、ビッグハットにて開催された。男子では、世界ジュニア選手権の代表、高橋星名が最終学年にして初優勝。昨年の悔しさを晴らすことができた。また2位に入賞した西野太翔は、フリースケーティングで自己最高と言って良い会心の演技を披露。他の上位選手達も素晴らしい演技を揃え、充実した大会となった。
優勝 高橋星名
高橋星名
最終学年にして優勝を果たした高橋星名。今年は世界ジュニア選手権代表として、負けられない立場で臨んだ大会だった。昨年は出遅れたショートプログラムで完璧な演技。2位に大差をつけてスタートを切れたことが大きかった。
「ショートは少し緊張もしていたんですけど、最後までしっかりと滑り切れて、まあ去年のリベンジになったかなと思います」
昨年は二つのジャンプで転倒、まさかの14位スタートだった。それが今年は76.41のスコア。見事なリベンジだ。全てのジャンプのランディングが綺麗に流れ、加点を稼げる演技となった。今季はどの試合でもショートプログラムが安定している印象だ。
「今シーズンはいろんな経験をさせていただいて、自分もそれなりに成長したと思います。今回、全中もいい調子で持ってこれました。最後の全中なので楽しく終わりたいです」
シットスピンの中で、キャノンボール(顔を太ももにつけて回るポジション)のままでジャンプをする場面がある。もちろんレベルを上げる要素なのだが、これはとても難しく、転倒の恐れもあるように見えるが、
「やってみようかなと思ってやってみたら一発でできたんです」
と、こちらが思うほどには難しいとは感じていないとのこと。レベル上げの要素をさほど数多くは練習していないそうで、この要素のおかげでシットスピンのレベルが安定したそうだ。
フリーでは、直前に滑った西野太翔がまさに圧巻の、白眉の演技。それを受けての最終滑走だった。
「西野君の演技はもちろんすごいと思いましたし、その分、少し緊張やプレッシャーもあったんですけど、その中でも自分のベストを尽くすことができました」
西野太翔の素晴らしい演技を受けて、場内に興奮の残る中、演技を始めた高橋星名は、4回転を回避する構成でありながらフリーでも1位となったのだ。
「今はすごく調子がいいわけでもなくて、ちょっと不安だったんですけど、最後まで全力を出せて優勝もすることができたので、とても嬉しいです。怪我であんまりジャンプができなかった時期もあったんですが、そういった時でもスケーティング、スピンをしっかりと練習してきたので、その努力が今回の演技につながったかなと思います」
ジャンプだけではなく、スピン、スケーティングなど、あらゆる要素の底上げがなされ、確実に加点をもらえる選手になってきたからこそ、絶好調でなくともこれだけの演技ができるようになったのだ。昨年の春に左ひざを故障し、ジャンプをあまり練習できない時期があったという。だがその時期に他の要素の練習に積極的に取り組んだ。その結果が今、こうして結実しているのだ。そして2月末には世界ジュニア選手権に出場する。
「今シーズンはだいぶ安定してトリプルアクセルを着氷することができています。世界ジュニアはこの調子で頑張りたいです」
フリー演技の中で、少し面白い場面があった。演技終盤、高橋選手がフェンスにぶつかって苦笑いを見せたのだ。このシーンについて解説していただいた。
「自分でもほぼノーミスを確信できていたので、ちょっとぶっ飛ばしちゃいました(笑)」
ノーミスでのフィニッシュが近づき、つい気持ちが昂ってスピードを出し過ぎたそうだ。シニア顔負けの演技をしていても、そういう中学生らしい微笑ましい面も見せてくれた。
世界ジュニア選手権では、4回転ジャンプを組み入れるか否かはまだ決めていないと語っていた。まずは世界の人に演技を観てもらうことが目標、と控えめな言葉も口にしていた。だが近い将来、世界のフィギュアファンが知る存在となることだろう。初出場の世界ジュニア選手権でどれだけのインパクトを与えてきてくれるのか、期待が尽きない。
2位 西野太翔
西野太翔
2位に入賞したのは西野太翔。昨年は優勝。ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ今年、ショートプログラムではコンビネーションジャンプでのミスを悔やんでいた。
「ルッツトウの3+3で、壁に近づいてぶつかってしまったので、しっかり調整することが大切だなと思いました。いつもより力が少し入ってしまって、まあスピードが出てたと思うので、それが多分ぶつかった原因になったのかなと思います」
