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フィギュア スケート コラム 2023年4月11日

チョック&ベイツ組が悲願の金メダル獲得。村元哉中&高橋大輔組は日本勢過去最高タイの11位「1年間続けてきて良かった」| ISU世界フィギュアスケート選手権2023 アイスダンス レビュー

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
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表彰台の中央に立つマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組

表彰台の中央に立つマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組

誰にとってもこのメダルは、間違いなく、勝利だった。心身の苦難を乗り越えて、パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組(カナダ)は再びメダルをつかみ、シャルリーヌ・ギニャール&マルコ・ファッブリ組(イタリア)は、長くたゆまぬ努力の果てに、ついに生まれて初めて世界選表彰台に上がった。そしてマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組(アメリカ)は、2023年世界選手権で、とうとう一番きれいな色のメダルに輝いた。

「今シーズンだけでなく、キャリアのあらゆるシーズンを通して直面してきた課題なくして、今日の私たちはこの場に座ってはいなかったことでしょう。私たちは本当に忍耐強く続けてきましたし、やり抜く意志の力を示しました」(チョック)

結成12年、出場10回目にして、究極の夢に手が届いた。艶やかな優雅さと、精緻な技術力とを見事に融合させたチョック&ベイツ組は、リズムダンスで91.94点という極めて高いパーソナルベストを記録。四大陸で出したPBを一気に4点以上も上回り、史上2番目に90点超を達成したカップルとなった。なにより技術点TESだけなら、五輪金メダリストのパパダキス&シゼロン組が昨世界選手権で出した53.16点を超え、53.33点のワールドレコードを叩き出した。

「最高の気分ですし、スコアにも興奮しています。日本の観客のみなさんの前で最高のパフォーマンスが披露できた、と実感できましたし、数字にも反映されました」(ベイツ)

フリーダンスでは、哲学的な世界観を、氷の上で見事に展開した。2位に甘んじたシーズン序盤のNHK杯では、いまだ輪郭がぼやけていたが、3月の終わりのさいたまスーパーアリーナでは、強烈で色濃い「火と風の精」の舞ですべてを凌駕した。無駄な動作はひとつもなく、あらゆるムーブメントに意味が込められ、そのすべてをチョクベイは繊細かつ大胆に実行した。

たしかに、ほんの一瞬、本人さえも「え!?何が起こったの??」と驚く場面もあった。プログラム終盤にチョックが転倒。エッジのかかと部分を氷に引っかけてしまったような体制だった。幸いにも、いわゆるつなぎ中の事故で、減点1は取られたが、エレメントの得点に影響はなかった。

それどころかすべてにレベル4の評価がついた。採点表には4と5がずらりと並び、GOE出来栄え加点もことごとく高かった。「流れを中断するような重大なミスが1回」の場合は上限9.50点と定められている演技構成点PCSさえ、3項目すべてで9.50以上。FDでも134.07点でパーソナルベストを更新し、トータルでは、1年前の世界選手権で記録したPBを9点以上も上回る堂々の226.01点!

2024年に結婚式を予定しているチョック&ベイツ組が、金色の幸福に浸った。アメリカにとっては10年ぶりのアイスダンス金メダルで、しかもデーヴィス&ホワイト組に次いで、アメリカ史上2組目の世界チャンピオンカップルとなった。

一方のギニャール&ファッブリ組は、「苦節」13年目、世界選出場11回目の悲願達成。33歳&35歳の春に、初めての世界選メダルをつかみ取った。

「このメダルは僕らにとって多くの意味を持ちます。長年にわたり厳しい練習を積み重ねてきましたし、苦しい時もありました。たくさんのアップダウンを経て、こうして世界選メダルにたどり着きました」(ファッブリ)

高速でリンクを横断しつつも、近く、深く、乱れのない足さばきが、正当に高い評価を受けた。グランプリ大会初優勝、欧州選手権初優勝と、今季はキャリア最高の快進撃を続けてきたシャルマル組だが、「得点の伸び悩み」には少々不満も抱えてきたという。

ただし、今大会RDのパターンダンスタイプステップシークエンスでは、全参加者中で唯一のレベル4を勝ち取った。ミッドラインステップシークエンスも、首位チョクベイ組の2人を除けば、最高レベルの評価を受けたはギニャールのみ。やはりPBを2点以上塗り替えて、RD88.21点の高得点を得た。

「今日はあらゆる動きが自然に進みました。だから自分たちとしては、良い演技ができた、と確信していたんです。でも、欧州選でもすごくいいスケートができたのに、思ったような得点はもらえませんでした。だからこそ、ようやくスコアに反映された、と感慨深い気持ちです」(ギニャール)

