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史上10人目の日本女子大会覇者!18歳の千葉百音が初めての四大陸選手権戴冠「今後も地に足をつけて、精進していきます」 | ISU四大陸フィギュアスケート選手権2024 女子シングル レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部写真左から:三原舞依/千葉百音/渡辺倫果
史上10人目の日本女子大会覇者!18歳の千葉百音が初めての四大陸選手権戴冠「今後も地に足をつけて、精進していきます」 | ISU四大陸フィギュアスケート選手権2024 女子シングル レビュー
「スタートダッシュの一歩目」。自身にとって初めての四大陸選手権戴冠を、千葉百音はこう表現した。……それにしても、なんという大きな一歩だろう!ショートプログラム、フリースケーティングともほぼノーミスで美しくそろえ、いずれもパーソナルベストを大幅に更新し、トータル214.98点という高得点を記録したのだから。
「やるべき演技、やるべきジャンプをこなすことに集中して、大会に取り組みました。今の自分に出来るベストの演技が出せたことを、嬉しく思います」
速い鼓動がこちらにまで聞こえてきそうなほどに、緊張した表情とは裏腹の、堂々としたパフォーマンス。鮮やかなスピードときれいな回転軸、そして滑らかな着氷とで、千葉はジャンプを次々と成功させていく。SP・FSともに3回転ルッツに「!」(エッジ不明瞭)マークがついたが、GOE出来栄え点自体は加点された。またFSでは後半の3連続コンビネーションジャンプで、3回転フリップに「q」(4分の1回転不足)が指摘されたが、GOEのマイナスは0.45点とほんのわずか。
「もちろんすごく緊張しました。でも演技前に浜田コーチと『この場で滑れることに感謝して思いっきりやろう』と話しをして、おかげで一本一本を丁寧に跳ぶことができました」
今季から本格シニア移行したばかりの18歳千葉は、シニア国際大会で初めて、両プログラムともにオールレベル4も獲得した。ステップシークエンスとレイバックスピンに関しては、GOE加点も全体トップで、つまり2本ともにステップ→レイバックで終わる流れは……最高のクライマックスでしかなかった。
名は体を表すと言うように、音のとらえ方は今大会も傑出していた。持ち前の端正なスケーティングと、お手本のような技術に加えて、いわゆる表現力も着実な進化を見せた。SP後は「シニアにふさわしい表情が出せなかった」とも本人は反省し、PCS演技構成点自体も全体の2位に留まったが、柔らかく、エレガントに演じきったFS「海の上のピアニスト」は、文句なしにPCSも1位。凛とした背中からは、成熟した大人の色香さえ放った。
SPの71.10点で、ジュニア時代からのPBを0.94更新。FSの143.88点では、銅メダルを持ち帰った昨四大陸の記録を6.18点も塗り替えた。トータルでは9.16点を一気にのばして214.98点。今シーズンのISU認定シニア大会で、千葉以上のハイスコアをマークしたのは、現役世界王者の坂本花織と欧州王者ルナ・ヘンドリックスの2人しか存在しない!
