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フィギュア スケート コラム 2025年1月20日

「スケールオブバリューに5回転を記載」|町田樹のスポーツアカデミア【Forum:今シーズンのルール改正点とISUの中期ビジョン】

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
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スピンのレベル要件に関するルール

スピンのレベル要件に関するルール

スポーツアカデミアへ、ようこそ。町田樹です。今回のアカデミアでは、フィギュアスケートのルールフォーラムを展開していきたいと思います。

いよいよフィギュアスケートのシーズンも本格化し、国内外ではスケーターたちが熱戦を繰り広げています。パリオリンピック直後ということもあって、世間ではあまり意識されておりませんけれども、今シーズンはミラノ冬季オリンピックのプレシーズンです。来年3月の世界選手権ではオリンピックの出場枠が決まります。今シーズンはそのような大事なシーズンなのですが、実は今年6月に開催された国際スケート連盟の総会でルール改正がなされました。この改正に伴い、すでに選手たちは新しいルールに対応した演技を披露しています。

また、この総会ではルール改正のポイントだけでなく、ISUの中期目標であるビジョン2030も発表され、今後フィギュアスケートをどのように進行していくべきかが話し合われました。というのも、今フィギュアスケートは決して盤石な状態ではなく、その勢いに若干陰りが見られるものですから、競技の未来について真剣に話し合わなければならない時期に差し掛かっているというわけです。

さて、そこで今回は国際スケート連盟の技術委員としてご活躍されている岡部由紀子先生をお招きし、ルール改正のポイントやISUのビジョンについて深掘りしながら、フィギュアスケートの今後を議論していきたいと思います。

スケールオブバリューに5回転を記載

スピンのレベル要件に関するルール

スピンのレベル要件に関するルール

町田(以下M):続いて、スピンのレベル要件に関しても若干のルール変更がありました。大きく変わったのは、レベル要件のひとつに難しいブレード機能というものが加わったことです。例えばスピンのバランスですとかコントロール。あるいは実行のスピンに重大な影響を与える方法でブレードを使用する。これはかかとで回ったり、つま先で回ったりということだと思うのですが、早速、今シーズンは取り入れている選手が見られますね。

岡部(以下O):昨シーズン、記憶にある方もいらっしゃるかと思うんですが、エストニアの選手がとても素晴らしく綺麗に使用しています。彼はトウも素晴らしいものができるんですね。今年から始まったものですので、「何回で必要なんですか」という質問とか来ることもありますが、今のところその規制はなく、きちんと見えていれば、「ちゃんとフィーチャーとして取れます」という話をしています。

M:昨シーズン、私も解説していて、アレクサンドル・セレフコ選手のスピンを見てびっくりしたし、フィギュアスケートのスピンを進化させるひとつの工夫だと思いました。すごくうれしく見ていたんですね。クオリティが素晴らしいですし、多くの選手が取り入れ始めているので、ご注目です。

それから、ウィンドミル。2年前のシーズンですかね。難しい出方がスピンのレベル要件のひとつとして加えられたわけですけれども、従来だとウィンドミル、バタフライ、ホップ、ニースライド。いろいろとスピンのレベルを上げる工夫が見られました。その中でウィンドミルだけは難しい入り方。出方として認めない。これは多くの人がやって、しかもそこまで難しくないという判断なのですかね。

O:ウィンドミルはノンベーシックとしてとか、難しい姿勢の変更としても取り入れることができますので、そちらで採用してほしいというところ。難しい出方、入り方というのは認められなくなりました。ただし、出方としてブレードを持って行われた時のみは取りますよというルール変更になりました。

M:それから、すでにやったポジションとの組み合わせはレベル要件としてカウントされない。私は読んでいてよくわからなかったのですが、解説していただければと思います。

O:実行済みのポジションは、難しいポジションですね。難しいポジションというのは、レベルを取るための特徴のひとつとなっているのですが、その難しいポジションの組み合わせで、すでに行われた難しいポジション。例えば難しい姿勢の変更も、ひとつのレベルを上げるための特徴のひとつなんですけれども、それが組み合わさってしまった場合には、レベル要件としてカウントされないということです。

噛み砕きますと、キャメル・フォワードという形があるんですが、キャメル・フォワードをすでに難しいポジションとして使った場合に、例えばシットからキャメルポジションになる難しい姿勢の変更。この時にキャメル・フォワードを使う選手が今までとても多かったんです、でも、これをしてしまうと、それはカウントされません。すでに難しいポジションを使ってしまっているから、というところです。

M:だから、いろいろなバリエーションと組み合わせを持っている選手じゃないと、スピンのレベルが取りづらくなっているということですよね。

それでは続きまして、コレオシークエンスです。今までも膝を使ったスライディングは使えていたんだけど、ひとつもしくは2つの膝を使ったスライディングは「スケーティングムーブメントとして認められるよ」ということが、改めて明文化されたのですね。

