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アイスダンスならではの堅固なヒエラルキーに、我らが村元哉中&高橋大輔が挑む! | ISU世界フィギュアスケート選手権2023 アイスダンス プレビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部村元哉中&高橋大輔組
ついに彼らの黄金時代がやってくる。たゆまぬ努力を続け、長い時間をかけて、少しずつ、着実に進化を遂げてきたアイスダンスのカップルたちが、さいたまスーパーアリーナで煌めくスポットライトを浴びる。なによりカップルとして迎える12シーズン目の終わりに、2人で参戦して10度目となる世界選手権で、初めての金メダルを狙うベテランがいる。……しかも2組も!
1組目こそがマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組(アメリカ)。30歳と34歳の2人は、それぞれ異なる相手とジュニア世界王者に登り詰めた経験を持ち、若い時期から個々の才能の高さはお墨付きだった。2011年7月に運命の人ーー今や公私ともにパートナーーーとカップルを結成すると、翌季には早くも四大陸選手権で銅メダルを獲得。結成4年目でシニアの世界選メダルも手に入れた。
ヒエラルキーの上層に素早く駆け上がったが、その後は長い足踏みも続く。評価は極めて高いものの、どうしても勝ちきれない。2人らしいプログラムに出会えなかったせいでもあり、チョックの右足首の故障が長引いた影響も大きかった。四大陸こそ参加7回の全てでメダルを勝ち取り、この2月を含む最近の3戦は金メダルを持ち帰ったものの、世界選は昨大会で3位に返り咲くまで、6年間も表彰台から遠ざかってきた。
自分たちにふさわしいプログラムを演じ始めたことで、上への道は大きく開けた。2シーズン前は、「蛇と蛇使い」チョックの妖しくも美しい眼力が、強烈な印象を残した。昨季は宇宙人と宇宙飛行士との遭遇という、フィギュアスケート界ではいまだかつて見たことのない、壮大なスケールのラブストーリー。技術や振り付け的な部分はもちろん、ストーリーも音楽も、衣装も、細部まで徹底的にこだわり尽くし、あらゆる部分でプラスの得点を引き出した。
今季もまたFDでは「風と火」の化身となり、激しく、深く、2人は交わり合う。構想が練り切れていなかったシーズン前半戦こそ、GPファイナルで4度目の銀メダルに甘んじたが、「ほぼ望み通りの完成形に近づいた」という四大陸選手権では、他の追随を許さぬ圧倒的な勝利を収めた。トータル220.81点で、今季世界最高得点を記録した。
もう1組が、パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組(カナダ)。2011年7月、まさにチョクベイと同じ月に、2人も結成を発表した。一方で華やかなオーラをまとい、女優としての才能はピカイチのギレスと、わずか18歳にして冬季五輪を果たした天才肌の技巧派ポワリエとは、すぐにメダル圏内に駆け上がったわけではない。
2人にとって2度目の世界選で8位につけると、一けた台後半が長らく2人の定位置となる。メリーポピンズ、ヒッチコック、ジェームスボンド……とびっきり個性的なプログラムは、ファンたちには大いに愛された。だが「世界選表彰台」を目標に掲げ、常にそれを公言してきたパイポーにとっては、決して満足できない結果だった。
ついに報われたのは、2021年世界選。一気に銅メダルの位置までジャンプアップを果たしたのだ。しかし翌シーズンの五輪では7位、世界選は5位と、再び2人は深い失望を味わう。競技引退……も考えたという。
それでも2人は競技の世界へ戻って来た。数字への強いこだわりを捨て、試合を、自分たちが表現したいプログラムを、心の底から楽しむために。……もちろん、ご存知の通り、今季は初戦から結果がついてきた!GPカナダ杯では3度目の優勝を果たしたし、フィンランド杯では、母国以外のGP大会で初めての金メダルを手に入れた。ドラマチックなFD「エヴィータ」の勢いは留まるところを知らず、初めてのGPファイナル制覇さえ成し遂げた!