フェンスにぶつかっての転倒。高橋星名とショートプログラムで点差が開いた原因となった。とはいえトリプルアクセルのクオリティなど、他の要素は軒並み素晴らしいものだった。今季はジュニアグランプリに参戦、全日本ジュニアでは表彰台に乗るなど、活躍を見せたシーズンだった。
「全日本ジュニアではフリーで最終グループに入ることができ、そこで他の皆さんの凄さを実感しました」
他の選手から良い刺激をもらえたシーズンだったようだ。とはいえ、大技にチャレンジするようになったことでなかなかパーフェクトなフリー演技ができていない印象もある。
「今はすごいパーフェクトを目指したいんですけど、もし失敗してしまったとしても最後までしっかりまとめる、っていうのを最近は心がけてます」
そして迎えたフリー。おそらく自身の過去最高であろう、圧巻の演技を披露した西野選手。結果は2位と連覇はならなかったが、それでも充実した、満足した表情で取材に応じてくれた。
「今シーズン、フリーがあまり良くなかったので、最後の大会でいい演技ができて嬉しいです」
冒頭の4回転サルコウを皮切りに、次々とジャンプを決めるほぼ完璧な演技。練習ではノーミスもできているというが、それを試合本番で出せたことは素晴らしいの一言だ。全日本ジュニアでは、表彰台に乗れたことは嬉しいと語っていたが、表彰式ではとても嬉しそうには見えない、悔しさをあらわにした表情が印象的だった。フリーでのミスを悔やみ、落ち込んでいたのだという。だがこの日は本当に嬉しそうな、いい笑顔を見せてくれた。
「来季は4回転トウループもやっぱり挑戦していかないと、と思います。しっかりそこを挑戦して、でも演技が崩れないように頑張りたいです」
中田璃士の名前を挙げて、4回転トウループに挑戦する意思を表していた。中田璃士に追いつき、追い越すためにも必須の要素だ。それにしても、この試合での4回転サルコウの成功は大きな自信となったようだ。直後の取材では「qマークが付いているかも?」と心配していたが、今回はクリーンな評価で加点ももらえる完璧なジャンプだった。サルコウについては、壷井達也のジャンプを参考にしているそうだ。
来季はジュニアグランプリでの活躍を期待したい。本人も、今季もらえなかった2試合目の派遣に意欲を見せていた。そして名古屋で開催されるファイナルを是非目指してもらいたい。
3位 岡崎隼士
岡崎隼士
昨年、1年生ながら2位入賞と衝撃の全中デビューを飾った岡崎隼士。今季はトリプルアクセルに挑戦したこともあり、波の激しいシーズンとなっていたが、ここではしっかりと調整を合わせ、3位入賞を果たした。ショートプログラムでは3ルッツ+3トウに挑戦。それも得点が1.1倍となる後半に組み込み、見事成功させた。
「今年は初めてルッツトウを最後に挑戦してみようと思ったので。まあ決められたので良かったと思います」
1年前の取材では、まだ怖いもの知らずの様子だった。ジュニアに上がり、シーズンを送った今、ジュニアならではの難しさを感じたところ、あるいは自信を持てたところなどを尋ねてみた。
「トリプルアクセルの安定性、試合で決めるのって自分の中でずっと難しいなと思ってました。ジャンプの回転不足とかスピード、そういうところが難しかったです。スケーティングはだいぶ力を入れてやってきたので、少し良くなったかなと思います」
彼は現在、林コーチに加え、重松コーチにも教わっているそうだ。
「重松先生にはスケーティングを教えてもらっていて、とてつもなくうまいって感じます。なんか滑りが根本的に違うんです」
重松コーチの指導を受けて、スケーティングの向上に手ごたえを感じている様子。そして迎えたフリーは会心の演技だった。3位入賞、2年連続の表彰台だ。
「トリプルアクセルも跳べたし、良かったなと思います。自分の中ではショートの時から表彰台を狙ってたつもりなので。まあ目標の順位に届いて良かったです」
プレッシャーを感じながらの演技だったようだ。
「前の松本君が118点だし、あれ、俺やばくない?って。でもそれでもっとさらにやる気が出ました。トリプルアクセルの入りの時に(力んだらダメだ)と思って、しっかり深呼吸してから跳べました」
今季、「波がすごかった」というトリプルアクセルを、全中の舞台で綺麗に決めることができた。全日本ジュニアの頃の不調から見事に脱却した印象だ。この日のフリーでは、トリプルアクセルの次に予定していた3ルッツ+3トウが3ルッツ+2トウになったものの、演技後半直前、本来は3ルッツ+2トウ予定だったものを3ルッツ+3トウに変更してリカバーする余裕も見せた。来季の目標については「他の人達も上手いので」と控えめな言葉だったが、ジュニアグランプリも現実的な目標になってくるだろう。トリプルアクセルに磨きをかけて、より上を目指してほしい。
