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フィギュア スケート コラム 2025年1月17日

「バックフリップの解禁も大きな変更点」|町田樹のスポーツアカデミア【Forum:今シーズンのルール改正点とISUの中期ビジョン】

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
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町田樹のスポーツアカデミア【Forum:今シーズンのルール改正点とISUの中期ビジョン】

町田樹のスポーツアカデミア【Forum:今シーズンのルール改正点とISUの中期ビジョン】

スポーツアカデミアへ、ようこそ。町田樹です。今回のアカデミアでは、フィギュアスケートのルールフォーラムを展開していきたいと思います。

いよいよフィギュアスケートのシーズンも本格化し、国内外ではスケーターたちが熱戦を繰り広げています。パリオリンピック直後ということもあって、世間ではあまり意識されておりませんけれども、今シーズンはミラノ冬季オリンピックのプレシーズンです。来年3月の世界選手権ではオリンピックの出場枠が決まります。今シーズンはそのような大事なシーズンなのですが、実は今年6月に開催された国際スケート連盟の総会でルール改正がなされました。この改正に伴い、すでに選手たちは新しいルールに対応した演技を披露しています。

また、この総会ではルール改正のポイントだけでなく、ISUの中期目標であるビジョン2030も発表され、今後フィギュアスケートをどのように進行していくべきかが話し合われました。というのも、今フィギュアスケートは決して盤石な状態ではなく、その勢いに若干陰りが見られるものですから、競技の未来について真剣に話し合わなければならない時期に差し掛かっているというわけです。

さて、そこで今回は国際スケート連盟の技術委員としてご活躍されている岡部由紀子先生をお招きし、ルール改正のポイントやISUのビジョンについて深掘りしながら、フィギュアスケートの今後を議論していきたいと思います。それでは早速、スタートさせていきましょう。

競技用の衣装にブランドロゴが表示できるように

2024-2025年シーズンのルール改正点

2024-2025年シーズンのルール改正点

町田(以下M):まず1番目のトピックからいきたいと思いますが、一般規定の中からルール改正が発表されています。これはシンプルですね。カップル競技のジュニアの年齢区分が変更されまして、ジュニアのアイスダンスの女子の最大年齢が21歳に引き上げ。それからジュニアペアの最大年齢が女子21歳、男子が23歳に引き上げられる。

そして、いずれのアイスダンス、ペア、いずれのカテゴリーもパートナー間の男女の差は最大7歳まで認められることになりましたけれども、パートナー間の年齢差7歳分は、これからのジュニアに適用されるものなのか。今すでに活躍されておるスケーターに適用、つまりシニアにも適用されるのですか。

岡部(以下O):シニアには適用される予定ではなく、ジュニアに対しての採用ですね。なぜかと言いますと、多くのコーチの方から、ジュニアですと13歳からなんですね。男子がペアで23歳まで。つまり10歳の差がある。23歳はもう大人でが、13歳は子どもという感覚。10歳も年の差があると、見た目にも、精神的にも「お互いにあまりいいものではないのではないか」という声から採用されました。

衣装にブランドロゴを表示するこを許可

衣装にブランドロゴを表示するこを許可

M:では、続いていきたいと思います。同じく一般規定の中で、大きな変更だと思います。衣装にブランドロゴを表示することを許可するということで、競技用の衣装にブランドロゴをひとつ表示することが可能となりました。例えばナショナルジャージにはたくさんスポンサーが着いていますが、競技用の演技する時の衣装にもひとつだけ着けていいのですね。

O:衣装の中に、その衣装を作成した会社と言いますかね。限定ではありますけれども、着けていいことになりました。フィギュアスケートに関しては、これからどういうふうになっていくのかわからないんですけども、どういう形でそれが行われるようになっていくのかなと、思っているところですね。

M:衣装も大事な表現要素のひとつですけれども、意外にわかっているようでわからなかったことは、衣装はどの点で評価されているのですか。おそらくプログラムコンポーネンツの中のどこかで評価されているのか、評価されていないのか。

O:とてもいい質問だと思います。なぜかと申しますと、シングルペアにおいてはそれがルール化されてないんですね。ただし、人間ですから、この曲に合っている衣装か合っていない衣装かは、本当に感じるところですよね。

例えば、白鳥の湖で滑るのにカルメンの衣装を着て出てきたら圧倒的に違いますよね。違和感を感じてしまう。演技を邪魔するまではいかないですけども、やはり人間ですから、ずっと考えてしまう。「なぜ、この衣装を着てきたんだろう」と思ってしまう。ルールとしては明確化されていませんし、直接点数には反映していませんけれども、人間の奥底で考える部分で、気になるところだというのが現実です。

