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長く曲がりくねった道の果てにギレス&ポワリエ組が戴冠「これは私たちのキャリアにおける大きなマイルストーン」| ISU四大陸フィギュアスケート選手権2024 アイスダンス レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組/2023年世界フィギュアスケート選手権
ゴールドの栄光が、ついに2人の上に降り注いだ。結成13年目。パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組が、長く曲がりくねった道の果てに、ISU国際チャンピオンシップで初めて表彰台の最上段に上がった。
「心から喜びを感じています。これは私たちのキャリアにおける大きなマイルストーンであり、だからこそキャリアのこの時点で、これほど重要な大会で優勝することができたことが誇らしいのです」
金メダルを獲るために、2人は上海にやってきた。そして本人たちの表現を借りれば、「チャンピオンとしての滑り」を披露した。パイポーのパイポーたる所以である、細部までこだわり尽くした創造性たっぷりのプログラムを、確固たる技術と豊かな表現力で演じきった。ポップで軽快なリズムダンスでも、「嵐が丘」の愛憎劇を壮大に描き上げたフリーダンスでも、2位以下にと3点以上の差をつけ悠々と首位の座につくと、トータル214.36点で優勝を決めた。
大きな成功ではあると同時に、ギレス&ポワリエ組にとっては、これは理想的なステップでもある。3月半ばには、母国カナダで、世界選手権が執り行われる。2年連続3度目のメダルを期待されるのはもちろん、地元メディアやファンからは、当然、「金メダルを」の声もあがる。
「母国で世界選手権に開催されることに、興奮しています。優勝目指して一生懸命に努力しよう、そんなやる気に満ちています」
カナダ勢は表彰台の上段2席に立ち、FDに至っては、トップ3を完全に独占した。
金メダルに輝いたギレス&ポワリエ組の横では、来る世界選手権の開催都市であるモントリオールを練習拠点とするローランス・フルニエボドリー&ニコライ・ソレンセン組が、2大会連続の銀メダルを授与された。
決して簡単な状況ではなかったはずだ。大会2週間前に開催されたナショナル選手権さえ、ディフェンディングチャンピオンながら、出場辞退を余儀なくされた。それでも「地元でハードな練習を積んできた」と何度も繰り返したように、丹念にプログラムを磨き上げてきた。
RD「トップガン」はGPファイナルに続きツイズルこそレベルを落としたものの、ダイナミックかつスリリングなリフトで高得点を叩き出した。情熱的に、感動的に歌い上げるFD「ノートルダムの鐘」では、シーズンベストを記録した。
「この場に来られたことが純粋に嬉しいですし、両プログラムをしっかりと演じきれたことに満足しています。大いに安堵していると同時に、とてつもない喜びでもあります」
やはりモントリオール組であるマリージャド・ロリオー&ロマン・ルガック組が、2016年ジュニアワールドSD以来、実に8年ぶりのISUチャンピオンシップ「スモールメダル」を獲得した。
工夫がいたるところに散りばめられたFD「ティム・バートンのコープスブライド」で、パーソナルベストも大幅に塗り替えた。中でもプログラム最後のコレオリフトーー果たして一体どこにどうやって乗っかっているのか、頭が疑問符だらけになるーーは、GOE出来栄え点で+5と+4ばかりがずらりと並ぶ。FD3位の好演技で、RD7位から、最終的にキャリア最高位のトータル5位に浮上した。
トータルで3位銅メダルを持ち帰ったのは、アメリカのクリスティーナ・カレイラ&アンソニー・ポノマレンコ組。FDはツイズルの乱れが得点に影響し、5位に甘んじたものの、最終的にはRD3位のリードを守りきった。また男性側の足首手術で難しい時期を乗り越えてきた2人は、トータルスコアのパーソナルベストを……なんと4年ぶりに更新している。
いまだ23歳の若き「カレポノ」にとっては、2022年大会に続く2度目の表彰台。メダルの色は同じだが、キャロライン・グリーン&マイケル・パーソンズ組の初戴冠に立ち会った2年前とは違い、今年はアメリカ勢の中で堂々トップにつけた。四大陸直前には、全米で初めての銀メダルも手にしている。つまりマディソン・チョク&エヴァン・ベイツ組に次ぐ「アメリカ2番手」に、確実に定着しつつある。
全米王者にして世界王者のチョク&ベイツ組が体調不良で欠場したため、急遽上海入りしたエミリア・ジガス&ヴァディム・コレスニク組(アメリカ)は、初めてのISUシニア選手権大会で4位と堂々たる成績を残した。3位カレポノまではたったの1.07点差だった。
元世界ジュニア王者のコレスニクのずば抜けたテクニックと、丁寧で愛あふれるエスコート、そしてほんの2年前までシングルスケーターだったジンガスの優れた身体能力とが、ポジティブな化学反応を引き起こししている。FDは今シーズン3度目のパーソナルベスト更新。特にツイズルとリフトの点の伸びが激しく……凄まじい勢いで進化を続けている。
一方で同じく元世界ジュニア王者パーソンズとグリーンのカップルは、2年前の四大陸制覇以降、少し足踏みが続いている。1年前は転倒の影響もあり5位に終わったが、今大会は大きなミスのないまま、6位に後退した。GOEによる加点が全体的に薄く、また昨季は項目によってはついに9点台に乗ったPCSも、8点台中盤に抑えられた。
昨ジュニアワールド銀メダリストのハナ・イム&クァン・イェ組(韓国)は、シニアとして初めてのチャンピオンシップを、7位で締めくくった。
賛否両論あったものの、日本のアイスダンス3組ににとっては、この四大陸こそが世界選手権選考会だった。少々異例とも言える状況の中、すでにベテランの域に達した小松原美里&小松原尊組が8位入賞を果たし、モントリオール行きを決めた。
すでに2度の世界選と1度の五輪を戦ってきた経験と、全日本チャンピオンとしての意地。「緊張した」と正直に振り返りつつも、重圧に打ち勝つ強いメンタル。なにより小松原組は、結成8年目にして、いまだ自分たちに大きな伸びしろがあることを証明した。
RDもFDも、実に2シーズンぶりに、パーソナルベストを塗り替えた。RDは3.16点、FDは一気に7.34点もアップ。全日本後に最も力を入れてきたというスピードを活かし、ツイズルではプログラム2本とも今大会参加者中4番目の高い評価を得た。またPCS演技構成は、FDの「構成力」と「演技力」とで初の8点台乗り達成。「自分たちが取り組んできたことに対して成果を出せたことで、自信がついた」と、世界選手権へ向け確かな手応えを持ち帰った。
結成1年目、国際大会2大会目、ISUシニアチャンピオンシップデビュー、しかも世界選手権の出場権がかかる……決して簡単ではない状況の中で、吉田唄菜&森田真沙也組と田中梓沙&西山真瑚組も堂々たるパフォーマンスを披露した。
前者はFDとトータルで、後者はRDで自己最高得点をマークし、着実な成長を感じさせた。それぞれに強く個性もアピール。吉田&森田組はディープなエッジワークとぐんぐん進むスピード、さらには風格さえ漂う存在感を示した。PCSのオール7点台は、1年目としては称賛すべき得点だ。田中&西山組は、伸びやかで柔らかなスケーティングと表現力が光った。12月末の田中の左手負傷で、十分な練習が積めなかったにも関わらず、最後まで息の合った演技も見せてくれた。
世界に「うたまさ」「あずしん」の存在を、間違いなく、知らしめた。2024年四大陸を10位と11位で終えた2組は、これから先、国際舞台でますます輝きを増していくはずだ。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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