シーズン後半に向けてぐんぐん調子を上げ、文句なしの優勝候補に名を挙げられるチョクベイとは対照的に、パイポーはGPF以降試合から遠ざかっている。パイパーの虫垂炎手術とその後のリハビリで、国内選も四大陸も、欠場を余儀なくされたのだ。幸いにも、31歳の2人は、今大会へ向けて、「自分たちのあるべきレベルを取り戻した」と自信を見せる。
シャルリーヌ・ギニャール&マルコ・ファッブリ(イタリア)もまた、その長く誠実なキャリアに相応しい、大きな成果を待っている。33歳と35歳の2人が、世界選トップ10に食い込んだのは、5度目の挑戦にして初めてだった。10度目の昨季、とうとう表彰台の足下にまでたどり着いた。氷上では爆走スピードで知られるシャルマルだが、キャリアに関してはゆっくりと、しかし決して後退せずに、一段一段上がってきた。
大ベテランながら、コンフォートゾーンには決して留まらない攻撃的精神も持ち合わせる。人生の喜びや悲しみを演じさせたら右に出る者などいないが、少しダークな世界観に挑戦中の今季、初めてのGP大会制覇を成し遂げた。しかも2戦目も歓喜を繰り返した。ついには年明けの欧州選手権で悲願達成。11回目の挑戦で、ISUチャンピオンシップのゴールドに、とうとう手が届いた!
シャルマルに初めての世界選メダルを、と多くのファンが心の底から願う一方で、やはり長く単純ではなかったキャリアを、ついに大きく実らせつつあるロランス・フルニエ・ボードリー&ニコライ・ソレンセン(カナダ)もまた、メダルにふさわしい。
30歳と34歳のベテラン2人が、ソレンセンの母国デンマーク組としてチームをこぎだしたのは、今から10シーズン前。しかし国籍取得に難航し……自らがもぎ取った五輪行の切符を、泣く泣く手放さざるを得なかった。だからこそ結成6年目に、思い切ってフルニエ・ボードリーの母国への移籍を決意。カナダ組として改めてキャリアの船出を切った。そして一昨秋にソレンセンが無事にカナダのパスポートを取得したことで、結成9年目でようやくオリンピアンになれた。
あらゆる障壁を取り除き、ようやくパフォーマンスだけに専念できる環境を手に入れたフルソレは、今季は解き放たれたようにヒエラルキーの階段を駆け上がっている。NHK杯では初めてのGP大会金メダルを射止め、移籍5年目にしてついにカナダナショナルチャンピオンとなり、そして四大陸では初めてのISUチャンピオンシップメダルも持ち帰った。2019年以来更新していなかったパーソナルベストを、今年だけで3度も塗り替え……しかもトータルで約13点も跳ね上がったという!
歴史を重ね、円熟期を迎えたベテランたちのメダル争いに、そろそろ「若手筆頭」から「中堅」へ……と差し掛かりつつある23歳ライラ・フィアー&28歳ルイス・ギブソン(イギリス)は積極的に殴り込みをかけるはずだ。19歳キャロライン・グリーン&27歳マイケル・パーソンズ(アメリカ)にとっては、初めての世界選手権はまた、世界における自らの立ち位置を確定する機会になる。
長年かけて構築されてきたアイスダンスならではの堅固なヒエラルキーに、我らが村元哉中&高橋大輔(日本)が果敢に飛び込んでわずか3シーズン目。昨年初めての世界選は16位で終えたが、2度目の今大会も改めて、トップ10の壁に挑みかかる!
壁は決して薄くはない。しかし、もはや、ぶ厚くもない。単純にパーソナルベストの比較だけなら、今大会出場選手の中で11番目につける。世界ランキングも同じく11番目。しかもアスリートとしては、すでにベテランの2人。高橋はすでに男子シングルで、欧米中心のヒエラルキーをひっくり返し、日本人男子として史上初の世界チャンピオンに上り詰めた経験を持つし、村元は日本のアイスダンスカップルとして史上初めて四大陸メダルを手にし、さらには高橋と共にさらに順位を1つ上げた。こんな「かなだい」だからこそ、大きな目標を達成するために何が必要なのかを、完全に熟知しているはずなのだ。
数日前に37歳の誕生日を迎えた高橋にとって、シングル時代から通算して、10度目の世界選手権。さいたまスーパーアリーナで、母国・日本のファンたちの応援を力に変えて、新たな歴史を作ってほしい。
文:J SORTS編集部
J SPORTS 編集部
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