4位 松本悠輝
松本悠輝
最近になって長足の進歩を遂げた選手だ。昨年はショート落ちだった彼が、今年は4位入賞を果たした。今回、初めて直接取材をさせてもらったのだが、演技中の落ち着いた雰囲気とは違い、とても表情豊かな面を見せてくれた。ショートプログラムは4位と好発進だ。
「今年の全中の目標は表彰台に上がることで、それに向けて頑張ってきました」
とはいえ、やはり緊張はしていたそうだ。
「冒頭の3ルッツ+3トウというのが結構心配でした」
そのコンビネーションジャンプはクリーンに決めたものの、シットスピンがノーバリュー、0点となってしまったことが悔やまれる。緊張が表れてしまったのだろう。とはいえ今季の彼は本当に進化している。特にジャンプの軸が細く、美しくなった。ランディングも綺麗に流れる。
「最近は陸上での、アップのジャンプ練習の時から、氷上みたいにランディングで(上半身を)引き上げて降りてくるみたいな感じで意識して練習しています」
上半身が下向きに落ちる癖があったものを、意識して引き上げる癖をつけているとのこと。そんな工夫、努力が結果に表れているのだろう。
フリーでは、3ルッツ+3トウで流れが詰まり、回転不足を取られる場面はあったもの、それ以外の要素は順調にこなし、118.66という高得点。すぐ後に滑った岡崎隼士にプレッシャーを感じさせたほどだった。ただひとつ、挑戦したいと言っていたトリプルアクセルに挑めなかったことは、悔しかったようだ。
「(トリプルアクセルは)まだ軸が作れていなくて、片足で降りられていない状態です」
今回、目標としていた表彰台にはあと一歩届かなかった。その点も悔しさはあったようだが、十分に素晴らしい演技でアピールができたと思う。来季の目標については、
「やっぱりトリプルアクセルを降りることと、4回転もちょっとずつ挑戦していけたらなって思います」
ジュニアグランプリも見据えて、ジャンプの充実を図りたいとのこと。またクリムキンイーグルを得意としていたり、エレメンツ以外のスケーティングでも魅せられる選手だ。来年の最後の全中では、表彰台に上るという目標を是非達成してほしい。
5位 堀野伊織
堀野伊織
中学生ながら体格が良く、ジャンプも高く、とても映える表現力を持つ選手だ。今季、地元の八戸で開催された東日本ジュニアでは素晴らしい演技を披露。ただ全日本ジュニアでは実力を発揮できず、フリーに進めなかった。その背景には、体調管理の難しさがあったようだ。彼は小学校5年生の時に1型糖尿病を発症し、今も血糖値管理に気を付けながら競技を続けている。1日三回、食事のたびに自分でインスリン注射を打っているそうだ。そういった事情もあり、遠征先では血糖値管理が上手く行かず、パフォーマンスに影響が出ることもあるという。広島で開催された全日本ジュニアと地元開催の東日本ジュニアとのパフォーマンスの違いには、そんな理由があったようだ。
ショートプログラムでは、練習してきた3ルッツ+3トウを回避したことを反省していたが、それでも3トウ+3トウに切り替えて3本のジャンプをミスなく揃えることができた。
「全日本ジュニアのような悔しい結果にならないように、しっかりとノーミスで万全の演技をできるように仕上げてきました」
3歳の時に、高橋大輔さんの演技に憧れてスケートを始めたのだという。高橋大輔さんに演技が似ているというわけではないのだが、同様に高橋大輔さんに憧れている三宅星南の演技を彷彿とさせるところがある。以来、順調にスケートの練習をしてきたが、小学校5年生の時、練習中に急に倒れ、1型糖尿病が判明したのだという。
「応援してくれている人たちや同じ病気にかかっている人たちに元気になってもらうっていうか、こんな病気でも頑張っている人がいるんだなって。みんなに勇気を与えられるような選手になりたいなって思っています」
そして感謝の気持ちをしきりに言葉にしていた。
「やっぱりコーチやファンの方々、あとはお母さんやお父さんにしっかりとサポートしてもらって応援してくださって、そういうのがあって、やっぱりここまで続けられてきたんじゃないかなって思います」
フリーのプログラムは“ウエストサイドストーリー”。身長の高い堀野選手にぴったりの選曲、振付だ。そして、挑戦を公言していたトリプルアクセルを成功させることができた。フリップが抜けたこと、後半に転倒があったことは悔やんでいたが、全体的には素晴らしい演技だった。
「フリーは体力的にもきついっていうのもあるんですけど、転んでしまったのはやっぱり自分の気が抜けてしまったせいかと思います」
