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宇野昌磨以来8年ぶりの王座君臨!格の違いを見せつけた三浦佳生「自分の名を刻むことができた」| ISU世界ジュニアフィギュアスケート選手権2023 男子シングル レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部三浦佳生
四大陸選手権チャンピオンが、格の違いを見せつけた。すでにシニアとしてフルシーズン転戦してきた三浦佳生が、今季初めてのジュニア国際公式戦に臨み、金メダルを手に入れた。日本人男子としては、史上6人目、2015年宇野昌磨以来8年ぶりのジュニア世界チャンピオン君臨。また吉岡希が3位銅メダルを獲得し、同じく2015年の宇野金・山本草太銅以来、史上2度目の日本人ダブル表彰台が実現した。2005年、2010年に次ぐ、男女シングルの日本アベック優勝でもあった。
「たくさん結果を残してきた選手たちが、みな通ってきた道のひとつ。そこに自分の名を刻むことができたことが、すごく嬉しい」(三浦)
ジュニアとシニアの国際選手権を同一シーズンに制したのは、イリヤ・クーリック以来28年ぶりと、極めて珍しい快挙だった。しかも後の長野五輪金メダリストクーリックが、1994年11月世界ジュニア制覇→1995年2月欧州選手権制覇と、一応は順番を守ったのだとしたら、三浦はシニアを先に獲ってしまった!
たしかに過去2シーズン、三浦はジュニアとシニアを股にかけて戦ってきた。今季1月には調整も兼ねてインターハイに出場し、ジュニアの構成や演技時間を再確認した。それでも「4回転ジャンパー」としては、3回転までしか許されていないジュニアのショートプログラムは、むしろ難題だと感じていた。理由はジャンプで得点差がつきにくく、つまりは「完璧が求められるから」。
三浦はまさに完璧を追い求めた。冒頭の3回転ループと3回転アクセルを、高速かつ柔らかに決めると、国際公式試合におけるキャリア最高のGOE出来栄え点を射止めた。あらゆるステップ&スピンできっちりレベル4+GOE加点を逃さなかったし、シニアチャンピオンとして当然のようにPCS演技構成点も全体トップの評価を得た。
ただ、3回転フリップ+3回転トーループのコンビネーションで、ジャンプ2本目の着氷がわずかに乱れた。0.08点の小さな小さな減点。演技終了後には、氷上で、「セーフ」と苦笑いも見せた。得点的には余裕だった。2位以下に5.65点差をつけ、85.11点で悠々とSP首位で切り抜けた。
「シニアよりも緊張しました。まさか首位に立てるとは思ってもいませんでした」(三浦)
ちなみにSPのパーソナルベストは94.96点。もちろん4回転を2本組み込むシニア構成で叩き出した得点だ。ジュニアの国際公式試合だけを比較すれば、今回がダントツのパーソナルベスト。実は、過去最高は……昨世界ジュニアの60.03点。1年前に悪夢を見た大会だ。あの時のSP20位というひどい結果にリベンジを挑むため、三浦は今大会に乗り込んだ。トータルでも13位に留まり、「自分のせいで2つに減らしてしまった」出場枠を、自分の力で取り戻すために。
決してFSでも手を抜かなかった。冒頭の3A+1Eu+3Sでは、2.97点という自己最高のGOE加点を叩き出し、最初のエレメントだけで15.77点という大量得点をもぎ取った。さらには4回転3本を組み込み、あくまで攻めの姿勢を貫いた。4回転トーループと3回転ループは着氷がわずかに乱れたが、見事に耐えたし、最後のスピンだけはレベルを3に落としたが、そこまでの約3分半に全力を出し切った結果なのかもしれない。おそらく今季公式戦としては最後の「美女と野獣」を、鮮やかなスピードパワーで駆け抜けた後、三浦は氷に膝をついた。
179.63点でFS首位に立ち、総合264.74点で、圧巻の優勝を収めた。FSだけで2位以下に38.28点差、トータルでは44.06点差と桁外れの強さを誇ったが、なにより三浦は、自分との戦いに勝った。