O:こちらはもう明文化ですね。今までは2つのムーベントという言葉だけだったのですが、今シーズンからはスケーティングムーベントに、スケーティングというワードを足したんですね。

それを考えた時、膝を使ったスライディング=ニースライドと呼んでいますけども、それはスケートじゃないのではないかと思われる方がいらっしゃるので「それもカウントしますよ」という明文化です。

M:本来想定されていたのは、スパイラル、イナバウアー、イーグルがスケーティングムーブメントの最たる例だったのですが、紛らわしいから明文化して「ニースライドのスケーティングムーブメントですよ」と、定義づけられたということです。

では、主なルール改正点の最後。スケールオブバリューという基礎点表についに5回転が明記されました。ご存知の通りイリア・マリニン選手が全人未到の4回転アクセルを成功させた。次はもう5回転。あと半回転で5回転行くという段階にいよいよ到達したからこそ、ISUも5回転を意識し始めたということなのでしょうか。

5回転ジャンプの基礎点明記

5回転ジャンプの基礎点明記

O:そうですね。おっしゃる通りで、我々、特別に推奨はしていないのですが、実際、試合で5回転に挑戦してきました。そういう選手がいた場合に、システムの中にそれが組み込まれていないと0点になってしまう。それは避けなくてはいけないことになりまして、14点が妥当ではないかというところで、現時点で14点という設定をさせていただきました。

M:学術界の中で、運動生理学者は5回転がどうなのかという議論しています。アメリカの運動生理学者は、5回転は不可能なのではないかと。道具などが劇的に変わらない限りは「無理なのではないか」というような見解も出されていることもあり、ここが人間の頂点かどうかが、本当にラインだと思うんですよね。

O:コーチの中には「5回転は可能だ」とおっしゃっている方もいます。

M:今のトップ選手。例えば4回転トウループなどの技を見ると、私たちにとってのトリプルトウくらいの感覚で飛んでいるから「いけるのかな」と思っているのではないかと。でも、人間の思考が現実化するともよく言われますから、こうして改めてスケールオブバリューに組み込まれて意識すると、もしかしたら到達してしまう選手もいるかもしれないです。

O:半分、楽しみにしたいと思います。

総会の決議を持って決まるルール改正

M:以上が今シーズンの主なルール改正点になります。ただ、例えば今シーズン。当初ジャンプの数が今まで7回だったのが6回になるのではないか、いろいろと大きなルール改正があるのではないかと目されていました。振り付け師はそれを見越して6本でフリースケーティングのプログラムを作ることもあったと思います。

でも、6月のISU総会でルール改正の要点が決まって、蓋を開けてみたら7本のままだった。急ピッチでフリープログラムを手直ししたり、0から新しいフリープログラムを7本のジャンプで作ったりということが起き、混乱しています。選手の頃から提言していたのですが、ISUのルール改正って時期が遅くないですか。その点はどのようなお考えでしょうか。

O:本当におっしゃる通りで、選手の皆さんは世界選手権が終わった時点で、すぐに来シーズンのプログラム作りに入っていくんですよね。その中で、6月の総会で初めてそういった大きな変更があるというと、確かに遅いと思いますね。なんですけれども、議案はその前の年の9~11月の時点でもう上がってきているんです。それに対して、最終的に4月の時点で緊急のものなども含まれて、6月には総会が行われて決定されるという仕組みになっています。

それをどこで早くするべきなのかと言うとどこがいいのか。シーズン中は皆さんもコーチも、それから連盟の方々も皆さん忙しくしていらっしゃるので、とても総会は行えない。今の時点では、いつに総会を持ってくるのがいいのかは、なかなかいい時期が見つけられない。それが現状ですね。

M:現場は大変ですよね。

O:そうですね。本当に振り付けの先生方。それからコーチの皆さん。選手ももちろんなんですが、今回はとても混乱を招いたと思います。

私個人的にもコーチの方からとてもたくさんの質問をいただきました。その中で私が言えることは「総会が終わるまでなんとも言えない。私としてはお答えできません」と。一見、冷たく感じたと思うんですけれども、質問をしてくださったコーチの方には「それでいい答えだったと思います」ということは後から聞きました。

M:こればっかりは投票で決まるものなので、最後まで投票結果もわからないところですもんね。あくまでも決議。最終的な意思決定はISU総会でなされるから、それまでにどれだけ憶測やアジェンダが出ても、それを鵜呑みにしない。総会での決議を持って初めて決まるものだから、ここを注視するしかないということですよね。

O:残念ながらそれしかお答えが、出せないというところです。

文:JSPORTS編集部

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