このプログラムへの思いも語ってくれた。
「フリーの“ウエストサイドストーリー”、振付師は佐藤操先生です。このプログラムは誰かを思う気持ちを大切にしていて、踊ってて楽しいですし、自分でも気に入ってるプログラムです。映画も観ました。やっぱり愛があって、観て複雑な気持ちになって、最後の最後にはもう感情がごっちゃになったんですけど、そういう愛とか楽しさとか怒りとかを表現できたらいいなって思います」
今年が最後の全中だった。高校進学後も、くれぐれも体調管理に気を付けながら、益々の活躍を期待したい。
6位 小山蒼斗
小山蒼斗
6位に入賞したのは小山蒼斗。七北田中学校、そして浪岡コーチのチームという、仙台のフィギュアスケート選手としてはまさに王道コースだ。ショートプログラムは6位スタート。フリーは最終組で滑ることとなった。
「ショートはノーミスで58.9っていう点数が出て最終グループに残れたんですけど、最終グループっていうのでかなり緊張してしまいました。立て続けにミスが続いてしまい、フリーはとても悔しいかなと思います」
ただ決まったジャンプはとてもクオリティが高かった。特に冒頭の3サルコウ+3トウは軸が美しい、素晴らしいジャンプだった。
「元々は3ルッツ+3トウなどは入れていたんです。ただやっぱりルッツはちょっと自分にとっては危ないので、3サルコウ+3トウに変更しました」
浪岡コーチと言えば、佐藤駿、千葉百音を幼少期に指導したコーチだ。普段の指導について聞いてみた。
「かなり熱い先生なので、やっている時はすごい。もういっぱい指導してくれたり、ちょっとだらけちゃったりするとしっかり叱ってくれます」
そして現在の学校は七北田中学校。羽生結弦の母校だ。
「スケートのために転校してきました。元々の地元は南三陸町です」
出身地の自宅は東日本大震災の折、津波の被害を受けたそうで、仙台に移ってきたとのことだ。
「その時はまだ一歳半ぐらいでした。正直、覚えてないです」
仙台に移ってきてから、5歳の頃にアイスリンク仙台でスケートに出会い、本格的に取り組むようになったそうだ。中学校、そして同じコーチ門下のOBに偉大なスケーターがいるが、
「佐藤駿選手のジャンプの跳び方を、少し参考にさせてもらうところがあります」
と先輩を意識することもあるようだ。
「今後の目標は、試合でトリプルアクセルを跳んで加点をもらうこと。あとはPCSの点がみんなと比べてかなり低いので、そこも表現力やスケーティングを磨いていきたいです」
高校は東北高校に進学するのだという。まさに羽生結弦さんと同じコースだ。トリプルアクセルを組み入れた演技を披露することを楽しみに待ちたい。
7位 佐々木陽人
佐々木陽人
7位入賞は佐々木陽人。群馬県の選手だが、埼玉、上尾のリンクで練習している。フリーではカウボーイを演じる演技でファンの喝さいを浴びた。昨年も同じプログラムを滑っていたが、その時とは雲泥の差の演技で入賞を果たした。実は佐々木選手、腰椎分離症を患っていて、この全中はかなり無理を押しての出場だったようで、大会直後には医師の診察を控えていると話してくれた。
今年の演技で印象的だったのは、ジャンプ、スピン、共に軸の取り方が美しいこと。回転軸のセンターを的確に捉えるスピンは見事なものだった。そのコツをつかむきっかけが何かあったのか、尋ねてみた。
「腰椎分離症になってから、ジャンプをシングルだけにしていたんです。そうすると練習時間のほとんどをスピン、ステップに回したりすることになって、それで自然とスピンが上手になったとは思います」
まさに怪我の功名だ。そしてジャンプに関しては、いつも同じリンクで練習している佐藤駿の影響が大きいようだ。
「駿君の練習を毎日見て、少しずつでも真似できるようにしたいって思っています」
今季の自身の成長について、「ジャンプ以外のところが成長できたと思います」と語ってくれた。故障を抱えながらも、今できる練習を積み重ねてきた結果が表れているのだろう。今後は、まだ跳べていないトリプルアクセル、3+3を目標としているという。無事に故障を治し、来季は目標とするジャンプでの進歩を期待したい。
8位 植村駿
植村駿
今季、西日本ジュニア、全日本ジュニアと素晴らしい演技を続け、一躍有力選手へと成長した植村駿。しかしこの全中では不本意な演技に終始することとなってしまった。ショートプログラムでは、まさかのジャンプ2ミス。大きく出遅れることとなった。
「最初のアクセルとルッツがステップアウトになってしまってコンビネーションがつかなくて、そこが悔しいのと、ちょっと慌ててる感じがあったので、もうちょっと落ち着いて滑りたかったなと思います」
