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フィギュア スケート コラム 2023年3月6日

イ・ヘインがキム・ヨナに次ぐ韓国史上2人目の四大陸選手権チャンピオン「ただただメダルが欲しかった」|ISU四大陸フィギュアスケート選手権2023 女子シングル レビュー

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
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イ・ヘイン

イ・ヘイン

波乱に満ちたドラマチックな戦いを、自らが制したのだと理解した時、イ・ヘインは思わず両手で顔を覆った。「自分らしい最高の演技がようやくできた」と、ほんのついさっきまで笑っていた17歳の瞳の中には、きっと、美しい涙が光っていたに違いない。ショートプログラム6位からの、大逆転だった。

「最終結果のことをあまり考えすぎずないように心がけていました。だから1位になれるなんて期待さえしていませんでした。ただただメダルが欲しかっただけなんです」(イ・ヘイン)

1800mを超える標高と、昼夜の激しい気温差と、ひどく乾いた空気。誰にとっても決して簡単な環境ではなかった。「標高に慣れる特別合宿を積んできた」と口々に語った韓国勢3人と、「2週間前のアメリカ選手権からコロラド・スプリングスに直行した」という地の利を活かしたアメリカ勢3人が、SPでは上位6位までを独占した。

その中でも、SPを1位で折り返したのが韓国のキム・イェリムだ。プログラム最後のスピンでレベルを3に落とした以外、昨大会銅メダリストはクリーンなパフォーマンスを実現。なによりPCS演技構成点で極めて高い評価を得た。シーズンベストの72.84点で、2位以下に1.34点差をつけ首位に立った。また今季ジュニアJPファイナル3位のキム・チェヨン16歳が、TES技術点で誰よりも高い得点を叩き出し、初出場でSP3位に飛び込んだ。

地元アメリカで……むしろ世界中で優勝大本命に挙げられていたイザボー・レヴィトは、つまりSP2位に甘んじた。普段以上に丁寧さと安定さを心掛けた滑りで、むしろTES技術点だけなら今季自己ベストの高得点だったし、キム・イェリムをわずか0.08点ながら上回っていた。一方でPCSがグランプリシリーズ時ほどには伸びなかった。しかも演技時間が制限タイムを超えたとして、減点1もついた。

全員滑走後に行われる上位3選手による記者会見では、15歳のレヴィトは、「満足しています」と笑顔を見せた。ところが翌日のフリースケーティングでは、「体調不良」を理由に、滑走直前に棄権が発表される。

他のアメリカ女子も、最高の結果を導き出すことは出来なかった。「本拠地」コロラド・スプリングスでパーソナルベストの好演技を披露し、興奮を隠せなかったSP4位アンバー・グレンも、苦しく長い日々を乗り越え、怪我からの完全復活を改めてアピールしたSP5位ブレディ・テネルも、FSは得点が伸びなかった。総合では6位と7位に後退。開催国である母国に、3大会ぶりのメダルをもたらすことはできなかった。

アメリカ勢がまるで上手くやれなかったFSで、トップ5に並んだのは韓国勢3人+日本勢2人。しかも6位テネルを挟んで、7位にも日本選手が入った。総合でも同じく、上位5位までを日韓が独占した。

3人ともシニアのISUチャンピオンシップ出場は生まれて初めて……という日本の3人は、SPではそれぞれの最大限を発揮できなかった。渡辺倫果も吉田陽菜は武器の3回転アクセルでミスがあり、千葉百音はコンビネーションジャンプで回転不足。千葉7位、渡辺8位、吉田10位と、少々出遅れた。

ただ日本女子3人は、気持ちを切り替え、奮起する強さを持っていた。「FSでは全部出し切る」と臨んだ吉田は、冒頭3回転アクセルの転倒にもめげなかった。以降も完璧ではなかったが、「納得」のジャンプが飛べた。なにより今大会のために重ねてきたたくさんの練習を思い出し、最後まで戦い抜いた。FSだけなら7位。トータルでも8位に浮上した吉田は、来季以降の本格シニア転向に向け、「大きな一歩を踏み出せた」と感じている。

20歳の渡辺は、FS終了直後に、何度も氷上でうなずいた。冒頭の3回転アクセルは、今度こそきっちり着氷してみせた。コンビネーションの3回転ルッツが1回転に抜けてしまうミスはあったものの、あとはすべてを冷静にまとめた。FS4位で、トータルでは200点超えの5位。約1ヶ月後の初出場・世界選手権に照準を合わせる渡辺は、この「特殊な状況下」で戦った四大陸での失敗と成功を糧にして、さいたまではさらなる飛躍を誓う。

SP7位から総合3位表彰台への大きなジャンプを成し遂げたのが、17歳の千葉だ。冒頭のジャンプコンビネーションに「q(4分の1回転不足)」がつき、ステップシークエンスがレベル3に留まった以外は、すべてを丁寧にクリーンにこなした。特に標高のせいでいつも以上に体力が厳しくなるプログラム後半に、全参加選手中唯一、2つのジャンプコンビネーションを完璧に成功させた。

ジュニア、シニアを通して初めてのISUチャンピオンシップ参戦で、千葉は銅メダルをつかみ取った。FSだけならパーソナルベストを2点以上も更新する素晴らしい出来で、銀色のスモールメダルも持ち帰った。つまり日本女子に、四大陸選手権15大会連続の表彰台をもたらした!

「まさか銅メダルを取れるとは夢にも思っていませんでした。驚きの感情と、嬉しい感情とが……同じくらいあります」(千葉)

逆に後半に疲れが出て、ジャンプが乱れたキム・チェヨンは、総合4位に一歩後退。また6分間練習の時点ではレヴィトの棄権を知らず、自らの滑走時間が早まったことに小さな混乱を覚えながら、それでも「集中して、音楽に入り込むよう努力した」というキム・イェリムも、やはり後半に崩れた。2つのジャンプ要素でミスがあり(回転不足とダウングレード)、基礎点だけでも5点半以上を失った。

まさにこの2つのミスが結果を左右した。SP終了時点はイ・ヘイン を3.71点上回っていたイェリムは、FSでは、5.26点のビハインド。総合トップの位置は守り切れなかった。

1年前の2位から、ひとつ階段を上がり、イ・ヘインが2023年四大陸選手権女子シングルの金メダルに輝いた。SPでは2つの小さなジャンプミスがあったが、FSではすべてをきっちりと制御した。全部のジャンプを完璧に決め、あらゆるスピンとステップで当然のようにレベル4。そして持ち前のダイナミックな滑りは、FS最終盤の、ステップシークエンスで大きく花開いた。141.71点のシーズンベスト更新。総合では210.84点に達し、韓国人フィギュアスケーターとしては2009年キム・ヨナに次ぐ、史上2人目の四大陸選手権チャンピオンとなった。

「四大陸に絶対に出場したくて、国内選出のために、いつも以上にハードな練習を積んできたんです。本当に満足しています。今後は世界選手権に向けて、さらに調整を続けていきます。世界選ではクリーンなプログラムを2本揃えたいですし、SPでもFSでもオールレベル4を出したいですね」(イ・ヘイン)

文:J SPORTS編集部

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