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鍵山優真が今季3人目の300点超えで金メダルを射止めた「(世界選手権には)もっと自分の技を磨いて、自信をつけて臨みたい」 | ISU四大陸フィギュアスケート選手権2024 男子シングル レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部写真左から:山本草太/鍵山優真/佐藤駿
金色へとジャンプアップ。すでに数々の世界的名声を手にしてきた鍵山優真が、初めてのISUチャンピオンシップタイトルを手に入れた。2024年四大陸選手権で、ついに表彰台の中央に駆け上がった。
「まずは今日のこの結果をしっかりと受け取めて、喜びたいと思います。ただ、もっともっと上を目指すためには何が必要なのかを考えて、もっといい演技ができるよう頑張っていきます」
上海には勝つために来た。こう毅然と言い切った鍵山は、完璧なショートプログラムを実現させた。冒頭の4回転サルコーを柔らかく着氷し、出来栄え点4.16点という驚異的な加点を稼ぎ出すと、続く2つのジャンプエレメンツにも一点の陰りなく、スピンもステップも当然のようにすべてレベル4を得た。
今季から師事するカロリーナ・コストナーに鍛えられたステップシークエンスでは、多彩かつ緩急あふれるムーブメントで楽曲「Believer」を活き活きと表現。ジャッジ9人中6人が満点の+5(残り3人は+4)をつけたほど。
得点は全参加者中で唯一の100点超えを達成し、シーズンベストの106.82点。グランプリファイナルのイリア・マリニンが、4回転アクセル&ノーミスで打ち立てた今季最高得点106.90点に……わずか0.08点差に迫った!
「勝ちにこだわって、全力で攻めの演技を意識しました。最初の動き出しから曲に入り込み、ジャンプも曲の一部として流れるようにこなすことができました。フリーもノーミスでまとめて、優勝したいです」
そのフリースケーティングは、残念ながら、1つだけミスがあった。4回転フリップ着氷時にステップアウトでバランスを崩し、氷の上に手をついてしまったのだ。ただ4Fは、あくまでISU大会初トライ。むしろ鍵山本人は好感触を持ち帰った。
「結果的にステップアウトではあったんですけど、しっかりと締め切ることができました。その後も諦めることなく、すべてのジャンプを降りることができたので、ほっとしています」
冒頭の4Sは、またしてもふんわり柔らかで、SPをさらに超えるGOE4.43点をマークした。4回転トーループからのコンビネーションも鮮やかに決めた。つまり2シーズンぶりに3種類の4回転を飛びこなし、凄まじく上質な3回転アクセルも2回組み込んだ。
言うまでもなくステップやスピンはすべてがレベル4で、激しく胸を揺さぶるようなステップシークエンスでは、SPと並び「自己史上最高」のGOEを勝ち取った。
持ち前の滑らかなスケーティング能力で、常に高いPCS演技構成点を誇ってきた鍵山だが、この日も93.48点と圧倒的な数字を出した。PCSだけで2位以下を7.60点も引き離しただけではない。全男子スケーターのなかで今シーズン最高得点にして、全9ジャッジ全3項目で「1位」が並ぶという、完膚なきまでの優位。目の覚めるような疾走感はプログラム最終盤まで決して衰えず、「Rain, In Your Black Eyes」のドラマチックなピアノの音とともに、あらゆる感情はクレッシェンドしていった。
演技が終わった直後、氷の上でにっこり笑顔になった鍵山は、200.76点の得点が発表されると、思わず目をまんまるにした。銀メダルに輝いた2022年冬季五輪以来となる、200点超え。SP・FS合計ではやはり同大会以来2シーズンぶりにして、今季3人目の300点超えを達成した。2位以下を約33点突き放す307.58点で、初めての四大陸金メダルを射止めた。
「世界選手権では、300点を出しても勝てるかどうか分からない戦いになってくると思います。もっと自分の技を磨いて、自信をつけて臨みたいです」
世界ジュニア2位、五輪2位、世界選2位……ときて、ようやく念願の大きなタイトルをつかみ取った鍵山の横には、佐藤駿が並んだ。昨大会の3位から、また1段、頂点へと近づいた。
「小さなミスがあり、必ずしも満足のいく演技ではありませんでした。もっと出来たんじゃないかと思うところもあります。シーズンベストの得点を出すことができたことはうれしく思っています。来季に向けて、良い大会になりました」
2位で終えたSPはSBどころか、佐藤はPBを一気に7.59点も塗り替えた。99.20点と、史上14人目の100点台にも迫る勢い。FS自体は3位175.39点で終え、自己ベストとは行かなかったが、トータルの274.59点でやはりPBを更新している。