「四大陸チャンピオンとして乗り込んできたからこそ、より一層プレッシャーがありました。でも、自分に集中して出来たことが、大きかったかなと思います」(三浦)
もちろん、ここがゴールではない、と17歳の三浦は力強く語る。過去ジュニア世界選を制してきた日本の先輩たちは、その後シニアの舞台で長く活躍を続けきた。世界チャンピオンに上り詰めた選手も3人いる。
「来年は、絶対に、世界選手権にも出たい。自分の演技をレベルアップさせて、来季以降も頑張っていきたいです」(三浦)
また三浦の願いだった「日本男子に出場3枠を取り戻す」は、無事に達成された。それどころか吉岡希がSP7位から、表彰台へと華麗なジャンプアップを決め、日本男子は2つのメダルを持ち帰ることになる。
ジャンプに乱れがありSP5位に沈みながらも、最終的に3位への浮上を成功させたジュニアグランプリファイナルの時とは異なり、カルガリーでの吉岡は、ノーミスでSPを滑りきった。スピンとステップでレベル4は取れなかったものの、今季の国際大会で初めて、全エレメンツでGOEプラス加点。当然のようにパーソナルベストを4点以上も更新し、76.44点と大満足の出来だった。
順位は7位に留まったとはいえ、得点差は極めて少なかった。5位との差はたったの0.38点、表彰台までも3.42点。しかも三浦を除く上位選手5人のうち、3人が、FSで4回転を持たなかった。また4回転を飛ぶ他の2人は、まさにその大技に苦しめられた。SP2位のウェズリー・チウ(カナダ)は、4回転トーループが2本ともすっぽ抜け、うち1本はコンビネーションをつけられずにノーバリュー判定。最終的に5位で終えた。SP4位ルーカス・ブルサード(アメリカ)は冒頭の4Tを含む2本の転倒があり、トータル7位。
一方の吉岡も、ジャンプをすべてパーフェクトに成功させられたわけではない。しかし冒頭の4回転トーループはオーバーターン気味ながらも、すぐに3回転トーループでコンビネーションにつなげた。次の4Tも着地で乱れたが、きっちり耐えた。後半のコンビネーションは、2つとも綺麗にまとめたし、最後のジャンプ……3回転フリップも、体力を振り絞って粘りの着氷。141.35点を記録し、FSだけなら銀色のスモールメダルを勝ち取った。
「ジャンプのミスがたくさんあったことは悔しいです。でも、練習してきたことは、しっかりと出せた。この先はさらに滑りを良くして、4回転の種類も増やして、もっともっと良い演技がしたい」(吉岡)
2本のプログラムともに3位で終え、トータルでは2位に入ったのがナオキ・ロッシ(スイス)だ。16歳の伸び盛りは、今シーズン後半、すでに大きな成績を出し始めていた。欧州ユース五輪では銅メダルを手に入れ、今大会直前のタリンク杯のFSでは、昨季の欧州選手権3位デニス・ヴァシリエフスを退け2位に。同時にシニア世界選手権FSのミニマム(出場に求められる技術点の最低ライン)をも取得した。
世界ジュニアでも躍進を見せた。ジャンプにはときに苦しめられたが、SPもFSもパーソナルベストを大きく塗り替えた。トータルでは12.34点も一気に更新。得点発表の瞬間、思わず本人が号泣してしまうほどの、高い評価を勝ち得た。
「言葉になりません。表彰台に上がれるなんて考えてさえいませんでした。今日の演技には満足しています。ループでミスがありましたが、その後も集中し続けて、プログラムの終わりまで決して諦めませんでした」(ロッシ)
バレエ指導者である母、池上理恵子さんの手ほどきを幼少時代から得てきた直樹ロッシは、なにより頭の先からつま先まで隙のない身体ポジションや、柔らかい肢体から繰り出す流麗なスピンで、見る者を感嘆させた。またJGPF金メダリストのニコライ・メモラ(イタリア)は、総合4位で今季初めて表彰台乗りを逃したが、その長身を惜しみなく使って表現する重厚で高貴な世界観は色褪せなかった。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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