コンポーネンツ(演技構成点の採点基準)

コンポーネンツ(演技構成点の採点基準)

M:それでは続いて、コンポーネンツ。演技構成点の採点基準の中。かつてはプレゼンテーション中にワンネスやユニゾンという小項目がありました。そのうちユニゾンというのは、プレゼンテーションからスケーティングスキルの方に移動になったのですが、私はこれを見ていて、ユニゾンもワンネスも近寄った概念であるような感じがするので、そこを整理されたということですか。

O:ワンネスというのは、ペアやダンスのお互いのパートナーが違う動きをしてもひとつに見えるものがワンネス。ユニゾンは本当にテクニック的にも、同じ動きをした時にもピタッと合っている。大きくはスケーティングスキルとするところのテクニック的にお互いに差がなく、同じようなスケーティングスキルを持っていることも大事にしたいというところで、ユニゾンはスケーティングスキルに入るようになりました。

M:エッジの傾き具合だとか、足の角度、そういう動きの同調性、シンクロナイゼーションみたいなところがユニゾンでは大事で、ワンネスは雰囲気とか空間的に一体感があるかどうか。よくわかりました。主にカップル競技ですね。カップル競技を見るときには、空間的にひとつになっているかどうかのワンネスと、動きが同調しているかというユニゾン。しっかり見たいと思います。

これも若干の変更ですが、こういう細かいことを気にしちゃう質でして。演技構成点の評価基準。現代のルールだと0.25から10点満点まで、プログラムコンポーネンツは段階を踏んでグレードで評価されるわけですけれども、これまで4から4.75はFairという言葉で価値をつけられていました。それがBelowaverage。平均の下になったということなんですが、Fairは公正や適正というようなニュアンスを含んでいる言葉だから、今までよりもBelowaverageになると、今までよりも平均が上がるというニュアンスに聞こえますが、ここはどうなのでしょうか。平均値はあるわけですよね。Averageで5から5.75のところ。

O:今、おっしゃっていただいたように、Fairって言うと英語を使わない国の人間にとってはいい印象もありますよね。ですので、言葉的には理解するのにAverageとFairはどっちがどうなんのだろうというところで違和感を感じる人もいました。

平均というものがありますので、Averageよりも下という言葉の方がわかりやすいのではないか。つまり、平均があって、平均より下。それから平均より上もありますよね。そうすると、よりわかりやすいということで、ワードの変更をしました。

M:ネイティブだったらFairはAverageよりも下というニュアンスだった。今の方がスッキリ言葉的には整理されていますよね。

O:そうなんだと思いますし、私たちにはわかりやすいですよね。

バックフリップの解禁も大きな変更点

バックフリップの解禁

バックフリップの解禁

M:では、次。これも注目のルール改正点だったと思いますが、バックフリップが解禁されました。フリープログラムの中に1回だけバックフリップを組み込むことができる。ただし、技術要素としては何もカウントされることはなく、例えばプレゼンテーションにしか価値が反映されないということですね。

O:皆さんの記憶に新しいように、アダム・シャオイムファ選手が昨シーズンに取り入れました。減点になるのをわかりつつも取り入れまして。ただ、お客様たちは大盛り上がりされたんですよね。そういったところも見ながら、新しくキム・ジェヨル会長。事務総長に入られたコリン・スミスさんは、FIFAからいらした全く外から入ってこられた方です。

フィギュアスケートをこれからどのように盛り上げていったら良いのかを考えた時に、バックフリップであれだけお客様が大盛り上がりした姿を見て、これは取り入れてもいいんではないかというところから、話がどんどん進んでいきました。

M:なるほど。外からの意見も大きかったということですよね。ただ、これは岡部先生も報道の中で話しておられたように、危険性は慎重に判断されなければいけません。やはり横回転という通常のフィギュアスケートの回転が縦になるとエッジがサマーソルトみたいになるので、接触した時に大変なことになる可能性がある。

例えば6分間のすごく熾烈で焦っている練習中にやってもいいのかどうか。まだ議論が不十分だとおっしゃいましたけれども、これは引き続き議論はしていくことなのでしょうか。

O:ISU的には、はっきりとした指針はまだ出していないんですけれども、総会の中でもイベントコーディネーターをされる方が、6分間でするのは危険ではないかという話も出していらっしゃいました。おっしゃる通りで、どうすべきか。とはいえ、全く練習をせずに本番だけするのも、それはそれで怖い。怪我につながることもあるのかなという思いがありますので、そういった辺りをどうすべきなのか。これから整理していかなくてはいけないことだと考えています。

文:J SPORTS編集部

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