今季、全日本選手権までは順調に駒を進めたのだが、その後「ちょっとふわふわしている」との表現で、自らのコンディションが万全ではないことを吐露していた。
「最近の練習の感じが、ちょっとふわふわしてる気がして。ちょっと前のような安定感がちょっとなくなったかなと思います。靴を2週間前ぐらいに変えたことも影響しているかと思います」
その、「ふわふわしている」について、もう少し詳細を聞いてみた。
「足が氷を捉える力がもっと入ってたらと思うんですけど、今ちょっと力が甘いって感じがします」
怪我というわけではなく、本人も理由が良く分からない様子だった。そしてフリー演技、転倒こそなかったものの、ミスの多い不本意な出来栄えとなってしまった。
「練習通りの演技が全くできなかったので、すごい悔しいです。アクセルをミスっても他のジャンプで立て直せるような練習はしてきたんですけど、他のジャンプすら降りられなかったので。本当に実力不足だと思いました」
ジャンプのみならず、スピンでも軸を取るのに苦労していた。
「ここの氷があんまり好きじゃなくて、ちょっと他のリンクと違って浮くのでコントロールが難しいんです」
確かにここ、ビッグハットの氷は特殊だという。滑るのに力がいる割に、ジャンプは高く浮く、というのが選手達から聞いた印象だ。ただもちろん、ビッグハットの氷に適応して良い演技をしている選手も多い。植村選手の場合、最近の感覚のずれに氷の変化が加わり、どうすれば良いのかを見失っているように見受けられた。
「でもやっぱり全日本ジュニアの頃は本当に良かった。年明けてからちょっと気が緩んでる気がします」
今季は短期間のうちに大きく進歩し、一躍注目を集めたシーズンだった。
「ブロックから西日本にかけて、ファンの方々が増えて、応援があったのですごい支えになったんですけど、今回みたいに後半にミスがいっぱいあると、やっぱり見栄えが悪くなっちゃうと思います。メンタルがもっと強くならないといけないと思います」
今年が最後の全中。春からは高校生だ。
「今シーズンは自分の中でも一番成長したシーズンでした。いろんな上手なスケーターや先生方からいろんなアドバイスをもらいました。やっぱり今年はすごく自分のためになる年でした」
シーズン最後の締めくくり、全中こそ上手くはいかなかったが、相対的に素晴らしいシーズンだったと前を向いていた。トップ選手の一角へと成長した後、初めての不調に戸惑っている段階なのだろう。是非これをいい経験として来季につなげてもらいたい。西日本ジュニア、全日本ジュニアでの、あの華のある演技の再現を期待したい。
中村康一(Image Works)
フィギュアスケートを中心に活躍するスポーツフォトグラファー。日本全国の大会を飛び回り、選手の最高の瞬間を撮影するために、日夜シャッターを押し続ける。Image Works代表。
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
人気ランキング(オンデマンド番組)
-
【限定】アルペンスキー FIS ワールドカップ 2025/26 男子 ジャイアントスラローム カッパーマウンテン/アメリカ(11/28)
11月28日 深夜1:50〜
-
スノーボード FIS ワールドカップ 2025/26 男女 ビッグエア シークレットガーデン/中国(11/29)
11月29日 午後1:20〜
-
【限定】スキージャンプ FIS ワールドカップ 2025/26 男子 ラージヒル ルカ/フィンランド(11/29)
11月29日 午後10:55〜
-
【限定】スキージャンプ FIS ワールドカップ 2025/26 男子 ラージヒル ファールン/スウェーデン(11/26)
11月26日 午後11:00〜
-
スキージャンプ FIS ワールドカップ 2025/26 男子 ラージヒル ルカ/フィンランド(11/30)
11月30日 午後10:35〜
-
【限定】ノルディック複合 FIS ワールドカップ 2025/26 男子 ラージヒル/7.5km ルカ/フィンランド(11/28)
11月28日 午後8:05〜
-
【限定】スキージャンプ FIS ワールドカップ 2025/26 男女 ラージヒル【混合団体戦】 リレハンメル/ノルウェー(11/21)
11月21日 午後11:50〜
-
スキージャンプ FIS ワールドカップ 2025/26 男子 ラージヒル リレハンメル/ノルウェー(11/23)
11月23日 午後11:45〜
J SPORTSで
フィギュア スケートを応援しよう!
