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本命はユーロ3連覇を目指すアダム。最大勢力のイタリア勢にも注目! | ISU欧州フィギュアスケート選手権2025 男子シングル プレビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部ISU欧州フィギュアスケート選手権2025 男子シングル
長い伝統と高い格式を誇りつつも、常に新たな風が吹き込み、強い個性が花盛り。そんな欧州フィギュアスケート界の、2024/25シーズンの頂点を決める大会が、1月29日から4日間かけて繰り広げられる。
戦いの舞台はおなじみ、ここ10年で6度目のISUチャンピオンシップを迎えるエストニアの首都タリン。なにしろコロナ禍中の2022年に欧州選だけでなく、急遽、四大陸や世界ジュニアさえ引き受けたフィギュア界の救世主である。そもそも今大会も、クロアチア中止を受けてのこと。
ロシア不参加の影響で、近年のユーロはことさら熾烈で……時にサプライズを演出してきたが、果たして今年はどんな素敵な勝者が誕生するのか。3月の世界選手権に向けて、さらには1年後に迫った冬季五輪に向けて、タリンでの真剣勝負から目が離せない。
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調子さえ完全なら、アダム・シャオ・イム・ファ(フランス)が問題なくユーロ3連覇を達成できるはずだ。パーソナルベストは、今大会参加者で唯一300点を超える。
ただ現時点では、残念ながら100%ではない。昨春から悩まされていた右足首の靭帯損傷が悪化し、グランプリファイナル欠場を余儀なくされたアダムが、4回転練習を再開したのはようやく年が明けてから。
本人は「勝てる調子はあると思うけど……」と語りつつも、自分の両肩にプレッシャーをかけるつもりもないそうだ。目標はあくまで「クリーンな演技」。むしろ3月の世界選手権で2年連続表彰台乗りを成功させるための、実践調整ととらえている。ジャンプ難度を少し落として臨むとも報道されている。そもそもフリーでは昨季は4回転4本を飛んでいたが、今季前半戦は3本に抑えていた。
それにしてもアダムは、果たしてどちらのプログラムを選ぶのだろう。今季はショート用に2つのプログラムを準備し、大会によってチョイスする……という前代未聞の方式を採用した。しかも内容は、濃厚フレンチ(1・3戦目)とヒップホップ(2戦目)と正反対。ともかく本番のお楽しみ。一方のフリー「デューン」では、アダムだからこそ描き出せる無機質で不条理な世界観を、心ゆくまで堪能したい。
ケヴィン・エイモズ(フランス)には、今度こそ彼のキャリアや実力にふさわしい場所に立ってほしい。2年前は欧州&世界選で4位と充実のシーズンを送りながらも、1年前の欧州でまさかのショート落ち。「自分にプレッシャーをかけすぎた」せいだった。
絶望の底から這い上がれたのは、自分には「氷」が必要なのだと、心の底から理解したから。肩の荷をおろし、心身の健やかさを取り戻した今季、エイモズは本来のポテンシャルをのびやかに解放している。GPアメリカ大会フリーでは、27歳にして、パーソナルベストを3点以上も塗り替えた。同大会で得たトータル282.88点はまた、今大会参加者の中ではシーズン最高点でもある。
そのFSでは、ヴァン・ゴッホをテーマに、陰鬱な苦しみと、感情の濃淡を繊細に描き出す。これは「自分自身の物語」とエイモズ。繊細で感激屋のアーティストに、美しいメダルがきっと良く似合う。
やはり難しい2シーズンを過ごしてきたダニエル・グラッスル(イタリア)には、ユーロ表彰台復活が待たれる。単純に今季ここまでの4回転ジャンプ構成だけ比較すれば、今大会最強。SPにループとルッツ、FSにサルコウ、ループ、ルッツを飛ぶ。
2度の表彰台に乗ったGPシリーズ中の、まるで謎掛けのようなSP「ノクターン第20番」は魅力的な野心作だったけれど、ファイナルから新プログラム「ヒューマン」に切り替え。よりスピードと流れを保ったまま、武器の大ジャンプへと入れるようになった。FSは「ビリーエリオット」のバレエレッスン風景を、ちょっぴり変わった編曲で、躍動感たっぷりに演じ切っている。
昨ユーロで3度目の欧州表彰台を射止めた直後に、予定していた臀部の手術を行ったマッテオ・リッツォ(イタリア)は、順調に復活への道を歩んでいる。4回転に関しては、ここまでトーループを完全回避。ループのみで参戦してきたが、幸いにも気品あふれる端正なスケーティングと、大きな加点がつく3回転アクセルが損なわれることはなかった。復帰優先でプログラムは昨季からの継続で戦ってきたが、どうやら今大会で新FSを披露するらしい。
ニコライ・メモラ(イタリア)は、年末のイタリア選手権で、FSを3シーズン前の「モディリアーニ」に戻した。18歳の当時はいまだジュニアGPを転戦していたが、21歳の成熟した演技力と色香が、プログラムに新しい魅力を吹き込んでくれるだろう。
ちなみに今ユーロの男子シングルに唯一最大3人を送り込んだイタリアだが、来る世界選には、2枠しか有していない。タリンの氷の上で、3月に向けた代表争いも白熱しそうだ。
さらりと力みなく、流れも幅もある4回転ジャンプに定評の高いニカ・エガーゼ(ジョージア)は、これまでのサルコウとトーループに加え、今年からルッツも飛んでいる。しかも今季GPアメリカ大会ではSP・FS・トータルでパーソナルベストを更新し、確実に欧州表彰台候補の一角にあげられる。
フィギュアスケートは決してジャンプだけじゃない!と心の底から思わせてくれるのもまた欧州男子の魅力。パフォーマーとして名高いルーカス・ブリッチギ(スイス)とデニス・ヴァシリエフス(ラトビア)は、今年もそれぞれに素晴らしい作品を作り上げた。
複数言語が書き込まれたコスチューム、手話を取り入れた振り付け、そしてチャップリンの映画「独裁者」のスピーチ……。ブリッチギのSPは、見る者に世界平和や人類愛への深い考慮を促す。そしてヴァシリエフスのFS「ラ・バヤデール」はまさしく王道、プリンシパルの風格。すべてのポジションが本物のバレエで、中盤にはうっとり夢のような時間を演出し、そして大正義イーグルからのフィナーレへ。ご存知2人ともユーロ表彰台経験者であり、ブリッチギは4Tを飛ぶし、ヴァシリエフスも常に真正面から4Sへ取り組んでいる。
ただ、もちろん、タリンの観客を最も興奮させるのは……エストニアのセレフコ兄弟なのだ!
兄のアレクサンドルは、1年前のユーロで、エストニア男子として史上初めてのメダルをつかみとった。その後の世界選でも11位と奮闘。弟のミハイルは今季12月のチャレンジャーシリーズ・ゴールデンスピンで、その兄を破ってシニア初優勝を飾り、その後のナショナルでは3年連続でエストニア王者にも輝いた。キレのある兄と、滑らかなミハイル。仲良し兄弟は、異なる魅力を放つ。
おそらくプレッシャーも大きいだろうが、地元ファンの大きな声援を、力に変えてほしい。とにかく今季の兄のSPはのけぞるほどかっこいいから……アリーナを熱狂のるつぼに変えることは間違いない。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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