新しいことにチャレンジしたいと、これまでの印象とは異なる「ダーク」でダイナミックなテーマを選択したFDでも、やはりPBを4点以上一気に更新。FD131.64点、トータル219.85点に伸ばした。2014年さいたま大会がイタリア組カッペリーニ&ラノッテ組に栄冠をもたらしたように……2023年さいたま大会もまた、イタリア組ギニャール&ファッブリ組に微笑んだ。

ギレス&ポワリエ組にとっては、2年ぶり2度目の世界選銅メダル。1度目は……今回のシャルマルと同様、激しい感動を隠せなかった。しかし2度目の今年は、少し違った。年末の虫垂炎で国内選や四大陸を欠場せざるをなかった事態から、再びこの場所に帰ってこれたことの喜びを、むしろしみじみと噛み締めた。

「2つの大会を逃して、少し神経質になってしまう状況の中で、私たちが成し遂げたことを誇らしく思います。自分自身を信じ続けることを、決してやめませんでした。それは素敵な気分で、前進するための自信を、私たちに与えてくれました」(パイパー)

2人の実力レベルを、完全に取り戻せたわけではなかった。トップ10のカップルのうち、8組がFDで自己最高得点を更新した素晴らしい雰囲気の大会で、パイポー組のトータル217.88点はわずかながらPBを下回った。それでも、2人らしい演技は、鮮やかなままだった。特にFD「エヴィータ」では、音楽が鳴り始めるはるか前から、見る者を物語の中へと深く引きずり込んだ。

10年以上も互いに切磋琢磨してきた3組による、しかも全員30代選手による表彰台。あらゆる関係者やファンたちにとって、じんわりと胸が温かくなるような、素敵なシーズンの終わりだった。

「ずっとずっと長い間、僕らは、ここにいる2組と戦ってきました。そんな彼らとこうして表彰台を分け合うことが出来たことが、どれほどスペシャルなことなのかを、この場を借りて強調しておきます」(ポワリエ)

……来シーズンも、3組の笑顔は、氷上で踊っているだろうか。昨季末は「現役続行」をきっぱり宣言していたチョック&ベイツ組やギニャール&ファッブリ組も、引退に傾いていた気分を立て直し、今シーズンに臨んだパイパー&ポワリエ組も、進退については明言を避ける。「まだ次のシーズンについて正式な決定は下していない」(チョクベイ)、「たくさんの物事を検討して、それから決める」(シャルマル)、「自分たちが今後どうしたいかは、時間とともに見えてくるだろう」(パイポー)と、来る2023/2024シーズンについては、いずれもゆっくりと考えるとのこと。

一方でノリノリのリズムで会場を熱狂の渦に巻き込み、自己最高4位に飛び込んだライラ・フィアー&ルイス・ギブソン組(イギリス)は、来季のRDテーマ「80年代」に興奮を隠せない。壮大でありながら情緒的な名プログラムで同じく自己最高5位のローランス・フルニエボドリー&ニコライ・ソレンセン組(カナダ)は……パイポーとともにカナダに3枠を取り戻し、1年後の地元モントリオール開催の世界選手権にメダル獲得を誓う。初出場キャロライン・グリーン&マイケル・パーソンズ組(アメリカ)も、6位の好成績で、長く輝かしいキャリアの第一歩を踏み出した。

演技後に涙で手を振る村元哉中&高橋大輔組

演技後に涙で手を振る村元哉中&高橋大輔組

村元哉中&高橋大輔組は、2人で参戦した2度目の世界選手権で、自己最高にして日本勢過去最高タイの11位と素晴らしい成績を残した。しかもFD「オペラ座の怪人」だけなら堂々10位に食い込んだし、PBも1.66点更新した。

なによりカップルを結成して3シーズン目で、「Finally」……つまり「とうとう」、自分たちにとって心の底から納得できる演技が出来た。

「FDでは本当に2人だけの世界に入り込むことができました。一つひとつのエレメントを丁寧にクリアしていって、最後は、お互いに顔を見て、笑い合ったんです。ただただ感動ですし、滑っている瞬間がすごく幸せでした」(村元)

たしかに目標と公言していたトップ10入りには、あと1つ、及ばなかった。ただ今回の銀メダリストのギニャール&ファッブリ組が、5度目の世界選でようやく10位に食い込んだことを考えれば、今大会のかなだいの成績は快挙以外のなにものでもない。

「自国開催の、しかも世界選手権で、初めてと思えるくらい気持ちよく滑ることが出来ました。本当に成長を感じました。哉中ちゃんが誘ってくれなかったら、アイスダンスをすることもなかったので、色々な意味で感謝。本当に、今日の演技こそが、1年続けた意味になったと思います。1年間続けてきて良かった」(高橋)

文:J SPORTS編集部

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