躍進の第1の原動力は、間違いなく4回転ルッツ。アクセルに次ぐ難ジャンプを、キャリアで初めてSP・FSともに成功させた。特にSPでは今シーズンここまで1度も組み込まず、むしろ4回転フリップを飛んできたが、この四大陸では改めて導入。11.5点の基礎点にGOE2.17点がついた。「ここまで点数が出ると思っていなかった」と本人も驚くほどの素晴らしい出来だったが、FS冒頭ではさらに雄大なルッツを降り、GOEも3.45にのばした。
ルッツ以外でも、今大会の佐藤は極めて安定したジャンプを見せた。SPはすべてが文句なしの出来で、FSは演技後半で3回転ループの着氷が乱れたのみ。FS前半のコンビネーションで、2本目に予定していた3回転がつけられなかったことは悔やまれるが、そこは2回転で上手くまとめた。
そして躍進の第2の原動力は、PCSの伸びだった。今季「表現力」をテーマに励んできた佐藤の、努力は数字にきっちり反映された。宮本賢二氏の手によるSP「Libertango」では、この1年で1.5点近く得点がのび、ギヨーム・シゼロンが振り付けたFS「四季」では、2年ぶりにPB更新。「トータルパッケージ」の選手へと、佐藤は着実に進化している。
初出場山本草太は、4位という結果に関しては、素直に悔しさを口にする。SPはノーミスの演技でSBをマークし、しかも表彰台まで0.86点差の4位で折り返した。FSでの逆転表彰台は、十分に可能だった。ちなみにプログラム3番目のジャンプ要素である3回転アクセルが、今シーズンの全日本と同様にぎりぎりで後半認定されず……貴重な0.80点を取り逃している。
FS冒頭のミスが痛かった。4回転サルコーで転倒。続くコンビネーションでは、1本目の4回転トーループ着氷時に両手を氷についてしまい、2本目は1回転を無理やり添えた。その後は最後までほぼクリーンにまとめ上げたからこそ、後悔は小さくなかった。自己ベストには10点以上も及ばず、表彰台からも遠ざかった。
たとえミスや後悔はあろうとも、山本の静かに匂い立つような色香が損なわれることはなかった。FS「エクソジェネシス」の、コレオシークエンスは、スピードに乗ったイーグル&イナバウワーで魅せた。
「演技が全体を通して硬かったので、それがジャンプのミスにつながったのかなと思っています。それにもっと表現したい部分もたくさんあった。今回の悔しい気持ちを持ち帰って、この先につなげていきたいです」
3位にはチャ・ジュンファン(韓国)が入った。すでに2年前の四大陸を制し、昨季の世界選では銀メダルを手にした実力者にとって、今シーズン前半は足の故障で苦しめられてきたからこそ、今大会の成績は復活への大切な一歩となった。
「パフォーマンスには満足しています。怪我からの復活とも言えます。もちろん完全体を取り戻すためにはまだ時間が必要です。今は少しずつプログラムの難度を戻しているところです。とにかくまずは完治して、ハードな練習を重ねて、最終的には自分のベストが出せるよう努力していきます」
復帰途中の国内戦2戦は、4回転SP1本・FS1本とあえて構成を下げて戦ったが、今回はSP1本・FS2本と、一段階難度を戻した。しかもSPでは復帰後初のノーミス&オールレベル4を実現。FSでは冒頭の4回転サルコーを勇壮に決め、4回転トーループはステップアウトこそあったものの、ミスは最小限に抑えた。やはりスピンやステップはすべてレベル4でまとめ、まるで空間を支配するかのような壮大なコレオシークエンスは、全体でトップのGOE加点。FSでは銀色のスモールメダルも勝ち取った。来る世界選手権へ向け、ジュンファンはすでにSP4回転2本・FS3本の練習にも入っているという。
北京五輪で2本飛んだのを最後に、SPは4回転1本で落ち着いているボーヤン・ジンだが、FSは今大会ついに4回転3本に戻した。7年前の四大陸チャンピオンは、中でも自らのトレードマークとも言える4回転ルッツで、母国のファンたちを熱狂させた!実は自らも「興奮しすぎて」少し気持ちを抑えるのに苦労したそうだが、26歳となり、「より成熟し、より冷静」になったと自認するボーヤンは、FSのコンビネーションで転倒が1度あった以外は、最後まで安定したパフォーマンスを貫き通した。5位と満足の結果で大会を終えた。
6位のミハイル・シャイドロフ(カザフスタン)は、4回転SP2本・FS4本と、大胆に攻めた。残念ながらSP冒頭のルッツは転倒し、FSのトーループでは着地が乱れた。ただ少なくともFSの4回転4本は、今大会で唯一のチャレンジであり、自身にとっては昨季初戦以来2度目の快挙だった。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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