王者マディソン・チョック＆エヴァン・ベイツ組、大会4連覇なるか？ | 全米フィギュアスケート選手権2025 アイスダンス プレビュー

全米フィギュアスケート選手権2025 アイスダンス

全米チャンピオンという、名誉あるタイトルをかけて。

シーズン前半戦のクライマックス、グランプリファイナルで、アメリカは男子・女子・アイスダンスと3つの種目を制覇し、改めてレベルの高さを証明した。そんな世界屈指のフィギュアスケート大国の頂点を巡る戦いが、2025年1月23日から26日まで、中西部カンザス州のウィチタで開催される。

全米フィギュアスケート選手権はまた、シーズン後半戦のISUチャンピオンシップに向けた代表選考大会でもある。特に今年3月の世界選手権は、米国のボストンで開催される。才能や個性にあふれた選手たちが、4色のメダルーー金・銀・銅・錫（ピューター）ーーとUS代表チーム入りを目指して、今の自分に出来る最高の演技を披露してくれるはずだ。

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層の厚さは、文句なしに世界一。アイスダンスファンにとって、全米選手権は、とてつもなく豪華で贅沢な大会だ。ひどく悩ましい時間でもある。出場全15組に対して、メダルは4つだけ。世界最多の9組を今季GPシリーズに送り込んだが、世界選には最大3組しか進めない。

王座は、今季もおそらく不動だ。全米制覇5回にして3連覇中のマディソン・チョック＆エヴァン・ベイツ組が、ますますチャンピオンとしてのオーラを増している。

たしかにシーズン初戦のGPアメリカ大会では、リズムダンスで転倒があり、まさかの2位に終わった。2年ぶりの黒星……。さすが世界選2連覇中のチョクベイは、すぐに体制を立て直した。それ以降の大会は、リズムダンスもフリーダンスも、すべてをきっちり1位でまとめた。悠々とGPファイナル2連覇も果たした。

ただミスのあったRDは編曲をやり直した。50～70年代のヒットパレード満載の、まるでジュークボックスのようなプログラムだが、使用曲数を当初の11から8に厳選。会場が盛り上がる構成に進化した。しかも楽しい時間は、昨夏2人が結婚式を挙げたハワイが舞台のドラマ「Hawaii Five-O」のテーマ曲から始まる！

FD「テイクファイヴ」は珠玉のプログラム。小粋で、お洒落で。煙ったジャズバーの気だるい雰囲気を、氷上で見事に再現している。冒頭のローテーショナルリフトからのコレオスピンムーブメントの流れで、磁力のように我々の視線を引きつけると、軽快なリズム転調で一気にラストまで駆け抜ける。ISUアワードで最優秀コスチューム賞を2度受賞している同組らしく、このFDのチョックのドレスもまた、うっとりするほど魅惑的だ。

アメリカ2番手の地位を、クリスティーナ・カレイラ＆アンソニー・ポノマレンコ組は確実に築きつつある。全米選手権で一昨年3位、去年2位とステップを上がり、今季はGPシリーズで2度の表彰台に立った。

世界ジュニアで2度メダルを獲得した時代から、足元が滑らかで、成熟度の高いカップルとして評価は高かった。さらに近年は芯の通った安定感と、骨太な迫力を身に着けた。魅せる演技にも磨きがかかった。特に今季FD「カルメン」は、R-16に指定されそうなほど大胆で官能的。これぞ元五輪＆世界チャンピオンのスコット・モイヤー直伝のパッションか。

前回の五輪直後には、キャロライン・グリーン＆マイケル・パーソンズ組こそがアメリカ2番手とみなされていた。ただ2022年四大陸選手権で金メダルに輝き、翌2023年全米で2位に入った直後から、少々スランプ気味……。

もちろん元ジュニア世界チャンプのパーソンズの、確かな技術力はお墨付き。「難しい時からこそ学ぶものが多い」というグリーンの真摯な言葉からも、2人は前進を続けている。キュートでパワフルなRDもめちゃくちゃ楽しいが、FDの端正な滑りには、カップルとしての深みを感じる。

一方でエミリア・ジンガス＆ヴァディム・コレスニク組は、今がぐんぐん伸び盛り。やはり元ジュニア世界王者コレスニクの巧みなエスコート能力が光り、ジンガスがアイスダンスを始めてたった8ヶ月で全米4位に入り、2年目の昨季は四大陸メダル獲得までわずか1.07点差に迫り、3年目の今季はGPフィンランディア・トロフィーでは堂々FD3位に喰い込んだ。

昨年の全米3位に飛び込み、爽やかな風を吹き込んだのがエミリー・ブラッティ＆イアン・ソマーヴィル。その後、初めての世界選手権で転倒し、まさかのRD落ちという失望も味わった。今季のGPカナダ大会でもFD転倒で苦しんだが、翌週のフランス大会では、嬉しい初めてのGPシリーズ表彰台乗り。

3年前のジュニア世界チャンピオンカップル、ウーナ・ブラウン＆ゲージ・ブラウンは、ずば抜けたリズム感で、ジェームス・ブラウンをかっこよく踊りこなす。1年前のジュニア世界チャンピオンカップル、レア・ネセット＆アルチョム・マルケロフ組はシニア転向1年目ながら、氷上で放つエネルギーは強く、すでにカップルとして完成の域に達している。

また着実に実績を積み上げてきたエヴァ・ペイト＆ローガン・バイ組、今季新たにチームを結成したアナベル・モロゾフ＆ジェフリー・チェン組（ご存知、振付師ニコライ・モロゾフの愛娘とカレン・チェン弟）、さらには今季ジュニアGPファイナル銀メダリストながらシニア全米に挑戦するカタリナ・ウォルフコスティン＆ディミトリー・ツァレフスキー組と、まだまだ見逃せないカップルは多いのだ。