「自分の良さを少しは表現できるようにはなってきたかな……とは感じているんですけど、これから、本当にこれからだと思っています。もっともっとレベルアップしていきたい。今回の『滑っていて幸せ』という感覚を忘れずに、今後も地に足をつけて、精進していきます」
第25回大会を終えた四大陸選手権で、千葉百音は史上10人目の日本女子大会覇者となり、日本に16個目の女子シングル金メダルをもたらした。男女アベック優勝は史上7回目。男女そろって複数人を表彰台に送り込んだのは、10年ぶり3度目の快挙だった。
千葉とならんで表彰台に立ったのは、渡辺倫果だ。1年前の四大陸初出場時の5位から、ステップを2段上がった。また世界ジュニア、世界選手権の経験を持つ21歳にとっては、ISUチャンピオンシップで手にした初めてのメダルだった。
「嬉しいと言うよりも、率直に悔しいという気持ちが大きいです。ただ今大会はたくさんの良い経験もできました。今回見つかった課題にしっかり取り組みながら、来季に向けてまた頑張っていきたいと思います」
FS冒頭の3回転アクセルは、力強く決めた。今シーズンここまでどうしても上手く行かず、一時は封印さえした大技を、渡辺は昨四大陸以来1年ぶりにクリーンに着氷した。しかもGOE加点は過去2番目に高い2.06点。つまりこの3Aだけで、大量の10.06点を叩き出したことになる。もちろん成功させたジャンプは、ことごとく高いGOEをもぎ取った。
トータルパッケージとしての評価も得た。SP・FSともにオールレベル4判定を与えられたのは、今大会で千葉と渡辺の2人だけ。PCS演技構成点の「スケーティングスキル」で、SPとしては今季初めて8点台がついたし、FSのステップシークエンスは千葉に次ぐ2番目の好評価だった。
だからこそ悔しさが大きかった。他のいくつかのジャンプでミスさえ出なければ、異なる色のメダルが可能だと分かっていたからだ。SPは今季の国際大会で1度も成功させられなかったコンビネーションで、またしても3回転ループ、3回転トーループともに4分の1回転不足を取られた。FSでは改めて3Lo+3Tに挑むも、今度は3Tで回転不足。さらにFS前半のジャンプシークエンスでは3回転ルッツがすっぽ抜け1回転に、後半の3Lzは回転不足に。FSだけなら2位で終えたが、トータルではわずか2.51点差で銀メダルを逃した。
「来季はSPでも、昨シーズン同様、3回転アクセルを飛ぶつもりです。4回転の習得に励んで、FSには絶対に入れていきたいです」
過去4度の参戦ではすべて表彰台乗りを果たし、2度の優勝も飾っている三原舞依は、今年は7位で大会を終えた。SPこそ表彰台圏内の5位で折り返したが、FSで巻き返すことはできなかった。
四大陸終了後の精密検査で疲労骨折が判明したほど、今シーズン悩まされ続けた右足の状態は悪かった。SPでのコンビネーションジャンプでは、2本目の着氷時に崩れ落ちるように転倒。FSは冒頭に難しいコンビネーションを立て続けにこなしたが、その後3つのジャンプで予定していた回転をこなせなかった。
しかし三原の丁寧で繊細な滑りと、すべての人を幸福にする笑顔は、まるで陰りを見せなかった。昨季のプログラム「戦場のメリークリスマス」に急遽戻したSPは、PCSで文句なしのトップスコアを記録した。伸びやかで美しいロングスパイラルに彩られたFSのコレオシークエンスは、誰よりも高いGOE加点を得た。
「結果も演技も悔しいものになってしまいました。試合で最後まで滑りきれたことは、プラスにとらえてもいいかもしれませんが、それ以上に反省すべきところがたくさんあります。ここから再出発だと思っています。今シーズンで終わりではありません。この先も頑張って進んでいきます」
1年前の4位から、17歳キム・チェヨン(韓国)は銀メダルと躍進。ただFS最後の3回転サルコーだけは転倒に終わり、また3回転フリップはトライした3つすべてに「!」マークがついたものの、驚くほど軽やかに、さらりと高難度ジャンプを飛びこなした。しなやかなスケーティングスピードと、柔らかな肢体から繰り出されるムーブメントで、FSではPCSも一気に伸ばした。
NHK杯優勝が決してサプライズなどではなかったことを、アヴァ=マリー・ジーグラーは上海で証明した。ジュニア・シニア通して初めてのチャンピオンシップのために、全米選手権を欠場してまで積んできた調整は、無駄ではなかった。他を圧倒するスピードも、ダイナミックなジャンプも、明るい未来を期待させるものでしかなかった。SPはノーミスの3位で折り返した。最終的に4位で大会を締めくくることにはなったけれど、FSもジャンプのエッジミス(!とe)以外は、大きなミスなく締めくくった。
またウィ・ソヨン(韓国)は、今季のナショナルチャンピオンシップでは12位と苦しみながら、人生初のチャンピオンシップで5位入賞。改めて韓国女子のの層の厚さをアピールした。一方でディフェンディングチャンピオンとして臨んだイ・ヘイン(韓国)は、トータル11位に沈んだ。身体的には好調ながら、「個人的な問題」で精神的に動揺し、特にSP後にはあふれ出る涙を抑えきれなかった。昨季2位で終えた世界選手権に向けて、立て直しを誓う。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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